はじめに
外国人が日本で会社を経営したり管理業務に携わるためには、「経営・管理」という在留資格が必要です。ところが、家庭内トラブル、例えば配偶者との離婚や別居が発生すると、この申請にどのような影響を及ぼすのでしょうか。また、事前に講じるべき具体的な対策はどんなものなのでしょうか。この記事では、法務省など公的情報をもとに正確にわかりやすく解説します。
「経営・管理」在留資格の基本要件
「経営・管理」在留資格は、外国人が日本で事業の経営や管理に実質的に参画していることが前提です。具体的には、次のポイントが審査されます。
- 事業所の確保:事業用に賃貸された物件が要件。自宅兼事務所の場合、事業として使用が明示されている必要があります。
- 事業の継続性:事業が安定して継続運営される見込みがあること。決算内容や将来の計画がチェックされます。
- 出資額:原則として資本金500万円以上が必要。
- 法令順守:税金や社会保険などの納付状況、労働条件の適正が問われます。
家庭内トラブルが申請へ及ぼす影響
1. 配偶者との離婚
経営管理ビザには、配偶者の身分が要件ではありません。ただし、家族構成や婚姻状況が申請時の安定した生活基盤や信用力評価に多少影響することがあります。
- 定住者ビザや配偶者ビザと違い、申請人自身の事業能力・経済基盤が主な審査ポイントです。
- ただし、「実態のある結婚生活」が申請時に記載された場合、後の離婚や別居が「虚偽申告」とみなされると、在留資格の取消等のリスクがあります。
2. 別居
配偶者ビザ(「日本人の配偶者等」等)は、夫婦の同居が原則とされますが、経営管理ビザは申請者自身が主体となるため、別居自体が直接不許可の要因となることはありません。
- ただし、別居による生活環境の変化が事業経営にマイナス影響を及ぼす場合には、生活安定性(資金力や居住地等)が審査の対象となり得ます。
- 養育費の負担や子との面会交流などについても、事業経営と無関係なら直接的には問題になりません。
事前対策のポイント
1. 生活基盤・事業基盤の明確化
- 賃貸契約・事業所の運営状況をしっかり準備。家族事情で転居した場合は、事業所変更届や新しい契約書、社会的標識の設置が必要です。
- 資本金や事業計画書、過去の実績資料を確実に提出できるよう準備しましょう。
2. 離婚や別居の記録管理
3. 信頼できる専門家への相談
- 国内法や行政窓口の最新情報を参照し、行政書士や専門家に相談するのが最も安心です。
- 虚偽記載を避け、事実と異なることは絶対に申請書に記載しないよう徹底しましょう。
4. その他の在留資格への変更(離婚後)
- 離婚や別居のみで「経営・管理」から変更を余儀なくされることはありませんが、万が一事業継続が困難になった場合は「技術・人文知識・国際業務」等や「定住者」など他の資格の可能性を調べましょう。
事例
例えば、Mさん(35歳・中国籍)は、日本でIT事業を起業し「経営・管理」在留資格を取得しました。申請時は妻と同居していましたが、後に別居となりました。事業所は賃貸物件で看板も設置。離婚後も事業運営が継続していることを十分に説明でき、定期提出書類・辻褄の合った経営計画も用意した結果、在留資格が継続されました。
一方、別の事例では、住居兼事務所の賃貸契約が曖昧で、標識も設置せず、家族事情による生活不安定がビザ更新審査でマイナス評価となり、不許可となったケースも公表されています。
まとめ
「経営・管理」在留資格は、事業運営の実態・基盤が重要です。離婚や別居など家庭のトラブルが直接ビザ不許可になることは通常ありませんが、間接的に事業評価・生活基盤への不安材料となる場合もあるため、常に書類と事実関係を明確に整えることが不可欠です。配偶者ビザ等とは審査基準が違う点も踏まえ、必ず公的情報や専門家の意見を参照しながら正確な対応を心がけましょう。