はじめに
定住者ビザ(在留資格「定住者」)をお持ちの方で、日本で働いているうちに前職を短期間で辞めて転職することになった場合、「定住者更新の審査に影響があるのでは?」と不安に思う方は多いです。実際、出入国在留管理庁の審査では、勤務状況や転職回数、退職理由なども審査対象に含まれるため、注意が必要です。本記事では、定住者ビザ更新の際に短期離職がどのように評価されるのか、そして転職理由を説明する際のポイントを解説します。
定住者ビザの特徴と更新の基本
法務省出入国在留管理庁の公式サイトによると、定住者ビザは「法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の期間を指定して居住を認めるもの」です。永住者ビザとは異なり、在留期間の更新が必要であり、通常は5年、3年、1年、または6か月のいずれかの在留期間が指定されます。したがって、更新のたびに「日本での安定した生活実態」や「適法な就労状況」を示すことが求められます。
短期間で転職した場合のリスク
定住者ビザには就労制限がありませんが、更新には「引き続き安定して日本で生活していけるか」という観点で審査が行われます。出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間更新のガイドライン」では、次の8つの要素が考慮されるとされています:
- 現在の在留資格に応じた活動を行っていたか
- 素行に問題がないか
- 独立して生計を営む資産または技能があるか
- 雇用・労働条件が適正であるか
- 納税義務を果たしているか
- 届出義務を履行しているか
- 上陸許可基準に適合しているか
- 更新後の活動内容が資格に合致しているか
短期間の転職自体は違法ではありませんが、退職理由や離職後の収入状況が不明確なまま申請すると「生計の安定性」に懸念があると判断される可能性があります。
転職理由の説明で重視されるポイント
更新申請時には、「なぜ短期間で前職を辞めたのか」を説明する書面を添付することをおすすめします。以下のように、合理的な理由を明確に伝えることが重要です。
1. 職場環境の問題を客観的に説明
「会社の経営状態の悪化」「契約条件の変更」「労働時間や業務内容が過重で健康を害した」など、客観的・合理的な理由であることを示すと説得力があります。ただし、感情的な表現や一方的な批判は避け、客観的な事実に基づいて書くようにしましょう。
2. 新しい職場での安定性を示す
すでに次の職場が決まっている場合は、新しい雇用契約書、採用通知、給与明細などを添付し、「継続して就労している」ことを証明するのが効果的です。これにより、「短期離職=不安定」との印象を軽減できます。
3. 失業期間がある場合の対応
退職後に一時的に無職であった場合は、その期間の生活費の説明も必要です。例えば、貯金で生活していた場合は通帳の写し、家族からの支援があった場合は送金証明書などを提出するとよいでしょう。
審査官が重視する「実態の安定」
在留資格の更新では、「将来も引き続き安定して生活していけるか」が特に重視されます。たとえ1社を短期間で退職していても、そのあとの就労先で安定して働いている実績があれば、多くの場合、大きな不利にはなりません。むしろ、転職後の勤務日数や収入、納税状況、社会保険加入の有無などで誠実に生活していることを示すことが大切です。
申請書類作成のポイント
- 在留期間更新許可申請書
- 写真(1枚)
- パスポート、在留カード
- 雇用証明書または在職証明書
- 源泉徴収票や課税証明書、納税証明書
- 理由書(転職理由、生活状況など)
理由書では、退職理由から転職後の見通しまでを一貫して説明し、「今後も誠実に日本で生活・就労していく意思」を伝えると良いでしょう。
まとめ
短期間での転職は、その理由と転職後の就労状況を誠実に説明すれば、定住者ビザ更新において必ずしも不利にはなりません。大切なのは、仕事を辞めた理由がやむを得なかったこと、そして今後の生活が安定していることを明確に示すことです。
ビザ申請においては、客観的な証拠と一貫性のある説明が信頼につながります。更新時に不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。


