はじめに
在留資格「技能」で日本に在留している方の中には、「子どもが増えて生活費が苦しくなってきた」「配偶者と子どもを家族滞在で呼び寄せたいが、収入が足りないかもしれない」「扶養家族が多いと、次回の在留期間更新で不許可になるのでは」と不安を感じている方が少なくありません。
出入国在留管理庁のガイドラインでは、在留期間更新の審査で「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」や、家族滞在の場面では「日本で一緒に暮らせるだけの経済力があること」が重要なポイントとされています。
この記事では、「技能」ビザで扶養家族の生活費負担が重い場合に、どのような点が審査で問題になりやすいのか、どの程度の経済的基準が求められているのかを、公的情報や実務上の運用を踏まえて解説します。
「技能」ビザと家族帯同の基本
在留資格「技能」は、「出入国管理及び難民認定法」別表第一に定められた就労系在留資格の一つで、外国料理の調理師やスポーツ指導者、貴金属職人、パイロットなど、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人のための資格です。
「技能」ビザで働く本人に配偶者や子どもがいる場合、通常は在留資格「家族滞在」で帯同させることになりますが、このとき扶養者に「家族を支えるだけの経済力があるか」が審査の大きなポイントになります。
また、「家族滞在」の在留資格を維持するためにも、配偶者や子どもが実際に扶養を受けていること、日本で一緒に暮らせるだけの生活基盤があることが求められます。
在留期間更新でチェックされる「経済的基準」とは
在留期間更新の共通の審査基準として、入管実務では次のような点が確認されます。
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていること
- 素行が不良でないこと
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(=生計要件)
「生計要件」については、永住許可に関するガイドライン等で「安定した収入と生活基盤があるか」が重視されることが明記されており、扶養家族が多くなるほど、より高い収入水準が求められる方向で運用されていると説明されています。
他方で、法務省や入管庁が「技能」ビザの更新のために具体的な年収金額を明示しているわけではなく、「公式な金額基準は未公表」であることが前提となりますが、実務上は「最低限生活していける経済力」があるかどうかが総合的に判断されます。
永住申請の場面では、単身者で年収300万円前後を一つの最低ライン、扶養家族が1人増えるごとに約80万円程度の年収増が必要という「一般的な目安」が紹介されることがありますが、これはあくまで実務上の目安であって、すべての在留資格更新に共通する公式基準ではありません。
とはいえ、「扶養家族が増えるほど、同じ年収でも生活に余裕がなくなる」という考え方は、在留期間更新や家族滞在の審査でも共通しており、家族構成と年収のバランスは常に意識しておく必要があります。
扶養家族の生活費負担が重い場合に問題となるポイント
扶養家族が多い、あるいは主たる扶養者の年収が低めである場合、「技能」ビザ更新で特に問題になりやすいポイントは次のとおりです。
- 扶養者の年収と家族人数のバランス
扶養者の収入が、配偶者や子どもなど家族全員の生活費を十分に賄える水準に達しているかどうかが、審査で重視されます。
家族滞在の解説でも、「入国当初1年間の生活費を賄える程度の資金」や、「扶養者のみの収入で家族全員の生活が安定していること」が必要とされており、扶養家族の人数が多いほど、預金残高証明書や課税・納税証明書などで安定した経済基盤を示すことが求められます。 - 「扶養を受けている」実態があるか
家族滞在の要件として、「配偶者や子が実際に扶養を受けていること」が挙げられており、生活費の送金や同居の実態などが重要です。
資格外活動許可によるアルバイト収入がなければ生活できないような状態は、「扶養を受けている」とは言い難いとされるため、家族滞在の更新だけでなく、主たる扶養者である「技能」ビザ本人の更新にも悪影響を与えるおそれがあります。 - 負債や家賃など固定費との関係
公的サイトでは直接「借金の有無」まで細かく示されてはいませんが、実務上は、家賃・ローン・教育費などの固定費と、世帯年収のバランスも見られます。
年収が一定水準あっても、扶養家族が多く、家賃等の負担が大きい場合には、「将来的に生計が不安定になるのではないか」と判断されるリスクがあるため、預金残高や貯蓄状況を補強資料として提出しておくことが有効です。
事例イメージと不許可リスクの考え方
ここで、実務全般で想定される典型的なイメージ事例を挙げます。
- 事例A:外国料理店の料理人(技能、年収320万円)、配偶者と子ども2人を家族滞在で帯同
この場合、年収320万円で4人家族の生活費を賄う必要があるため、地域の家賃水準や教育費などを考慮すると、ややタイトな水準と評価される可能性があります。
しかし、預金残高が十分にあり、過去数年安定して同程度の収入が継続していることが課税・納税証明書で示せる場合には、「一定の安定性がある」と判断される余地もあります。 - 事例B:スポーツインストラクター(技能、年収280万円)、配偶者のみ帯同、家賃の安い地方都市在住
年収自体は高くありませんが、家賃や生活費が比較的低い地域であり、預金もある程度蓄えている場合、実務上は「最低限生活していくことができる経済力」があると評価される可能性があります。
一方で、税金や社会保険料の滞納があると、年収の多寡にかかわらずマイナス評価となり得るため、納税状況の管理が重要です。 - 事例C:技能ビザ本人の年収が350万円、子ども3人、配偶者は家族滞在で就労なし
扶養家族が合計4人となるため、永住申請の生計要件の「一般的な目安」(単身300万円+扶養家族1人ごとに約80万円)と比較すると、やや不足気味と考えられる水準です。
在留期間更新では永住と同じ厳格さで判断されるとは限りませんが、将来の生活の安定性に疑問が持たれると、更新許可が難しくなるおそれがあるため、残高証明や追加収入の証明などで補う必要があります。
不許可を避けるために準備しておきたいポイント
「扶養家族が多いから必ず不許可になる」というわけではなく、家族構成に応じてどのように経済的安定性を示すかが重要です。
- 課税・納税証明書で安定した収入を示す
直近1~2年分の住民税課税証明書・納税証明書は、収入と納税状況を示す基本資料であり、家族滞在の審査でも重視されます。
一定の年収が継続していること、税金の滞納がないことを示せるよう、普段から源泉徴収票や給与明細を保管しておきましょう。 - 預金残高証明書や貯蓄状況の提出
年収だけでは生活に余裕があると判断されにくい場合、預金残高証明書で中長期的な生活基盤を補強することが有効です。
特に扶養家族が多い場合や、最近転職したばかりで年収実績がまだ十分でない場合には、預金残高や過去の貯蓄状況がプラス材料になります。 - 家族構成や生活状況の説明書を用意する
家賃が安い地域に住んでいる、親族からの援助がある、子どもがまだ未就学で教育費がかからないなど、実際の生活状況によって必要な生活費は変わってきます。
申請書類と一緒に、家族構成・住居費・教育費などの概要をまとめた説明書を添付することで、「この世帯構成であれば、この年収でも生活が成り立つ」という事情を整理して伝えることができます。 - 家族滞在側の在留状況にも注意する
家族滞在の在留資格では、「扶養を受ける状態にあること」が要件であり、配偶者や子どもが資格外活動で多額の収入を得ている場合には、「実質的には扶養されていない」と判断されるおそれがあります。
扶養者である「技能」ビザ本人の収入を主としながら、家族滞在側の収入はあくまで補助的な範囲にとどめるよう、就労時間や収入額にも気をつける必要があります。
まとめ
「技能」ビザの在留期間更新において、扶養家族の生活費負担が重い場合でも、直ちに不許可になるわけではありませんが、扶養家族の人数と本人の年収・貯蓄などとのバランスが厳しくチェックされます。
家族滞在の要件や永住申請の生計要件に見られるように、「家族全員が最低限生活していけるだけの経済力」と「安定した生活基盤」が重要な判断材料となるため、課税・納税証明書、預金残高証明書、給与明細などを通じて、客観的に説明できるよう準備しておくことが大切です。
扶養家族が増えた、収入が一時的に下がったなど、状況の変化がある場合には、早めに専門家に相談し、自分の家族構成と収入水準でどの程度のリスクがあるのか、どのような資料で補強できるのかを確認したうえで、余裕をもって更新手続を進めることをおすすめします。


