はじめに
近年、グローバル化により日本とタイの二重国籍者が増加しています。しかし、二重国籍者が日本で帰化申請を行う際には、両国の国籍法の違いからくる複雑な実務上の注意点や不許可リスクが存在します。本記事では、タイと日本の国籍制度の違い、帰化申請時に注意すべきポイント、不許可リスクの高まるパターン、そして事前情報収集の重要性について、最新の公的情報を踏まえて分かりやすく解説します。
日本とタイ 国籍法・二重国籍へのスタンスの違い
日本の国籍法と二重国籍
日本は原則として二重国籍を認めていません。日本国籍と外国籍を持つ人は、原則として22歳までにいずれかの国籍を選択しなければならず、選択を怠った場合には国籍選択の催告を受けることもあります。また、外国籍から日本に帰化する場合、従前の国籍を「原則」失うこと(国籍法第5条1項5号)が要件となります。
タイの国籍法と二重国籍
一方、タイは二重国籍を基本的に容認しています。出生によるタイ国籍や、帰化・婚姻による国籍取得でも、他国籍の放棄を求められることはほとんどありません。従って「日本とタイ両方のパスポートを持つ」ことも実務上問題なく可能ですが、日本側の国籍管理義務は残ります。
帰化申請における両国の主な手続きの違い
日本への帰化手続き
- 法務局への事前相談と、事実・国籍状況の正確な申告が必要です。
- 必要書類は非常に多く、出生証明書、国籍証明書、家族関係証明書、住民登録証(タビアンバーン)など、タイ側の公的証明書も多数求められます。
- 「居住要件」として、通算5年以上の継続かつ適法な在留が必要。
- 「素行要件」「生計要件」など各種条件は慎重に審査されます。
- 帰化許可後、日本国籍を維持する場合は、タイ側の国籍離脱義務は原則ありませんが、日本国側には離脱証明等の提出が求められるケースが一般的です。
タイ側の国籍維持・放棄
- タイ国籍を自ら放棄しない限り、タイ国側は特段何も求めません。
- ごく一部の特殊事情除き、帰化しても自動的にタイ国籍を喪失しません。
- ただし、タイでの法務手続きや証明の取得では日本での帰化情報が確認された場合、個別の追加申告が求められる例も報告されています。
不許可リスクが高まるパターン
よくある不許可理由と実務上のリスク
- 提出書類や申告内容の不一致・虚偽申告(経歴・国籍・家族情報等)
- 納税・社会保険等の義務未履行、収入の不安定さや無収入
- 在留要件(出国日数過多や非連続な在留)の未達
- 過度な交通違反や法令違反、金銭トラブルなど「素行要件」違反
- 国籍喪失義務を果たせない(例:母国で離脱が困難な場合)
上記は帰化全般の主要事例ですが、二重国籍者(特にタイ側国籍が残る場合)は、国籍関連の整合性への審査も厳格です。
事前情報収集の重要性
- 必ず法務局で事前相談を実施し、帰化申請前に必要な書類・自分の国籍状況確認を行うことが重要です。
- 日本側・タイ側双方の現行法と実務運用について、公式サイトや大使館・領事館で情報を確認することが「申請成功率」を高めます。
- 自分や家族の国籍・在留歴・課税証明・収入証明等は、帰化申請前に整合性を重ねて確認しましょう。
まとめ
タイと日本の二重国籍者が日本へ帰化申請をする場合、両国の制度の違いから実務上留意すべき点が多数存在します。特に日本側は二重国籍を原則禁止とし、申請後も形式的な国籍離脱義務が生じるため、書類準備や事前相談、経歴情報の一貫性など細かな部分にまで注意しましょう。
事前の情報収集を疎かにしないことで、不許可リスクの極小化と円滑な手続き進行が可能になります。公的機関の最新情報を活用し、専門家への相談も活用することが成功への鍵となります。