はじめに
近年、「高度専門職」在留資格の申請が増加する中で、外国人の雇用契約時に「社内規定」と「雇用契約書(労働条件通知書)」の内容が異なるケースがしばしば見受けられます。このような状況は、申請手続きや審査過程でトラブルの原因となるため、早期の正確な対応が必要です。本記事では、社内規定と契約書内容の差異があった場合の対応策について、法務省・厚生労働省などの公式情報を基に分かりやすく解説します。
高度専門職在留資格申請の基本要件
「高度専門職」は、ポイント制(70点以上)による優遇制度で、学歴・職歴・年収等の要件を満たす必要があります。活動内容に応じて「1号イ(研究者等)」、「1号ロ(技術者等)」、「1号ハ(経営管理等)」などに区分され、全て申請時に雇用契約等の証明が求められます。契約内容に関する書類(雇用契約書、労働条件通知書等)は、実態と相違なく正確に作成し、社内規定も反映する必要があります。
社内規定と契約書内容に差異が生じる背景
外国人の高度専門職申請では、社内規定(就業規則)と雇用契約書の記載内容が異なる事例があります。例えば「給与体系」「勤務時間」「休暇制度」などの具体的条件について、雇用契約書が個別条件を規定する一方、社内規定が一般的な基準を定めていることが少なくありません。この差異は、申請時の書類確認や、外国人が実際に労働する際の権利・義務の認定に影響します。
実務上の問題点と申請への影響
出入国在留管理庁では、高度専門職申請において、提出された契約書・規定の記載内容が一致しない場合、追加資料提出や説明を求める場合があります。特に「ポイント算定対象となる報酬額」や「勤務形態」が社内規定とズレていると、審査で不利となるリスクがあります。また、労働基準法により、契約書・通知書・社内規定が異なる場合には労働者に有利な内容が優先されますが、外国人申請の場合は説明責任が厳格に問われます。
実際に求められる解決策例
- 差異の指摘と社内協議
申請前に契約書・社内規定の内容を照合し、違いがある場合は人事・総務部門等と協議して、外国人労働者にも分かる形で説明資料を作成します。 - 申請書類の一元化と説明補足
入管申請時は「実際に適用される条件」に基づいて契約書や労働条件通知書を統一し、社内規定との違いについて補足説明書(理由書・社内文書)を添付することで、審査官の疑問を解消します。 - 場合によっては修正手続き
雇用契約書または社内規定自体の内容を見直し、相違部分を修正する、あるいは両者に整合性を持たせた新たな文書を作成することも有効です。 - 行政機関や専門家への相談
会社内で解決できない場合や申請が不安な場合は、労働基準監督署や行政書士・弁護士に相談し、適正な手続きを踏むことが推奨されます。
事例
ある外国人技術者が、社内規定では年収500万円以上と規定されている一方、雇用契約書では450万円となっていた。申請時の給与証明と契約書の内容が一致しなかったため、追加で「実際の支給予定内容を示す説明書」と「双方の根拠資料」を提出し、問題解決した。このような差異調整がポイント加算にも影響するため、早期対応が重視されます。
まとめ
高度専門職取得申請時には、雇用契約書と社内規定に差異がある場合は速やかに整合性を確認し、説明資料・補足文書の提出や関係部門との協議を徹底することが、申請トラブルを防ぐ最善策です。関係法令や公式指針に即した対応のもと、外国人材の円滑な受入れと企業の信頼確保に努めましょう。