はじめに
日本で長く生活している外国人の方の中には、「前に犯罪をしたことがあるけれど、それでも定住者ビザ(在留資格『定住者』)に変更できるのだろうか?」と心配される方が少なくありません。確かに、犯罪歴がある場合は入管審査に影響しますが、必ずしも許可が不可能というわけではありません。本記事では、出入国在留管理庁(入管庁)が公表しているガイドラインなどの公的情報をもとに、定住者ビザへの変更が認められるケースと、そのための具体的な対策をわかりやすく解説します。
定住者ビザとは
定住者ビザは、出入国管理及び難民認定法(入管法)第22条の2に基づき、法務大臣が特別な理由を考慮して日本での居住を認める在留資格です(出入国在留管理庁公式サイト)。このビザは、第三国定住難民、日系三世、中国残留邦人、日本人配偶者等との離婚・死別後の外国人など、特別な事情を考慮して与えられます。
犯罪歴は審査にどのように影響するのか
在留資格変更や更新の審査では、「素行が不良でないこと」が重要な判断要素とされています(在留資格変更・更新ガイドライン)。この「素行」には、過去の犯罪、行政処分、社会生活上の規範遵守の状況が含まれます。特に、刑事罰を受けた場合には、犯罪内容や刑の重さによって審査に影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、出入国在留管理庁が定める「在留特別許可に係るガイドライン」では、無期または1年以上の実刑を受けた場合などは、特別の事情がない限り許可されにくいとされています。ただし、この基準は退去強制に関するものであり、在留資格変更の審査でも同様の素行評価が考慮されます。
許可される可能性があるケース
犯罪歴がある場合でも、以下のような事情があれば、定住者ビザへの変更が認められるケースがあります。
1. 犯罪の内容が軽微である場合
例えば、交通違反などの軽犯罪で罰金刑を受けた程度であれば、重大な社会的影響がなければ不許可の理由には直結しません。ただし、反則金など行政処分レベルのものは刑事罰に該当しません。
2. 十分な更生が認められる場合
刑の執行が終わってから長期間が経過し、その後社会生活を安定的に送っている場合には、素行良好と判断されることもあります。在留期間更新や定住者への変更においては、犯罪後の生活状況が重視されます。
3. 家族関係など人道的要素がある場合
日本人の配偶者や子がいる場合、また長期にわたり日本に定着している場合などは、人道的配慮として許可されることもあります。特に、子の養育や家庭生活の維持が重要視されます。
不許可となる可能性が高いケース
次のような場合は、定住者ビザへの変更が難しくなる傾向にあります。
これらの罪状は、日本社会への影響が大きく、素行不良として厳しく評価されやすいです。
審査における対策とポイント
犯罪歴がある方が定住者ビザへの変更を希望する場合には、以下のような準備が重要です。
1. 反省と更生の状況を具体的に示す
再犯防止のために行っている活動(カウンセリング受講、地域活動など)を記載した説明書を添付すると、誠意を伝えることができます。
2. 家族・社会関係の安定を証明する
配偶者・子どもの扶養実態、勤務先での安定した職業生活などの証拠を提出しましょう。入管当局は家庭や社会への定着度を重視します。
3. 専門家に相談する
犯罪歴がある在留資格変更は個別事情によって判断が大きく変わります。行政書士など専門家に相談することで、説明書の構成や提出方法を正確に整えることができます。
まとめ
犯罪歴があると、定住者ビザへの変更が難しくなることは確かですが、「絶対に不可能」というわけではありません。犯罪の内容やその後の更生状況、家族や生活の安定性など、複数の要素が考慮されます。大切なのは「誠実な説明」と「社会への再適応の証明」です。正確な申請書類の作成と事実の誠実な申告が、許可への第一歩になります。


