はじめに
家族で日本に在留している外国人の方にとって、配偶者の失職は大きな不安を伴います。特に、在留資格が「定住者」の場合、「配偶者の働き先を失ったらビザの更新ができなくなるのでは?」と心配される方が多いです。しかし、実際には在留資格の維持や更新は、世帯全体の生計の安定性や生活実態の継続性が重視されます。本記事では、法務省・出入国在留管理庁(入管庁)の公式情報をもとに、定住者ビザにおける収入の見せ方や注意点を分かりやすく解説します。
定住者ビザの基本と審査の考え方
「定住者」ビザは、特定の身分や事情に基づいて日本での居住を認められた在留資格です。就労活動に制限がなく、自立した生活を前提としていますが、在留期間の更新や永住申請の際には、生計の安定性が重要な審査要素となります。
法務省の資料や入管庁FAQによると、収入の有無自体よりも、「日本で安定した生活基盤を維持できるか」が判断の中心です。
配偶者が失職した場合の影響
配偶者(日本での主たる生計維持者)が失職した場合でも、ただちに定住者ビザが取り消されることはありません。失職そのものは生活状況の変化に過ぎず、入管庁は次のような点を総合的に判断します。
- 一時的な失業か、長期的に収入の見込みがないか
- 世帯として生計を維持できるか
- 他の家族(配偶者や子ども)に収入源があるか
- 貯蓄額や資産の有無
法務省の審査実務では、失職後も家族の収入や貯金で生活を維持できる場合には、更新が認められることが多くあります。
世帯収入としての「見せ方」
定住者ビザでは、個人単位の収入だけでなく、世帯単位での経済的安定性を示すことが大切です。以下のような証明資料を組み合わせて提出することで、入管庁に対して安定した生活をアピールできます。
主な提出資料の例
- 就労中の家族の 在職証明書・給与明細
- 貯蓄を示す 預金通帳の写し
- 課税証明書、納税証明書(過去1~3年分)
- 住民票(世帯全員記載) により同居実態を示す
- 一時的に無職であっても、求職中であることを示す資料(ハローワーク登録証など)
特に「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格と異なり、定住者は「家族としての継続的な生活」が重視される傾向があります。したがって、夫婦や家族が助け合って生計を維持していることを、具体的な数字や資料で説明することが重要です。
事例で見る:一時的な失職のケース
例えば、外国人夫婦で妻が定住者ビザ、夫が主たる就労者だったケースを考えます。夫が一時的に失職した際、妻にアルバイト収入があり、さらに世帯の貯金残高が150万円あるとします。この場合、次のような書類を添付することで更新の可能性を高められます。
- 妻の給与明細と在職証明書
- 銀行の残高証明書
- 夫の求職活動資料(ハローワーク登録証)
- 世帯全体の課税証明書
このように「無収入期間が一時的であり、世帯全体として安定している」ことを客観的に説明することが、更新許可の鍵となります。
注意点:届出義務とタイミング
在留資格のうち「配偶者としての身分」を持つ資格(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等など)は、離婚や死別のときに14日以内の届出義務がありますが、失職の場合は届出義務の対象ではありません。ただし、生活状況が変化した場合、更新申請時には正確な現状を示す必要があります。
もし家族全員の定住者ビザが連動している場合(例:親が定住者で子どもが家族滞在など)、主たる生計維持者の収入がなくなった際には、入管庁から生活状況の確認を求められることもあります。その際は、嘘のない説明と十分な裏付け資料が大切です。
安定性を保つためのポイント
- 世帯全体の収入・資産状況を把握する
- 離職期間中の生活プランを明確にしておく
- 入管庁への説明資料を整理しておく
- 就業中の家族や貯蓄、支援者の存在を明示する
これらの準備があることで、不安定な状況でも「日本で生活を継続できる」という説得力を高められます。
まとめ
配偶者の失職は一時的な経済的リスクですが、定住者ビザの維持に直結するわけではありません。重要なのは、世帯として安定した生活が継続できていることを証明することです。入管庁は、個別の状況を丁寧に審査するため、隠すよりも「正確に、前向きに」説明する姿勢が評価されます。生計面に不安がある場合は、在職証明・通帳・課税資料などを組み合わせて、世帯収入としての安定性を示しましょう。


