◆ はじめに
在留資格「技能(Skilled Labor)」で働いている方の中には、「会社を辞めてから次の仕事が決まるまでの期間が空いてしまった」「転職活動が長引いて無職の期間があるが、在留期間更新は大丈夫か」と不安に感じている方が少なくありません。
実は、離職したあとに長期間「技能」に該当する活動をしていない状態が続くと、「更新が不許可になるリスク」と「在留資格そのものが取り消されるリスク」の両方が生じる可能性があります。
この記事では、「技能」ビザ保持者に離職期間・ブランクがある場合に、どのような点が問題になりやすいのか、そしてどのように対応・準備すればリスクを抑えられるのかを、公的情報を踏まえてわかりやすく解説します。
在留資格「技能」とは?
法務省・外務省などの公的説明では、「技能」は産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの就労系在留資格とされています。
代表的な対象職種としては、次のようなものが挙げられます。
- 外国料理の調理師(専門料理人)
- 自動車整備士
- 航空機の操縦・整備に関わる技能者
- スポーツ指導者
- 貴金属・宝石・毛皮加工など特殊な技能を要する職人
在留期間は、5年・3年・1年・3か月などが付与され、更新の際には「継続して技能に該当する活動を行っているか」が重要な審査ポイントとなります。
離職期間・ブランクがあると何が問題になるのか
1 三か月以上働いていないと「在留資格取消し」のリスク
出入国管理及び難民認定法(入管法)22条の4では、「在留資格の取消し」の事由が規定されています。
日本語での公的解説では、「就労系の在留資格で在留している人が、正当な理由なく3か月以上、在留資格に対応する活動を行っていない場合、在留資格が取り消されることがある」と説明されています。
つまり、会社都合の解雇後に新しい仕事を探している場合など、「正当な理由」があれば必ずしも直ちに取消しとはならない。と考えられています。
よって、離職してすぐにビザが無効になるわけではありませんが、活動実態がない状態が長期間続くと、「在留資格の取消し」という重いリスクが現実的な問題として浮上します。
2 在留期間更新審査で問われる「活動の継続性」
在留期間更新の審査では、直近の勤務状況や収入状況から、「今後も日本で安定して『技能』に該当する活動を継続する見込みがあるか」がチェックされます。
離職期間が長く、収入も途切れている場合、以下のような点がマイナス評価になりやすいとされています。
- 長期間の無職期間があるが、その間の生活費の説明がつかない
- 「技能」に該当する新しい仕事の見込みが示されていない
- 転職先の職務内容が「技能」の範囲外と判断される可能性がある
その結果、「今後も『技能』で継続的に就労する見込みが乏しい」と判断されると、在留期間更新の不許可につながるおそれがあります。
ブランクがある場合でも更新が認められやすいケース
離職期間があるからといって、必ず不許可になるわけではありません。公的機関や専門家の解説から、比較的更新が認められやすいパターンとして、次のようなケースが挙げられます。
- すでに新しい就職先が内定しており、雇用契約書や内定通知書を提出できる場合
- 離職後、継続的に転職活動を行っていることを証明できる場合(応募履歴、面接案内メール等)
- 会社都合の解雇、事業縮小、契約満了など「やむを得ない理由」で離職したことが説明できる場合
名古屋国際センターのQ&Aでも、就労活動を行っていない状態があっても、「新しい職を探している」「近く就労活動を再開する見込みがある」といった正当な理由があれば、直ちに在留資格が取り消されるものではないと解説されています。
これと同様に、更新申請においても、ブランクの事情や今後の就労予定を具体的に説明できれば、一定の範囲で柔軟に判断される余地があります。
ブランクが生じた場合の具体的な対応策
1 所属機関変更の届出(14日以内)を必ず行う
就労系の在留資格を持つ外国人が会社を退職したり、新しい会社に入社したりした場合、「所属(契約)機関に関する届出」を14日以内に出入国在留管理庁に届け出る義務があります。
これは、入管法上の「中長期在留者」の届出義務の一つであり、怠ると過料などの対象となる場合があります。
- 退職日または新しい会社への入社日から14日以内に届出を行うこと
- 届出は、地方出入国在留管理局の窓口のほか、郵送・オンラインシステムでも可能であること
離職に伴うブランクがある場合でも、この届出を確実に行っていることは、「在留状況の適正さ」を示す重要なポイントになります。
2 転職活動の実績を記録・保存しておく
離職期間中に「何もしていない」と見られないよう、転職活動の証拠を残しておくことが大切です。
- 求人サイトや人材紹介会社への登録画面、応募履歴
- 面接の案内メール、担当者とのやり取りのスクリーンショット
- 会社説明会や面談への参加記録、日程表など
これらを更新申請時の理由書と一緒に提出することで、「正当な理由がある一時的なブランク」であることを説明しやすくなります。
3 生活費の原資・家族等の支援状況を説明できるようにする
無職期間が長くなると、「日本でどのように生活していたのか?」という点も重要なチェックポイントになります。
更新申請時には、次のような説明を準備しておくとよいでしょう。
- 貯金の残高証明書、送金記録など
- 配偶者・家族の収入で生活している場合、その収入を示す資料
- 一時的に帰国していた期間があれば、出入国記録に基づく説明
生活基盤が不安定と判断されると、更新審査にマイナス影響が出る可能性があるため、資料で補強することが安心につながります。
4 新しい勤務先の業務内容が「技能」に適合しているか確認する
「技能」に該当するかどうかは、職種名だけでなく、実際の業務内容によって判断されます。
転職先の仕事内容が「技能」の範囲外と見なされると、在留資格の変更を求められたり、更新不許可となる可能性があります。
したがって、
- 雇用契約書や職務内容説明書で、具体的な業務内容を整理しておくこと
- 必要に応じて、出入国在留管理庁や専門家に「この仕事内容で『技能』のまま更新可能か」を事前に相談すること
モデルケース
以下は、よくある相談内容をもとにした架空の事例です。
- 事例:外国料理店で調理師として働いていたAさん(在留資格「技能」)。2026年3月末に会社都合で退職し、その後3か月間は転職活動を行っていた。6月に新しい飲食店から内定を得て、7月から勤務開始。更新期限は8月末。
このようなケースでは、以下の点を整理して申請することがポイントになります。
- 退職と就職に関する所属機関変更の届出を、それぞれ14日以内に行っていることを示す。
- 退職から再就職までの約3か月間に、複数社に応募し、面接を受けた事実をメール・応募履歴などで証明する。
- 前職の退職理由が会社都合(店舗閉鎖など)であることを、退職証明書等で説明する。
- 新しい勤務先の雇用契約書・会社概要を提出し、「技能」に該当する調理業務を継続することを明確にする。
このように、ブランクそのものよりも、「その期間をどのように過ごし、どのように説明できるか」が重要なポイントになります。
まとめ
在留資格「技能」で働いている方が離職し、ブランクが生じても、必ずしも直ちに在留資格が失われるわけではありませんが、3か月以上活動を行っていない状態が続くと、入管法22条の4に基づく在留資格取消しの対象となる可能性があります。
また、在留期間更新の審査では、「活動の継続性」「生活の安定性」「新しい勤務先が『技能』に適合しているか」といった点が重視され、離職期間の説明が不十分な場合には不許可のリスクが高まります。
ブランクがある場合は、
- 所属機関変更の届出を14日以内に行うこと
- 転職活動の記録や生活費の根拠資料を準備すること
- 新しい勤務先の業務内容が「技能」に適合しているか事前に確認すること
が重要です。
離職や転職を検討されている方、すでにブランクが生じていて更新に不安がある方は、早めに専門家や出入国在留管理庁に相談し、適切な説明資料を整えたうえで手続きを進めることをおすすめします。


