はじめに
在留資格「技能」で日本に滞在している外国人の方にとって、「勤務先の突然の廃業・倒産」は、生活と在留資格の両面に大きな不安をもたらす出来事です。
この記事では、勤務先が廃業した場合に在留資格がどうなるのか、どのくらいの期間で転職先を探すべきか、そして緊急時にとるべき具体的な対処法を、関係法令や公的機関の情報に基づいて整理して解説します。
「技能」ビザとは?
在留資格「技能」は、出入国管理及び難民認定法において「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務」に従事する活動と定義されています。
典型的には、外国料理のコック、外国特有の建築技能者、外国特有製品の製造・修理、宝石・貴金属・毛皮の加工、パイロット、スポーツ指導者、ソムリエ等が対象となります。
勤務先が廃業したとき、在留資格はすぐなくなるのか?
1 基本的な考え方:「在留資格取消制度」と「3か月ルール」
入管法には「在留資格取消制度」があり、在留資格に応じた活動を継続して行っていない場合、在留期間の途中であっても在留資格が取り消される可能性があります。
就労系の在留資格(「技能」「技術・人文知識・国際業務」など)については、在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていないで在留しているとき、正当な理由がない場合には在留資格の取消し対象となる旨が規定されています(入管法22条の4第1項6号)。
したがって、勤務先が廃業しても、直ちに在留資格が無効になるわけではありませんが、「3か月以上、技能の活動を行っていない状態」が続くとリスクが高まると理解しておくことが重要です。
2 「会社都合」の退職かどうか
勤務先の倒産や廃業は、通常「会社都合退職」と位置づけられます。
出入国在留管理庁は、「雇用先の倒産・業務縮小等により、自己の都合によらない理由で解雇・雇止め・待機となった外国人」について、現に有する在留資格のまま在留期限までの在留を認め、就職活動の状況によっては在留期間の更新を認める運用を行う旨を公表しています。
そのため、会社都合で勤務先を失ったからといって、直ちに帰国を強いられるわけではなく、就労意思と転職活動の実態があれば、在留継続が認められる余地があります。
緊急時のチェックポイントと届出義務
1 14日以内の「所属機関に関する届出」
在留資格「技能」など就労系在留資格で在留する外国人は、勤務先との契約終了など所属機関の変更があった場合、出入国在留管理庁に対して14日以内に「所属機関に関する届出」を行う義務があります(入管法19条の16)。
退職・解雇・倒産で雇用契約が終了したときも、「退職日」または「契約終了日」から14日以内に届出する必要があります。
届出方法は、
2 ハローワークへの手続と公的支援
一方、厚生労働省は、事業主に対し、外国人労働者の雇入れ・離職の際にハローワークへ届出を行うことを義務づけています。
離職した外国人労働者に対して、ハローワークが再就職支援を行うことも周知されていますので、勤務先が廃業した場合には、最寄りのハローワークで求職申込(いわゆる「ハローワークカード」の取得)を行うことが望ましいです。
このハローワークでの求職活動の記録は、後に入管へ在留期間更新や在留資格変更を申請する際、「就職活動を継続していた」ことを示す資料として有効に活用できます。
転職活動中に気をつけるポイント
1 3か月を目安に、実質的な活動を継続する
前述のとおり、「3か月以上、在留資格に対応する活動をしていない状態」が続くと、原則として在留資格取消しの可能性が生じます。
もっとも、就職活動中であることには「正当な理由」が認められ得るため、実際には、以下のような資料を用意しておくことが重要です。
- ハローワークの求職申込・職業相談の記録(求職番号、相談記録など)
- 民間求人サイトや人材紹介会社への登録画面の印刷等
- 企業との面接記録、応募メール、オンライン面接の案内など
- 不採用通知メールや書面 など
これらを継続的に保管しておくことで、「在留資格に応じた活動に就くために、真剣に就職活動をしていた」と説明しやすくなり、在留期間更新や在留資格取消しの判断において有利に働く可能性があります。
2 「技能」に合致する仕事かを確認する
転職先を探す際には、単に就職先があるかどうかだけでなく、その業務内容が在留資格「技能」に該当するかを確認することが重要です。
たとえば、外国料理の調理師として「技能」の在留資格を持っている方が、一般事務や販売職など技能と関係のない業務に就く場合は、「技能」ではなく別の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務)への変更が必要となるケースがあります。
在留資格ごとの活動内容は、出入国在留管理庁の公式サイトに一覧が掲載されていますので、転職活動前に確認しておくと安心です。
事例イメージ:外国料理店の廃業と転職活動
ここでは、実在の個別案件ではなく、一般的なイメージ事例として流れを紹介します。
例:
中国料理レストランでコックとして「技能」の在留資格を持って働いていたAさんの勤務先が、コロナ禍後の売上不振により突然廃業することになりました。
Aさんがとるべき行動の一例は、次のとおりです。
- 雇用契約終了日を確認し、その日から14日以内に「所属機関に関する届出」を入管に提出する。
- すみやかにハローワークで求職登録を行い、新たな就職先を探し始める。
- 求人サイトや知人の紹介なども活用し、同じく外国料理を提供するレストランやホテルなど、在留資格「技能」に合致する職種を優先して応募する。
- 面接や応募の記録、ハローワークでの相談記録などを保存し、就職活動を続けていることを証明できるようにする。
- 在留期限が近づいており、まだ転職先が決まらない場合には、入管に在留期間更新や在留資格変更の可能性について相談する。
このように、「14日以内の届出」「就職活動の実績」「在留資格に合致する職務内容」が、勤務先廃業後のキーワードとなります。
在留資格変更・特定活動への切り替えの可能性
雇用先の倒産等で就労できなくなった方について、出入国在留管理庁は、就職活動のための「特定活動」への変更を認める運用を行っています。
たとえば、在留期限が迫っているものの、引き続き日本で就職活動を希望する場合、在留資格変更許可申請により「特定活動(就職活動)」へ切り替えることが検討されます。
特定活動(就職活動)の在留期間は、原則1年で、一定の場合に限り2回まで更新が可能とされていますが、個々の事情や活動状況によって判断されるため、事前に専門家や入管窓口に確認することが望ましいです。
また、転職先が「技能」ではなく別の在留資格に該当する場合は、「技能」から別の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務など)への変更許可申請が必要になります。
まとめ
勤務先が廃業・倒産したからといって、在留資格「技能」が直ちに無効になるわけではありませんが、「3か月以上、在留資格に対応する活動を行っていない状態」が続くと、在留資格取消しのリスクが高まることを理解しておく必要があります。
退職・倒産後は、14日以内の所属機関に関する届出、ハローワークでの求職登録・再就職支援の活用、就職活動の記録の保存を行い、在留資格に適合する職務内容の転職先を早期に確保することが重要です。
また、在留期限が迫っている場合には、特定活動(就職活動)への在留資格変更や、別の在留資格への切り替えも選択肢となりますので、出入国在留管理庁の案内や公的情報を確認しつつ、専門家への相談も検討されると安心です。



