ブログ

家族信託契約は変更・解除できる?後から内容を見直したいときのポイントと手続き

家族信託のアイキャッチ画像

家族信託(民事信託)は、一度契約すると長期間続くことが多いため、「子どもの状況が変わったので受益者を変えたい」「もう家族信託をやめて元の名義に戻したい」といったご相談が少なくありません。家族信託は、信託法という法律に基づいた契約ですので、変更や解除にも一定のルールがあります。
この記事では、家族信託契約の「変更」と「解除・終了」の基本的な考え方と、実務上よく問題になるポイントをわかりやすく解説します。

家族信託契約の「変更」は、信託の枠組み自体は維持したまま、受託者・受益者・信託の期間や分配方法などの内容を見直すことをいいます。
これに対して「解除・終了」は、信託を終わらせて信託財産を帰属権利者(最終的に財産を受け取る人)に戻し、不動産なら登記名義も変更するなど、信託関係を完全に整理することを意味します。

信託法149条は、信託契約の内容変更について、原則として「委託者・受託者・受益者の三者の合意」で変更できると定めています。
ただし、自益信託(委託者=受益者)の場合は、委託者と受託者の合意だけで変更できるなど、当事者構成によって必要な合意者が変わる点に注意が必要です。

同条では、次のような特別な変更パターンも認められています。

  • 信託の目的に反しないことが明らかな場合:受託者と受益者の合意で変更可能
  • 信託の目的に反さず、受益者の利益にも適う場合:受託者の一定の意思表示で変更可能
  • 受託者の利益を害さないことが明らかな場合:委託者と受益者の合意で変更可能

また、信託契約書であらかじめ「どのような手続きで変更できるか」を別に定めておくことも許されており、実務では「委託者・受託者の合意+信託監督人の同意」などとする例もあります。

信託が終了するタイミングは、信託法163条で列挙されており、信託目的の達成や期限到来など法律上の終了事由が定められています。
さらに、信託法164条により、委託者と受益者の合意があれば、いつでも信託を終了できるとされています(多くの家族信託では委託者=受益者のため、実務上は本人の一人決定で終了できる場面が多くなります)。

信託契約が終了した場合には、信託契約で定めた帰属権利者に信託財産を引き渡し、不動産があるときは所有権移転登記や信託抹消登記を行う必要があります。
また、収益不動産の家賃や信託口座に残る金銭の回収、残っているローンや経費などの清算も行ったうえで、最終的な財産の帰属を確定させるのが一般的です。

家族信託の内容を見直したい場合、実務上は次のような流れを取るケースが多いです。

  1. 変更・終了の必要性と影響の整理
    • 委託者・受託者・受益者の関係や、税務・相続への影響を確認し、変更か終了かを検討します。
  2. 関係者間の協議
    • 誰の合意が必要か(信託法149条・164条や契約書の定め)を確認し、関係者間で合意内容を詰めます。
  3. 書面の作成
    • 変更の場合は「信託契約変更契約書」、終了の場合は「信託合意終了契約書」等を作成するのが一般的です。
  4. 不動産や預金の名義変更・解約等
    • 不動産については所有権移転登記・信託抹消登記、預金は信託口座解約や残高移転など、信託財産ごとに必要な手続きを行います。

例えば、「当初は長男を受託者にしていたが、転勤で遠方に行ってしまい管理が難しくなったので、次男に受託者を変更したい」というケースがあります。これは信託契約の変更にあたり、原則として委託者・受託者・受益者の三者の合意が必要であり、契約書に別段の定めがあればその手続きに従うことになります。

また、「委託者が認知症になってしまってから、家族信託をやめたい」という相談も見られますが、委託者に意思能力がない場合は、そもそも合意が成立せず、簡単には終了できない恐れがあります。
このように、後からの変更・解除を見据えた条項設計をしておくことや、委託者の判断能力が十分なうちに見直しの相談を行うことが重要です。

家族信託の変更や終了は、当事者間の合意だけでなく、税務・相続・登記実務など、多方面の影響を考慮する必要があります。
信託を終了させて不動産を相続人へ移転する場合、相続税や登録免許税・不動産取得税がどのように発生するかも確認が必要であり、税理士等との連携が望ましい場面もあります。

さらに、信託法の条文(特に149条・163条・164条)や民法の一般的な契約解除の考え方を踏まえつつ、信託契約書にどのような変更・終了条項が入っているかで対応可能な選択肢が変わります。
トラブル防止のためには、信託設定時から「将来の変更・終了」を意識した設計を行い、必要に応じて専門家の助言を受けることが重要です。

家族信託契約は、信託法のルールのもと、「内容の変更」と「信託の終了(解除)」が認められていますが、誰の合意が必要か、どのような手続きが必要かは、信託法の条文と契約書の定めにより異なります。
委託者の判断能力の低下後は、合意による変更・終了が困難になる場合も多いため、生活環境や家族関係が変わったタイミングで早めに見直しを検討することが大切です。
具体的な手続きや税金・相続への影響は個別事情によって大きく異なりますので、家族信託の変更・解除をお考えの場合は、信託法や相続実務に詳しい専門家に早めに相談することをおすすめします。

関連記事

  1. 家族信託のアイキャッチ画像 家族信託契約の変更・終了手続き:具体例で学ぶ柔軟な財産管理の方法…
  2. 家族信託のアイキャッチ画像 家族信託と遺言の違いとは?正しい併用方法とトラブル回避のポイント…
  3. 家族信託のアイキャッチ画像 高齢者の財産管理における家族信託の有効性
  4. 家族信託のアイキャッチ画像 家族信託の受託者は誰が最適?子ども・親族・第三者の選び方と注意
  5. 家族信託のアイキャッチ画像 家族信託とは? 仕組みと活用法を徹底解説! 認知症対策にも有効
  6. 家族信託のアイキャッチ画像 家族信託の受益者が亡くなったらどうなる?二次受益者の設定の重要性…
  7. 家族信託のアイキャッチ画像 家族信託と遺言書の違いを徹底比較! 資産承継の最適な選択肢とは
  8. 家族信託のアイキャッチ画像 家族信託契約の作成手順と必要書類:専門家が解説する完全ガイド

最近の記事

  1. 家族信託のアイキャッチ画像
  2. 家族信託のアイキャッチ画像
  3. 家族信託のアイキャッチ画像
  4. 家族信託のアイキャッチ画像
  5. 家族信託のアイキャッチ画像
PAGE TOP