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家族信託と生命保険を組み合わせるメリットとは?認知症・相続に強い資産承継設計のポイント

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超高齢社会の日本では、認知症リスクの高まりと相続税対策の両方に備えた「資産承継設計」の重要性が増しています。
家族信託(民事信託)と生命保険をうまく組み合わせることで、「財産を誰がどう管理するか」と「誰にどのように承継させるか」を一体的に設計でき、認知症対策と相続・納税資金対策を同時にかなえることが可能です。

家族信託は、財産の所有者(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に管理・処分を託し、その利益を受ける人(受益者)を定める仕組みで、高齢期の財産管理と相続対策に柔軟に使える制度です。
家族信託を用いると、認知症発症後も受託者が信託財産を適切に管理・活用できるため、口座凍結や不動産の売却不能といった問題を避けやすくなります。

一方、生命保険は、死亡保険金に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられており、相続税の負担軽減と納税資金・生活資金の確保に有効な手段とされています。
保険金は受取人固有の財産として、遺産分割協議を待たずに支払われるため、葬儀費用や当面の生活費、相続税の納税資金を素早く準備できる点も大きなメリットです。

家族信託で不動産や預貯金の管理・承継ルートを設計しつつ、生命保険で現金を確保することで、「資産運用」と「現金準備」をバランスよく組み合わせることができます。
特に、信託財産が不動産中心の場合、相続発生時に現金が不足しがちですが、生命保険を併用すれば、相続税や不動産維持費の支払いに充てる資金を確保しやすくなります。

また、生命保険の非課税枠を活用しながら、家族信託で次世代・孫世代への承継ルートを定めることで、一次相続・二次相続を見据えた長期的な資産承継計画が立てやすくなります。
この組み合わせにより、「親の認知症対策」「相続人間の公平感」「納税資金の確保」といった複数の課題を、一つのスキームの中で整理しやすくなる点が実務上の大きなメリットです。

厚生労働省などの資料では、2025年前後に高齢者の約5人に1人が認知症になると推計されており、判断能力低下による財産凍結リスクは現実的な問題とされています。
家族信託であらかじめ財産管理権限を家族に移しておけば、委託者が認知症になっても、受託者が信託財産を売却・運用し、生活費や介護費用に充てることが可能です。

さらに生命保険を併用することで、介護費用や施設入居費用の原資、将来の在宅介護にかかる追加費用などを死亡保険金でカバーする設計も考えられます。
信託財産を長期運用しつつ、生命保険で確実な現金を用意する組み合わせは、「長生きリスク」と「死亡後の資金ニーズ」の両面に備えるうえで有効です。

生命保険の死亡保険金は、被相続人が契約者・被保険者で、法定相続人が受取人となる場合、「500万円×法定相続人の数」までが相続税の非課税限度額とされています。
この非課税枠の範囲内で保険金額を設計すれば、現預金のまま持つより相続税負担を抑えつつ、遺族に現金を残すことができるため、「現金部分は保険」「不動産や金融資産は信託」で役割分担させる設計が有効です。

一方で、家族信託の信託財産自体には生命保険の非課税枠は直接適用されないため、どの財産を信託に出し、どの部分を保険で残すかの配分設計が重要になります。
また、保険金受取人の指定の仕方によっては、相続税ではなく所得税・贈与税の対象となるケースもあるため、「保険料負担者」「被保険者」「受取人」の関係を税制に沿って整理しておく必要があります。

70代のAさん(配偶者と子2人)が、自宅と賃貸アパート、預貯金を保有しているケースを考えてみます。
Aさんは、認知症になってもアパート経営を続け、最終的には長男にアパートを承継させ、次男には現金を多めに残して公平を図りたいと考えています。

この場合、
・自宅とアパートを家族信託に出し、長男を受託者とすることで、Aさんの判断能力低下後も長男が賃貸管理・売却判断を行えるようにする。
・信託契約で、信託終了時にはアパートを長男、自宅・預金の一部を配偶者や次男に帰属させるルートを定めておく。
・あわせて、Aさんを契約者・被保険者、配偶者・子を受取人とする生命保険に加入し、「500万円×法定相続人」の非課税枠を意識した保険金額を設定しておく。
といった構成が考えられます。

こうすることで、アパート自体は信託を通じて長男に承継しつつ、生命保険金で次男への現金分配や相続税・不動産維持費用を確保し、兄弟間の不公平感や納税資金不足による不本意なアパート売却を避けやすくなります。
もっとも、信託の内容や不動産評価、保険金額によって税務上の取扱いは変わるため、具体的な設計にあたっては税理士等との連携が不可欠です。

家族信託と生命保険を組み合わせる際は、次のような点に注意が必要です。

  • 保険契約の形態と税金
    「誰が保険料を負担し」「誰が保険金を受け取るか」によって、相続税・所得税・贈与税のいずれが課税されるかが変わるため、相続税法や国税庁の案内に沿って慎重に設計する必要があります。
  • 認知症発症前のタイミング
    家族信託の契約には一定の判断能力が必要とされ、認知症が進行した後では契約自体が無効となるおそれがあるため、元気なうちからの検討・契約が推奨されています。
  • 他制度との組み合わせ
    遺言公正証書や任意後見契約、成年後見制度などと併用し、家族全体のライフプランや将来像に合わせてトータルに設計することが、トラブル防止の観点から重要です。

家族信託と生命保険を組み合わせることで、認知症による財産凍結リスクに備えつつ、相続税の非課税枠を活用した納税資金・生活資金の確保、兄弟間のバランスを考慮した資産承継など、多面的なメリットを期待できます。
一方で、信託契約の内容、保険契約の形態、税務・登記・金融機関対応など、専門的な検討事項も多いため、内閣府・厚生労働省・国税庁等の公的情報を確認しつつ、家族信託や相続に詳しい専門家(行政書士・司法書士・税理士など)に早めに相談しながら進めることが安心です。

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