はじめに
「在留資格『技能』で働いているけれど、副業やアルバイトの掛け持ちはできるのか?」というご相談は、飲食・宿泊・調理・スポーツ指導などの現場でよく聞かれるテーマです。日本人と同じ感覚で副業を始めてしまうと、知らないうちに「資格外活動」や「不法就労」に当たってしまい、在留資格の更新不許可や退去強制につながるおそれもあります。
この記事では、在留資格「技能」で働く外国人の方が、副業やアルバイトを検討するときに知っておくべき基本ルールと、不許可リスク・注意点をわかりやすく解説します。
在留資格「技能」と副業の基本ルール
在留資格「技能」は、調理師、スポーツ指導者、航空機操縦士、宝石・毛皮加工など、専門的な熟練技能を要する活動を対象とした就労系の在留資格です。活動内容は入管法別表第一に定められており、認められた範囲内での就労が前提となっています。
入管法では、「現に有している在留資格に属さない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」をする場合、「資格外活動許可」が必要とされています。つまり、「技能」に該当しない業務で報酬を得る副業・アルバイトをするには、原則として資格外活動許可が不可欠です。
一方で、「技能」として認められる範囲内の仕事であれば、複数の雇用先で掛け持ちをすること自体は、入管法上直ちに禁止されているわけではありません。ただし、活動の実態を全体として見られるため、「本来の在留資格活動を継続しているか」「本業に支障が出ていないか」が厳しくチェックされる点に注意が必要です。
掛け持ち・副業が可能なパターンとNGパターン
掛け持ち・副業を考えるとき、大きく分けて次の2パターンがあります。
- 在留資格「技能」の範囲内での掛け持ち
- 「技能」の範囲外のアルバイト(資格外活動)
1. 「技能」の範囲内での掛け持ち
たとえば、在留資格「技能(調理)」で日本料理店のコックとしてフルタイム勤務している方が、同じように調理人として別のレストランで短時間働くケースが典型例です。この場合、活動内容がいずれも在留資格「技能」の範囲に含まれ、かつ本来の在留活動を妨げない程度であれば、入管法上は同一在留資格の範囲内での活動と評価されることがあります。
ただし、雇用契約や労働時間、本業の勤務形態などを総合的に見て、「本当に主たる活動がどこなのか」「労働時間が過度でないか」が問題となることがあります。更新申請時には、在留カード記載の勤務先以外に継続的な就労がある場合、その説明を求められることもあるため、安易に掛け持ちを増やすのは避けた方が安全です。
2. 「技能」の範囲外のアルバイト(資格外活動)
在留資格「技能」の範囲外、たとえばコンビニのレジ、居酒屋のホールスタッフ、清掃、倉庫作業など、いわゆる「単純労働」に分類される仕事で収入を得る場合は、資格外活動に当たります。このような活動をする場合、「資格外活動許可」を事前に受ける必要があります。
出入国在留管理庁は、資格外活動許可を「現に有している在留資格に属さない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行おうとする場合に必要な許可」と明示しています。許可を得ずに開始した時点で、不法就労と評価されるおそれがあります。
資格外活動許可が必要になるケースと注意点
資格外活動許可の位置づけ
出入国在留管理庁によれば、資格外活動許可は、「現に有する在留資格に係る活動を行っていること」を前提に、例外的に追加活動を認める制度とされています。
したがって、休職中や長期の欠勤状態で本業の活動実態が乏しい場合には、許可が認められにくくなります。
また、就労系在留資格の場合、「包括許可」(留学・家族滞在の週28時間以内など)は原則対象外であり、多くは「個別許可」として、具体的な勤務先・職務内容・時間数を示して審査を受けることになります。
許可の審査で重視されるポイント
公表されている運用や各種解説によれば、資格外活動許可の審査では、概ね次の点が重視されます。
- 本来の在留資格に係る活動(主たる仕事)を継続していること
- 資格外活動が本来の活動の遂行を妨げない範囲であること
- 法令違反や風俗営業等に該当しないこと
- 在留状況や素行に問題がないこと
「技能」の場合、もともと単純労働を認める在留資格ではないため、コンビニ・工場ライン・清掃などの副業は、在留資格制度の趣旨との関係で慎重に判断される傾向があります。業務内容によっては、そもそも許可の対象とならない可能性もあるため、事前に専門家へ相談することが望ましいです。
不許可リスクと具体的なトラブル例
ここでは、実在の案件ではなく、制度の理解を深めるための仮想事例としてご紹介します。
事例1:資格外活動許可なしでホールスタッフを掛け持ち
在留資格「技能(調理)」を持つAさんは、日本料理店でフルタイムのコックとして働いています。給料を増やしたいと考え、知人の紹介で居酒屋のホールスタッフとして、週3日・1日4時間のアルバイトを始めましたが、資格外活動許可は申請していませんでした。
更新時に出入国在留管理局から「勤務状況についての説明」を求められ、給与明細や勤務シフトから、ホールスタッフとしての継続的な就労実態が判明した場合、在留資格に基づかない活動で報酬を得ていたとして、不法就労と評価される可能性があります。その結果、在留期間更新許可が不許可となったり、将来の永住申請にマイナス評価となるおそれもあります。
事例2:副業が本業の遂行を妨げたケース
在留資格「技能」でスポーツインストラクターとして就労しているBさんは、本業以外に早朝の清掃アルバイトと深夜の飲食店での仕事を掛け持ちしていました。過労により本業の遅刻や欠勤が増え、勤務先の会社が入管庁からの照会に対して、「最近は本来の業務に支障が出ている」と回答した場合には、「本来の在留活動を妨げる程度の資格外活動」と判断されるリスクがあります。
このように、たとえ資格外活動許可を取得していたとしても、その活動が本業に明らかに悪影響を与えている場合、更新時の審査で問題視される可能性があることに注意が必要です。
掛け持ち・副業を検討するときの実務的チェックポイント
在留資格「技能」で働く方が、副業や掛け持ちを検討するときは、次の点を確認しておくと安全です。
- 活動内容が「技能」の範囲に入っているか
雇用契約書や求人内容を確認し、実際の業務内容が「技能」で認められる専門的技能に基づく仕事かどうかをチェックします。 - 本業の勤務先の理解・同意があるか
就業規則上、副業が禁止または制限されている場合もあります。労務トラブルとならないよう、雇用契約や会社のルールも確認しておくことが大切です。 - 資格外活動許可が必要かどうか
少しでも「技能」の範囲から外れそうな内容が含まれる場合は、資格外活動許可の検討が必要です。申請にあたっては、勤務先・職務内容・予定労働時間などを具体的に整理することが求められます。 - 在留期間更新や将来の永住申請への影響
不法就労歴や、在留資格の趣旨に反する活動は、更新不許可や永住不許可の理由となり得ます。短期的な収入アップよりも、中長期的な在留の安定を優先して検討することが重要です。
まとめ
在留資格「技能」での掛け持ちや副業は、「在留資格で認められた活動かどうか」と「資格外活動許可の要否」がポイントになります。在留資格の範囲内の専門的な業務であれば、一定の条件のもとで複数の勤務先で働くことも可能ですが、範囲外のアルバイトを無許可で行えば、不法就労として更新不許可・退去強制のリスクがあります。
特に、コンビニや飲食店ホール、清掃などの単純労働に近い副業は、「技能」の制度趣旨との関係で慎重に判断されるため、自己判断で始めるのは危険です。具体的な副業内容や勤務条件によって結論が変わる場合も多いので、在留資格「技能」での副業・掛け持ちを検討されている方は、事前に専門家や出入国在留管理局に相談し、安全な形でキャリア設計を行うことをおすすめします。


