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家族信託に専門家は必要?自分で作るリスクと行政書士・司法書士に依頼するメリット

家族信託のアイキャッチ画像

家族信託とは?基本と公的情報

家族信託は、信託法に基づく「民事信託」の一種で、財産を持つ人(委託者)が、信頼できる家族など(受託者)に財産の管理や処分を任せ、その利益を自分や家族(受益者)が受ける仕組みです。
内閣府資料では、民事信託は将来の認知・判断能力の低下等に備えて、財産の所有者が信頼できる人に管理を託す制度として位置付けられており、高齢化社会の財産管理手段として利用が広がっています。

成年後見制度は、家庭裁判所が選任した後見人が本人の財産を管理する制度で、裁判所の関与が強く、使途も比較的限定されます。
これに対し家族信託は、元気なうちに家族間で柔軟に財産管理・承継のルールを決められる点が大きな特徴です。

専門家なしで自分で作るリスク

家族信託は、ネット上のひな形や書籍を参考にして、当事者だけで契約書を作成すること自体は、法律上禁止されているわけではありません。
しかし、信託は「委託者・受託者・受益者の関係」「信託の目的」「信託財産の範囲」「終了事由」など、専門的な要素をバランスよく組み込む必要があり、素人判断で作ると、将来の紛争や無効リスクが高まります。

特に問題になりやすいのは、次のような点です。

  • 信託契約書の文言が抽象的・不明確で、受託者の権限や責任範囲がはっきりせず、家族内トラブルになるリスク。
  • 信託財産に不動産が含まれる場合、信託登記の方法や必要な登記事項を誤り、登記が受理されず、事実上「使えない信託」になってしまうリスク。
  • 税務上の取扱い(贈与税・相続税・所得税など)を誤解した設計により、想定外の課税や税務調査の対象となるリスク。

また、家族信託は成年後見制度や遺言、生命保険、死因贈与契約などと組み合わせて設計されることが多く、他制度との関係を踏まえた全体設計を誤ると、かえって手続きが複雑化することもあります。

行政書士・司法書士に依頼するメリット

民事信託・家族信託を扱う専門職としては、信託契約書などの書類作成や法的スキームの設計を担う行政書士・弁護士と、不動産が絡む場合の信託登記を担う司法書士が中心的な役割を果たします。
日本弁護士連合会の民事信託ガイドラインでも、民事信託を取り扱う専門家は、制度の特性や関連法令・税務などを十分に理解したうえで、依頼者の意向を丁寧に聴取し、適切なスキームを提案するべきとされています。

行政書士が関わる主な場面の例

  • 家族構成・資産状況・将来の希望(介護費用の確保、二次相続の指定など)をヒアリングし、家族信託を使うべきか、他制度が適切かを含めて整理する。
  • 信託の目的・受託者・受益者・終了事由などを具体化し、委託者の意向を反映した信託スキームを設計する。
  • 信託契約書案や、関連する財産管理契約書、遺言案などの文書を作成し、当事者が内容を理解したうえで合意できるようサポートする。

司法書士が関わる主な場面の例

  • 信託の対象となる不動産について、信託登記(受託者名義への信託移転登記や信託目録の記載)を適切に行い、法務局で受理されるよう手続を進める。
  • 信託終了時の登記や、途中での内容変更が必要になった場合の登記のやり直し等を含め、登記実務の面から家族信託をフォローする。

このように、行政書士・司法書士などの専門家に依頼することで、契約書の不備や登記のミスによる「使えない家族信託」を防ぎ、委託者の意思をきちんと実現できる形に落とし込むことができます。

自分で家族信託を書くときの典型的なつまずき例

以下は、一般的によく見られるつまずきパターンをモデル化した例です。

  • ケース例
    70代の父が、自宅不動産を含めた財産管理のために、インターネットで見つけたひな形をもとに長男との間で信託契約書を作成したところ、信託の目的や終了条件が曖昧で、信託終了後の財産の帰属先も明確でなかった。
    その後、父の判断能力が低下し、次男が内容に疑問を持って家庭裁判所に相談した結果、信託の有効性自体が争点となり、家族内の合意形成に時間と費用がかかってしまった、というようなトラブルが起こり得ます。

また、信託の対象から外したつもりの預貯金が、実は契約書の書き方の関係で「信託財産と解釈される余地がある」と判断され、受託者の管理権限をめぐって対立が生じる場合も考えられます。
このような事態を防ぐには、信託財産の範囲を具体的に特定し、管理方法や帳簿のつけ方まで含めた明確なルールを契約書に盛り込むことが重要です。

家族信託と成年後見・遺言の違いと使い分け

成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した後に家庭裁判所へ申立てを行い、選任された後見人が財産管理や身上監護を行う制度で、裁判所の監督が働く分、手続は厳格で柔軟性には限界があります。
一方、家族信託は、本人に判断能力が十分あるうちに契約を締結し、将来の財産管理・承継のルールを事前に決めておけるため、特に不動産の売却・建替え・賃貸など積極的な運用を予定する場合に適しています。

遺言は、原則として本人死亡後の財産の配分ルールを定める制度であり、生前の財産管理・運用には直接の効力を持ちません。
家族信託は、生前の財産管理と死亡後の承継の両方を一体として設計できる点で、遺言と性質が異なり、組み合わせて利用することで、よりきめ細かな資産承継を実現できます。

まとめ:専門家に相談して「失敗しない家族信託」を

家族信託は、高齢期の財産管理や認知症対策、二次相続まで見据えた資産承継などにとても有用な制度ですが、その分、設計や文言には高度な専門性が求められます。
自分でひな形を使って作ることもできますが、契約書の不備や登記・税務の誤りは、後から修正が難しく、家族関係に深刻な影響を与える可能性もあります。

行政書士は、依頼者の意向を丁寧に整理し、家族信託を含むさまざまな選択肢の中から最適なスキームを提案し、信託契約書などの文書作成を通じてサポートする役割を担っています。
不動産登記が必要な場合には司法書士と連携することで、契約内容と登記内容が整合した、実務上「使える」家族信託を形にすることができますので、不安や疑問がある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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