はじめに
近年、日本で事業を営みたい外国人経営者が増加し、「経営管理」の在留資格の申請希望者も増えています。しかし、事業の再開や業務内容の変更時には、思わぬ申請上の不利な状況に陥るケースが少なくありません。この記事では、よく見受けられる「不利になるケース」と、その具体的な回避方法を、出入国在留管理庁など公的機関の公式情報を活用しながら解説します。
経営管理の在留資格に求められる主な要件
「経営管理」ビザの申請時には、主に以下の要件を満たす必要があります。
- 事業のための事業所が日本国内に存在すること、または事業開始前であれば事業所として使用する施設を確保していること
- 日本国内で2人以上の常勤職員の雇用、または資本金500万円以上の会社規模
- 経営または管理の経験が3年以上あること(大学院での関連科目修了も算入)
- 日本人と同等額以上の報酬を得ること
申請が不利になる主なケース
1. 事業の継続性・安定性が認められない場合
「事業活動が実態として確認できない」「売上がほとんどない」などの場合、継続的な事業運営が疑われ、不許可となる可能性があります。事業再開時も、以前の営業停止状況や売上低迷の理由を問われることが多くなります。
回避法
- ホームページやパンフレットなど事業活動を証明する資料を整備
- 売上が少ない場合でも、顧客リストや営業活動記録等を提出
2. 事業所の確保が認められない場合
バーチャルオフィスやシェアオフィスでは、物理的かつ独立した事業所とみなされない場合があり、審査で不利になることがあります。
回避法
- 独立した専用物件の確保
- 賃貸契約書・写真など事業所の使用実態を証明する資料の提出
3. 業務内容変更時の事業計画書不備
業務内容を変更した場合、使い回しの事業計画書や具体性の乏しい内容では審査で不利となります。新たな事業内容に即した計画書が求められます。
回避法
- 事業目的や新規サービスの内容・市場分析・収支計画を詳細に記載した事業計画書を作成
- 業務変更の合理性、将来的な成長性を具体的に記載
4. 財務状況・税金未納
税金や社会保険料の未納、会社の赤字決算など、財務面が安定していないと判断される場合も申請が不利になります。
回避法
- 納税・社会保険料支払いの証明書を用意
- 赤字決算の場合でも経営改善の具体的な取り組みを説明
5. 代表者の海外長期滞在や日本での生活実態に問題
代表者が頻繁に海外滞在している、不在が続いている場合や、住民税・健康保険料の未納など、生活実態に問題があると審査で不利になります。
回避法
- 出張理由や事業運営の状況を説明する資料提出
- 住民税・健康保険料・年金の納付状況を証明
事例紹介
たとえば、ある外国人経営者(仮名:A氏)は、IT企業を一度閉鎖し、数年後に再開。申請時、売上ゼロ期間の説明と現在の営業活動の実績(仮の顧客リストやプロジェクト内容)を提出したことで、事業継続性が認められ、無事に在留資格更新となりました。
また、業務内容の変更(飲食業→ネット通販)に際しても、二度手間を防ぐために新規事業の市場調査、将来的な収益予測、関連資格取得計画などを事業計画書で詳細に記載した結果、審査をスムーズにクリアできました。
まとめ
「経営管理」の在留資格は、事業再開や業務内容変更時、事業計画の具体性・事業所の確保・財務面・生活実態など様々な観点から慎重に審査されます。不利な状況を回避するには、公的機関の公式情報や審査の傾向、提出書類の整備がカギとなります。法務省・出入国在留管理庁の公式ホームページを活用し、最新情報を把握しながら、確実な申請準備を行いましょう。