はじめに
日本人又は永住者の配偶者として「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格で日本に滞在している外国人の方が、離婚や別居に至った場合、その後の在留資格について不安を感じる方は少なくありません。特に、別居中の段階で「定住者」ビザの更新を希望する場合、どのように説明すれば良いかを理解しておくことが重要です。本記事では、法務省の公式情報をもとに、別居中でも定住者ビザを更新できる可能性と、その際に求められる家庭事情の説明方法について解説します。
「定住者」ビザとは?
「定住者」ビザは、出入国管理及び難民認定法(入管法)第20条に基づき、法務大臣が個別の事情を考慮して在留を認める在留資格です。法務省が公開している資料(法務省:『日本人の配偶者等』又は『永住者の配偶者等』からの変更許可事例)によると、離婚や別居の事情が人道的に考慮される場合、定住者ビザへの変更や更新が認められることがあります。
この資格は、日本での生活基盤や家族関係を維持するために特別に認められるもので、就労制限がなく、幅広い職種で働くことができます。
別居中でも更新できるケースとは
別居中であっても、以下のような状況では「定住者」ビザの更新や変更が許可される可能性があります。
- 実子の監護・養育を継続している場合(日本人の子どもや日本で生まれ育った子どもなど)
- 家庭内暴力(DV)等によりやむを得ない別居となった場合
- 病気や介護、仕事上の事情により一時的な別居である場合
法務省の公表事例では、DVが原因で別居状態にあったが、離婚手続が未了のケースにおいても、申請人が自立した生活を営み、日本での生活が安定していると判断されたことから、定住者ビザへの変更が認められた例が報告されています(法務省入管庁資料)。
家庭事情を説明する際のポイント
別居中であることを正直に申告し、次のような点を明確に説明することが重要です。
- 別居の理由を具体的に説明すること
DVや経済的事情、就労環境など、やむを得ない理由がある場合には、その詳細を明確にします。警察への相談記録や医師の診断書など、客観的な証拠があると説得力が高まります。 - 生活状況の安定を示すこと
日本での安定した収入、就労状況、住居の確保などを説明します。たとえば、訪問介護員や看護助手として働いている事実がある場合、生活の自立性を示す材料になります。 - 子どもの監護・養育状況を説明すること
日本人の子どもを養育している場合は、親権者であること、監護実績(学校や保育園の記録等)を示すことが重要です。
提出時に添付する主な書類
法務省の申請様式(在留期間更新許可申請書)や、在留資格変更許可申請書(同庁公式様式)に加え、以下のような書類を添付することで、事情の説明がより具体的になります。
- 別居理由を説明する陳述書
- 離婚調停や保護命令に関する書類(該当する場合)
- 就労証明書や源泉徴収票、給与明細
- 子の在籍証明書や育児支援関係の書類等
注意点:届出を忘れずに
別居や離婚が生じた場合は、入管法第19条の16に基づき、14日以内に「配偶者に関する届出」(出入国在留管理庁:配偶者に関する届出)を行う必要があります。届出を怠ると、更新審査にも不利に働く可能性があるため注意しましょう。
よくある誤解
「別居するとすぐにビザが取消される」というのは誤解です。実際の判断は、別居の理由や期間、日本での生活基盤の有無、就労・養育状況などを総合的に考慮して行われます。ただし、理由の説明が十分でない場合や、日本での生活が不安定な場合は、更新が難しくなることもあります。
まとめ
別居中であっても、適切に事情を説明し、日本での生活が安定していることを証明できれば、「定住者」ビザを更新できる可能性は十分にあります。重要なのは、別居がやむを得ない事情であることを誠実に説明し、生活実態を明確に示すことです。法務省の公表事例や公式様式をよく確認し、必要に応じて専門家(行政書士など)にご相談ください。


