はじめに
日本に在住する韓国籍の方が日本への帰化を目指す際、最初につまずきやすいのが「戸籍制度の違い」と「必要書類の収集方法」です。特に韓国独自の戸籍制度(家族関係登録制度)や証明書の取得方法に戸惑う方が多く、書類収集が遅れることも少なくありません。この記事では行政書士の目線から、実務で使える書類取得のコツや、よくあるトラブルとその回避策を分かりやすく解説します。
韓国と日本の戸籍制度の違い
韓国の戸籍制度は廃止、「家族関係登録制度」へ
韓国では2008年1月1日、従来の戸主を中心とした戸籍制度が廃止され、個人単位の「家族関係登録制度」が導入されました。これにより、一人ひとりに家族関係登録簿が作成され、従来の「本籍地」は「登録基準地」という形で引き継がれています。これ以降、家族構成や親族関係を証明する際は、家族関係登録制度で発行される各種証明書が必要となりました。
家族関係登録簿の5種類の証明書
帰化申請や各種手続きで取得が求められる証明書は主に以下の5種類です。
- 基本証明書:出生・改名・死亡などの個人情報
- 家族関係証明書:本人と両親、配偶者、子の情報
- 婚姻関係証明書:結婚・離婚・配偶者に関する情報
- 養子縁組関係証明書:養父母・養子関係の情報
- 親養子縁組関係証明書:特別養子縁組に関する情報
これらは「詳細証明書」「一般証明書」「特定証明書」と記載方式が分かれており、帰化申請時は“詳細証明書”の取得が原則となっています。
韓国人の帰化申請で必要な書類
基本の必要書類
日本の帰化申請で必要な書類のうち、韓国籍の方が準備すべき主なものは次の通りです。
- 帰化許可申請書
- 親族関係記載書類
- 履歴書
- 生計・事業に関する資料
- 日本の住民票
- 韓国の国籍証明書・家族関係証明書等各種証明書(除籍謄本含む)
- 納税証明書・年金関連書類など
- 日本での各種証明書(婚姻・出生・死亡などの場合)
申請者や家族の状況によって、追加で提出すべき証明書が増える場合もあります。
韓国の「除籍謄本」について
2007年末以前の身分関係については「除籍謄本」(旧戸籍)が必要な場合があります。家族関係登録簿だけでは不十分な場合、必ず両方を揃えましょう。
韓国の家族関係証明書の取得方法
取得可能な場所
日本国内では、駐日韓国大使館や各地の韓国領事館(東京・大阪・福岡など)で証明書の発行申請が可能です。一部の領事館では即日発行できないケースもあり、所要日数に注意が必要です。
申請に必要な情報・持ち物
- 韓国名(通称名不可)
- 登録基準地の正確な情報
- 本人確認書類(パスポート、在留カードなど)
- 家族の場合は関係証明書類
- 手数料(領事館では1通110円程度、2025年時点)
代理人による取得
本人および直系血族(親や子)、配偶者が申請できます。委任状があれば代理申請も可能です。代理の場合は関係を証明する書類を必ず持参します。
郵送取得も可能
郵送でも申請できますが、1ヶ月程度かかるため急ぐ場合は窓口申請が推奨されます。
書類収集の遅延を避けるコツ
書類収集が遅れる最大の原因は、「必要な証明書の全体像を把握していない」「翻訳作業に時間がかかる」ことです。スムーズな申請のためには、次の点を心がけましょう。
- 法務局で渡される「必要書類一覧」を最初に確認し、速やかに準備計画を立てる
- 韓国系書類は取得・翻訳に時間がかかるため最優先で動く
- 日本の各種証明書は取得時期の有効期限(3ヶ月以内発行等)に注意する
- 郵送取得の場合は日数に余裕を持たせる
- 古い戸籍や家族関係証明書が不足していないか、事前に家族や親族とも連絡を取って調整する
よくある相談事例
例えば「ソンさん(40代女性)」は、家族全員の家族関係証明書を一括で取得できると思い込んでいて、実際には個人ごとに複数の証明書が必要だったため、再取得で大幅に手続きが遅延したというケースがありました。同様の誤解を避けるためにも、申請前に求められる証明書の種類や入手方法を必ず確認しましょう。
まとめ
韓国人の帰化申請では、日本と韓国の戸籍制度の違いを正しく理解し、必要書類の種類や取得方法を事前に調査しておくことが重要です。取得窓口や申請時の持参物、そして翻訳や郵送期間も含めて、細かい計画を立てることが、スムーズな帰化手続きへの第一歩です。行政書士によるサポートも活用しながら、無駄な遅延や再取得リスクを回避しましょう。