はじめに
在留資格「技能」は、外国料理の調理師やスポーツ指導者、貴金属加工職人など、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を持つ外国人が日本で働くための就労ビザです。
一方で、転職や社内異動などで実際の仕事の内容が変わると、「この仕事内容はまだ『技能』ビザで認められるのか?」「職種が変わると不許可になるのでは?」と不安に感じる方も少なくありません。
この記事では、「技能」ビザで職種や仕事内容が変わるときの注意点と、許可されやすい仕事内容・不許可になりやすい仕事内容の見分け方を、公的情報を踏まえてわかりやすく解説します。
「技能」ビザで認められる基本的な活動内容
出入国在留管理庁によると、在留資格「技能」に該当するのは「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」とされています。
具体例として、外国料理の調理師、スポーツの指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人などが挙げられており、いずれも高い専門性と実務経験が前提です。
このように、「技能」ビザは単純作業ではなく、一定年数の実務経験や資格を要する熟練技能を活かすことが前提の在留資格である点が重要です。
職種変更でチェックされる主なポイント
転職・配置転換などで職種や業務内容が変わる場合、入管は次のようなポイントを総合的に見て、「技能」ビザの範囲内かどうかを判断します。
- 業務内容が「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能」を要するかどうか
- 外国料理の調理、スポーツ指導、貴金属加工など、「技能」の代表的分野に該当するかどうか
- 本人の実務経験年数や資格と、新しい業務内容との関係性があるかどうか
- 実際の業務が調理補助・皿洗い・荷物運搬など、単純作業に偏っていないかどうか
たとえば、外国料理店のコックとして「技能」で働いている人が、同じ店でメインの調理から外され、ほとんどが配膳や洗い場業務になってしまった場合、在留資格の活動内容とズレが生じる可能性があります。
許可されやすい仕事内容のパターン
「技能」ビザで職種や担当が変わっても、次のようなパターンは、基本的には在留資格の範囲内と評価されやすい傾向があります(あくまで一般的なイメージであり、個別審査です)。
- 同じ分野内での役職変更
例:外国料理店のメインシェフからキッチンチーフ・メニュー開発担当に変更など(依然として高度な調理技能を要する場合)。 - 同一の技能分野内での店舗・事業所の変更
例:同じ系列のレストラン間の異動で、同種の外国料理を調理し続けるケース。 - 熟練技能を前提とした指導・管理業務へのシフト
例:スポーツ指導者としての経験を活かし、チーム全体のトレーニング計画やコーチングを統括する役割に就く場合。
このように、コアとなる熟練技能を引き続き活用しているかどうかが、在留資格「技能」の継続可否を判断するうえで大きなポイントになります。
不許可になりやすい仕事内容のパターン
一方で、次のようなケースは、「技能」ビザの活動内容から外れていると判断され、不許可や在留資格変更の指導につながりやすいパターンです。
- 単純作業中心の職種への移行
例:調理師からホールスタッフ・レジ係・洗い場専任など、熟練技能をほとんど使わない業務が中心になる場合。 - 全く別の在留資格でカバーすべき業務への転換
例:スポーツ指導者から、一般事務・営業・ITエンジニアなど、「技能」ではなく「技術・人文知識・国際業務」等で審査されるべき業務に切り替わる場合。 - 実務経験・資格と無関係な新分野への転職
例:貴金属加工職人としての経験しかない方が、突然別業界の倉庫作業や引越し作業に従事するケース。
このような場合、実際の仕事の中身が「技能」の法的な定義から外れてしまうため、更新や在留資格変更の際に不許可となるリスクが高くなります。
事例イメージ:安全な変更と危険な変更
ここでは、どのような場合に注意が必要かを整理します。
- 事例1:同業種内のポジション変更(比較的安全)
中国料理店でメインシェフとして働いていたAさんが、同じ店でメニュー開発と新人指導を中心とするポジションに変更になったケース。
→ 引き続き高度な中国料理の調理技能を使っており、「技能」ビザの趣旨に沿うため、適切な説明があれば許可される可能性が高いと考えられます。 - 事例2:単純作業への職種変更(危険度が高い)
イタリア料理のコックとして在留していたBさんが、売上不振によりキッチンから外れ、ほとんどの時間をホールの配膳やレジで過ごすようになったケース。
→ 実態として「熟練した調理技能」ではなく一般的なサービス業務になっているとみなされるおそれがあり、更新時に活動内容の不一致を理由に不許可となるリスクがあります。
職種が変わる前に確認すべき実務ポイント
「技能」ビザで職種や業務内容を変える場合には、事前に次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 新しい仕事内容を具体的に書き出し、「熟練した技能」を要する業務かどうかをチェックする
- 契約書・雇用条件通知書・職務記述書(ジョブディスクリプション)に、技能性の高い業務内容が明記されているか確認する
- 実務経験年数や資格と、新しい職務との関連性を説明できるよう資料を準備する(職務経歴書など)
- 仕事内容の変更後、更新や在留資格変更が必要かどうか、出入国在留管理庁の最新案内や専門家の意見を確認する
特に、会社側が人手不足などの理由で、知らないうちに単純作業へ配置転換してしまうケースもあるため、本人が自ら在留資格との整合性を意識しておくことが重要です。
まとめ
在留資格「技能」は、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能」を前提とする就労資格であり、実際の仕事内容がこの範囲から外れると、更新や変更の際に不許可となるリスクがあります。
同じ技能分野の中で職務内容やポジションが変わる程度であれば、引き続き高度な技能を活かしている限り、適切な説明により許可される余地は十分にありますが、単純作業中心への転換や全く別の在留資格でカバーすべき職種への変更は特に注意が必要です。
職種や業務内容が変わる前には、新しい仕事内容が「技能」の定義に当てはまるかどうかを確認し、契約書や職務経歴書などの書類で説明できる体制を整えておくことが大切です。
不安がある場合には、出入国在留管理庁の公式情報を確認するとともに、行政書士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。


