はじめに
家族滞在ビザ(在留資格「家族滞在」)は、日本で働く外国人が配偶者や子どもと一緒に日本で生活するために不可欠な在留資格です。近年、グローバル化の進展により、扶養者が海外へ長期出張するケースが増えています。本記事では、扶養者が日本国外で長期出張している場合の家族滞在ビザ申請に関するリスクと、その対策について解説します。最新の入国管理局や外務省の情報に基づき、具体的なポイントを分かりやすくご案内しています。
家族滞在ビザとは
家族滞在ビザは、日本で適法に就労する外国人の配偶者や子どもが、日本で日常生活を営むために取得する在留資格です。「Dependent」(法務省公式訳)のステータスであり、扶養関係や同居、経済的基盤が審査の最大のポイントとなります。
対象となる家族
- 配偶者
- 実子・認知された子・養子
兄弟姉妹・親・祖父母は対象となりません。
扶養者の長期出張が申請に与える影響
基本的な審査基準
家族滞在ビザの審査において重要となるのは、
- 法的な家族関係の証明
- 経済的な扶養能力
- 「日常的な活動」=扶養者と一緒に日本で生活している実態
この3点です。
長期出張の場合の主なリスク
- 扶養者が日本に不在の場合、実際に「同居・扶養」の実態が入国管理局に疑われやすくなる
- たとえ扶養関係が継続していても、滞在実態が形骸的だとみなされることがあります。
- 扶養者の出張が**「一時帰国前提」なのか「事実上の海外転勤」なのか**によって、審査の厳しさが異なります。
- 扶養者の日本での雇用契約が継続していない、又は住民票が抜けている場合、不許可のリスクが高くなります。
具体的なリスク例
- 審査で「日本で一緒に生活する意思・実態があるか」との疑念。
- 扶養者の収入や生活拠点(住居)の証明が不十分だと認定される。
- 「偽装(名義貸し)ではないか」と疑われ、追加資料を求められる。
リスクを下げるための対策
1. 実態証明の強化
- 出張が「一時的」で、日本帰国予定が確定していることを証明
- 出張命令書や帰国予定表、会社からの説明文などを提出。
- 日本での住居賃貸契約や家具など、生活拠点が日本にあることを証明する資料。
- 日本の銀行口座利用明細、家族への送金履歴。
2. 扶養・生活実態の客観的資料の提出
- 扶養者の雇用契約書、給与明細、源泉徴収票や預金残高証明書の提出。
- 家族の学校在籍証明、医療機関の利用証明、公共料金の支払履歴など。
3. 申請書類・説明書の工夫
- 扶養者が一時的に日本を離れている理由、その期間、生活拠点維持への取り組みを詳細に説明。
- 家族の写真や、ビデオチャット記録等、一体性を示す資料を活用。
- 住民票を維持(出国期間が1年未満の場合)するほうが安全。
4. ケース別の対策例
例:エンジニアのAさん(35歳)がインドに3か月の長期出張
Aさんは日本のIT企業に籍を置いたまま、3か月間だけインドでプロジェクト業務を行い、配偶者Bさんと2人の子どもは日本の自宅で生活しています。Aさんは会社の長期出張命令書とともに、日本で住居を維持し、毎月家族名義の口座に送金している明細書、日本の銀行口座の利用履歴を出入国在留管理局に提出しました。Bさんも子どもの学校出席証、病院利用記録を提出し、無事「家族滞在」ビザ(Dependent)が許可されました。
5. よくある質問と注意点
- 扶養者が1年を超えて離日する場合
- 「生活の本拠地が日本にない」と判断されやすくなるため、原則家族滞在ビザの取得・延長は困難です。
- 出張中に住民票を除票した場合
- 生活拠点を日本とみなされなくなり、不許可の一因になります。
まとめ
扶養者が日本国外に長期出張する場合でも、適切な資料と説明で「扶養関係」「住居・生活の本拠が日本にあること」を客観的に証明できれば、「家族滞在」ビザは認められる余地があります。しかし、出張期間が長期化し日本での生活実態が薄くなるほど審査は厳しくなるため、都度、状況に応じた対策が不可欠です。最新の法務省や外務省等、政府系サイトの情報も都度確認しましょう。困った場合は専門家へのご相談をおすすめします。