はじめに
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を法的に支援する重要な制度です。しかし、この制度を利用する際に気になるのが費用の問題です。本記事では、成年後見人の報酬相場や費用の仕組み、そして負担軽減策について詳しく解説します。
成年後見人の報酬相場
成年後見人の報酬は、家庭裁判所が被後見人の財産状況や後見事務の内容を考慮して決定します。一般的な報酬相場は以下の通りです。
専門職が成年後見人の場合
- 管理財産額1,000万円以下:月額約2万円
- 管理財産額1,000万円超〜5,000万円:月額3〜4万円
- 管理財産額5,000万円超:月額5〜6万円
親族が成年後見人の場合
親族が成年後見人を務める場合、無報酬とすることも可能です。ただし、報酬を受け取る場合は、専門職と同様に家庭裁判所に報酬付与の申立てを行う必要があります。
報酬の種類と決定プロセス
成年後見人の報酬は、主に以下の2種類に分けられます。
- 基本報酬:通常の後見事務に対する報酬
- 付加報酬:特別な後見事務(不動産売却や遺産分割など)に対する報酬
報酬決定のプロセスは以下の通りです。
- 成年後見人が家庭裁判所に報酬付与の申立てを行う
- 家庭裁判所が被後見人の財産状況や後見事務の内容を考慮
- 家庭裁判所が報酬額を決定
費用負担の仕組み
成年後見人の報酬は、原則として被後見人の財産から支払われます。しかし、被後見人に十分な財産がない場合、費用負担が問題となることがあります。
費用負担軽減策
成年後見制度の利用に伴う費用負担を軽減するための方策がいくつか用意されています。
1. 成年後見制度利用支援事業
市区町村が実施するこの事業は、低所得者や生活保護受給者を対象に、申立費用や後見人等の報酬の助成を行います。
- 申立費用の助成
- 後見人等の報酬助成:月額1.8〜2.8万円程度
2. 成年後見助成基金
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートが運営する基金で、低所得者を対象に後見人等の報酬を助成します。
- 助成額:月額1万円程度(最長5回まで申請可能)
3. 法テラスの利用
法テラス(日本司法支援センター)を利用することで、低所得者は成年後見制度の利用に関する法律相談や費用の立替えを受けられる場合があります。
費用負担軽減のための工夫
- 親族後見人の選任:専門職ではなく親族が後見人になることで、報酬を抑えることができる場合があります。
- 複数後見人の活用:専門職と親族で役割分担することで、全体の報酬を抑える工夫ができます。
- 任意後見制度の利用:将来の判断能力低下に備えて、あらかじめ後見人と報酬を決めておく任意後見制度を活用する方法もあります。
まとめ
成年後見制度の利用には一定の費用がかかりますが、被後見人の財産状況や後見事務の内容によって報酬は変動します。また、様々な負担軽減策も用意されているため、経済的な理由で制度利用を諦める必要はありません。成年後見制度の利用を検討する際は、まず地域の中核機関や社会福祉協議会などの相談窓口に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら、最適な方法を選択することが大切です。費用面での不安を解消し、必要な方が安心して成年後見制度を利用できる社会の実現が望まれます。