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成年後見制度と医療同意:本人の意思決定支援の重要性と課題

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成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を法律的に支援する制度です。しかし、医療行為に関する同意権については、現在の制度では明確な規定がありません。本記事では、成年後見制度における医療同意の問題と、本人の意思決定支援の在り方について考察します。

成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度があります。法定後見制度は、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれています。一方、任意後見制度は、本人が判断能力があるうちに、将来の判断能力低下に備えて後見人を指定しておく制度です。

現在の成年後見制度では、成年後見人等に医療同意権は与えられていません。これは、医療行為への同意が一身専属的な権利であり、本人以外の者が代わりに決定することは適切ではないという考え方に基づいています。しかし、実際の医療現場では、本人の意思確認が困難な場合に、誰が医療行為に同意するべきかという問題が生じています。例えば、認知症の進行した80代の女性Aさんが、がんの手術を受ける必要が生じた場合、誰がその決定を行うべきでしょうか。

このような課題に対応するため、近年では「意思決定支援」の重要性が強調されています。意思決定支援とは、本人の意思や選好を最大限尊重しながら、本人の意思決定をサポートする取り組みです。厚生労働省は「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」を策定し、医療・介護の現場での意思決定支援の在り方を示しています。このガイドラインでは、本人の意思決定能力を画一的に判断するのではなく、状況に応じて柔軟に支援を行うことが重要とされています。

成年後見人等は、本人の財産管理や身上保護を行う立場にあります。医療同意権は持っていませんが、意思決定支援の一翼を担う重要な役割があります。具体的には、以下のような役割が期待されています:

  1. 本人の意思や選好を日頃から把握し、記録すること
  2. 医療・介護関係者と連携し、本人の最善の利益を追求すること
  3. 本人の意思決定を支援するチームの一員として参加すること

例えば、先ほどのAさんのケースでは、成年後見人が日頃からAさんの医療に対する考えを聞き取り、記録しておくことで、手術の決定に際して本人の意思を尊重した判断ができる可能性が高まります。

成年後見制度における医療同意の問題は、今後も重要な課題となります。2017年に策定された成年後見制度利用促進基本計画では、意思決定支援の在り方についての指針策定が求められています。また、成年後見制度の見直しに向けた検討も進められており、医療同意に関する法整備の可能性も議論されています。今後は、本人の権利擁護と適切な医療提供のバランスを取りながら、制度の改善が進められることが期待されます。

成年後見制度と医療同意の問題は、本人の自己決定権と適切な医療・介護の提供という、時に相反する要素のバランスを取る必要がある難しい課題です。しかし、意思決定支援の考え方を取り入れることで、本人の意思を最大限尊重しながら、適切な支援を行うことが可能になります。成年後見人等は、本人の意思決定を支援するチームの一員として重要な役割を担っています。今後も、法制度の整備と現場での実践を通じて、判断能力が不十分な方々の権利擁護と適切な医療提供の両立を目指していく必要があります。

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