はじめに
日本で暮らし続けるロシア人の方が「日本国籍の取得(帰化)」を目指す場合、二重国籍リスクや国籍放棄証明の取得、帰化申請の不許可事例といった問題が重要な検討点となります。本記事では、ロシア人の帰化申請に際して直面しやすいポイントを、最新の政府情報を参考にしながらわかりやすく解説します。二重国籍をめぐる国際的な状況や、トラブルになりやすい点も具体的に紹介します。
二重国籍リスクとその背景
日本は原則として二重国籍を認めていません。日本の国籍法では、外国籍を自ら取得した場合、日本国籍を自動的に喪失する規定や、一定年齢までに選択しなければ自動的に日本国籍を失うことが定められています。
一方で、ロシアでも近年二重国籍をめぐる法制度が変化し、一部のケースで自国民が外国籍を保持した場合、現国籍を喪失させることや、帰化・出生による国籍選択義務が課されています。
▼ 主なリスクとして考えられるもの
- 帰化許可直前のタイミングでロシア国籍の放棄手続きを進めなかった場合、日本側で帰化が認められてもロシア国籍が残り、意図せず二重国籍状態になる
- 二重国籍を隠して就業した場合など、不正行為として刑罰やビザの取消しリスクがある
- 国籍喪失(離脱)の事実を届出しないことで、日本とロシアの両政府でトラブルになるリスク
国籍放棄証明の取得手順・タイミング
日本の帰化申請では、「原則として現行国籍の離脱(放棄)」が求められます。特にロシア国籍の場合、放棄証明取得に時間を要することも多いため、計画的な準備が大切です。
国籍放棄手続きの基本的な流れ
- 申請書類作成・提出
ロシア大使館または領事館で国籍離脱申請書類を準備し、必要書類(パスポート、出生証明書、住民票など)を揃えます。 - 審査・追加書類対応
ロシア側の審査期間は状況によりますが、数カ月以上要する場合も多く、「事情説明書」など追加書類を求められることもあります。 - 国籍放棄証明書の発行
審査通過後、「国籍離脱証明書」が交付されます。
国籍放棄証明の取得タイミング
帰化申請書類提出時点で離脱証明が間に合わない場合は、理由を説明し、追加提出を約束する方法もあります。
※状況によっては、日本の法務局に「帰化許可の予備審査結果」が出てから本国で国籍放棄するほうがリスクが低いケースも存在します。
帰化不許可事例と注意点
帰化申請は厳格に審査され、「安定した収入」「素行善良」「必要書類の正確性」などの条件を満たす必要があります。よくある不許可事例は以下の通りです。
- 収入や在職状況が不安定で、生活基盤が認められない
- 申請書類記載内容に偽りがあった(虚偽申告や未記載)
- 日本国内での滞在年数が不足していた
- 税金や年金の未納、過少申告
- 前科や交通違反歴未申告
- 帰化中の状況変化(転職、離職、住所変更等)を報告しなかった
- 既存国籍の離脱が完了していないケース
実例
40代ロシア籍のAさんは、5年以上日本で働き、帰化申請を決意。しかし申請直前に会社都合で退職し、収入証明の更新が間に合わなかったため不許可となりました。再申請時には新たな勤務先の証明や安定収入の確認書類を添付し、許可されました。
トラブル回避法
- 申請内容の正確性徹底:虚偽や記載漏れがないよう、事前に行政書士や専門家に確認してもらう
- 国籍離脱時期は慎重に決定:帰化予備審査後に本国で放棄手続きを行うことで、無国籍リスクや手続きの二度手間を防げます
- 追加書類依頼にも備える:どのタイミングでも迅速に対応できるよう事前準備、相談窓口を活用
- 収入・納税・滞在記録の管理:日常から証明資料を整えておくことが重要です
まとめ
ロシア人の帰化申請では、二重国籍リスクの回避とタイムリーな国籍放棄証明取得が重要です。帰化不許可となりやすい事由も多いため、計画的な準備と正確な情報管理、そして行政書士等専門家のサポートを活用することでトラブルを防ぐことができます。最新の法務省ガイドラインや現地大使館・領事館の案内を必ず確認し、余裕のあるスケジューリングを心がけましょう。