はじめに
家庭内暴力(DV)は、被害者本人だけでなく、家族や子どもにも深刻な影響を及ぼす重大な社会問題です。近年、DVに対する法的保護や支援体制は大きく進化し、被害者が安心して相談・保護を受けられる環境が整いつつあります。しかし、「どこに相談すればよいのか」「どのような法的保護が受けられるのか」といった疑問や不安を抱える方も多いのが現状です。
この記事では、DV被害者が利用できる法的保護制度や具体的な相談窓口について、最新の公的情報に基づき、わかりやすく解説します。
DV被害者が受けられる主な法的保護制度
1. DV防止法による保護命令
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」に基づき、被害者は地方裁判所に対して保護命令の申立てができます。2024年4月の法改正により、保護命令の対象や内容が拡充されました。
主な保護命令は以下の通りです。
- 接近禁止命令:加害者に対し、被害者やその子ども、親族等への接近を禁止
- 電話等禁止命令:SNSや電話、メール等による連絡を禁止
- 退去命令:加害者に対し、被害者と同居する住居からの退去を命じる
- 親族等への接近禁止命令:被害者の親族や勤務先等への接近を禁止
- 子どもへの接近禁止命令:被害者と同居する未成年の子への接近を禁止
保護命令の期間も、従来の6か月から1年に延長されるなど、被害者保護が強化されています。
2. 住民基本台帳の支援措置
市区町村に申し出ることで、加害者が被害者の住民票や戸籍の附票を取得できないようにする「DV等支援措置」が受けられます。これにより、加害者に現住所が知られるリスクを防ぐことができます。支援措置は1年ごとに更新が可能です。
3. 法律相談・法的支援
法テラスや各自治体では、DV被害者向けの無料法律相談を実施しています。弁護士による相談や、必要に応じて法的手続きの支援も受けられます。
DV被害者が利用できる主な相談窓口
1. DV相談ナビ(内閣府)
全国共通の電話番号「#8008(はれれば)」にかけると、最寄りの相談窓口につながります。24時間対応の窓口もあり、緊急時にも利用可能です。
2. DV相談プラス
専門の相談員が電話やメール、チャットで対応し、安全な居場所の提供や各種支援につなげてくれます。匿名相談も可能です。
3. 配偶者暴力相談支援センター
各都道府県や市区町村に設置されており、相談、カウンセリング、シェルター(一時保護施設)への入所支援などを行っています。女性だけでなく、男性被害者向けの相談窓口も設けられています。
4. 法テラス
DV被害者向けの無料法律相談や、必要に応じた法的手続きの支援を行っています。経済的に困窮している場合は、弁護士費用等の立替制度も利用できます。
5. 地方自治体の相談窓口
各自治体の男女共同参画センターや福祉事務所などでも、DV相談やカウンセリングを受け付けています。臨床心理士によるカウンセリングや、母子・婦人相談員によるサポートも実施されています。
事例紹介
例えば、Aさん(30代女性)は、夫からの暴力と脅迫に悩み、子どもとともに自宅を離れました。Aさんは市の配偶者暴力相談支援センターに相談し、シェルターに一時保護されました。その後、法テラスの無料法律相談を利用し、裁判所へ保護命令を申立て、加害者に接近禁止命令が発令されました。さらに、住民票の支援措置も受け、加害者に新住所が知られることなく、安心して新しい生活を始めることができました。
まとめ
DV被害に悩む方は、決して一人で抱え込む必要はありません。法的保護制度や相談窓口を活用することで、安全と安心を確保し、新たな一歩を踏み出すことができます。DV防止法の改正により、保護命令の範囲や内容も拡充され、被害者の権利がより守られるようになっています。まずは、身近な相談窓口や専門機関に連絡し、適切な支援を受けてください。
困ったときは「#8008」や「DV相談プラス」など、すぐに相談できる窓口を活用しましょう。あなたの安全と権利を守るための制度と支援が、必ずあります。