はじめに
近年、特定技能の在留資格で日本に滞在・就労する外国人が増えています。ですが、転職や解雇など雇用関係に変化が生じた場合、「会社都合で解雇された経験があると特定技能への変更や更新が不利になるのでは?」と不安に感じる方も多いかと思います。本記事では、行政書士の視点から、会社都合による解雇歴と特定技能の在留資格変更・更新への影響について最新の制度と注意点を解説します。
そもそも「特定技能」とは何か
「特定技能」は、一定の専門性を持つ外国人が人手不足分野で働くための在留資格で、1号と2号に分かれています。1号は通算5年まで在留可能、2号はより熟練した技能を求められ、上限のない在留も可能です。
会社都合による解雇の実態と制度上のポイント
特定技能外国人も日本の労働法の保護を受けており、会社都合(例:経営悪化や事業縮小など)による解雇の場合には「やむを得ない事由」が必要です。妊娠・出産や国籍などを理由とした解雇は禁止されています。解雇理由や手続きが不適切な場合、労働基準監督署や出入国在留管理庁に相談することが重要です。
解雇歴が在留資格変更・更新に与える影響
基本的考え方
入管法では、在留資格は「活動の実態」や「契約の継続性」が重視されます。在留資格の更新や変更申請時、「在留資格に適合した活動を継続しているか」「新しい雇用契約が法律や制度の基準を満たしているか」が審査されます。
会社都合で解雇された場合でも、
- 解雇が適正で法令に則っているか
- 速やかに新しい受け入れ先機関を見つけ、再就職手続きや契約などが整っているか
- 離職後3ヶ月以内など、合理的な期間内に在留活動が再開されるか
といった事情が総合的に判断されます。なお、解雇後にすぐに新しい雇用先が見つからない場合は、ハローワーク等で求職活動を行い、必要に応じて「特定活動(就職活動)」への在留資格変更を検討できます。
在留資格の更新・変更への影響
- 適正な理由により解雇された場合は、過去の解雇歴だけで即座に「特定技能」への変更・更新が不可となることはありません。
- 重要なのは「就労継続意志」と「新たな受け入れ先が決まるまでの活動状況」です。
- 一方、度重なる解雇や、解雇理由が重大な規律違反等である場合は、在留資格審査で厳しく評価される可能性があります。
- また、解雇を隠して申請したり、虚偽の履歴を書くと、虚偽申請として重大な不利益を受けますので絶対に避けてください。
解雇後に必要な手続きと注意事項
- 離職・解雇が決まったら14日以内に入管庁へ「契約解除」の届出が必要です。
- 再就職先が決まった場合は新たな雇用契約書・必要書類を添えて在留資格変更や更新の手続きを速やかに行います。
- 新しい雇用先がなかなか見つからない場合は、職業紹介事業者やハローワークを活用し、「特定活動(就職活動)」在留資格に切り替えて活動を継続できます。
- 解雇理由や職歴は、申請書類で正確に記載しましょう。
モデルケース
フィリピン出身のAさん(30代・男性)は建設分野の特定技能1号で来日し、雇用先の経営悪化により会社都合退職となりました。即座にハローワークで求職活動を始め、2ヶ月後に別会社と新たな雇用契約を締結。入管庁に必要な届出と新雇用契約書を提出し、在留資格更新も無事認められました。このように適切な手続きを取れば、会社都合による解雇歴があっても特定技能の資格変更・更新が不利になるわけではありません。


