はじめに
「技能」の在留資格で働いている外国人の方や、その方を雇用する企業の担当者から、よくご相談をいただくテーマの一つが「採用後に仕事内容が変わってしまったが、このまま働かせてよいのか」という問題です。
在留資格ごとに認められる活動内容は法令や告示で厳格に決められており、実際の業務が在留資格の範囲から外れてしまうと、在留期間更新や在留資格変更が不許可になるおそれがあります。
この記事では、在留資格「技能」で就労している方の職務内容が変わった場合に、どのようなケースで手続きが必要になるのか、また不許可を避けるための実務的なポイントを、出入国在留管理庁など公的機関の情報をもとに解説します。
在留資格「技能」とは?
在留資格「技能」は、出入国管理及び難民認定法別表第一(二)に定められた就労系の在留資格の一つで、主に調理、建設関係の技能、航空機の整備、宝飾品加工など、熟練した技能を要する職種が対象となっています。
技能ビザは、単に「経験がある」というだけではなく、「相当程度の実務経験年数」「国家資格等の保有」といった要件が告示で定められており、これらを満たす職務内容であることが前提となります。
そのため、職務内容の変更が、これらの条件を満たさない方向にずれてしまうと、在留資格の更新や変更の際に「技能」に該当しないと判断される可能性が高くなります。
仕事内容が変わったときに問題となるポイント
技能ビザで不許可リスクが高まるのは、主に次のような場合です。
- 当初の主たる業務が大幅に減り、別の種類の業務が中心になっている
- 管理・事務的な業務に比重が移り、「技能」を要する作業が副次的になっている
- そもそも「技能」の範囲外(単純労働に近い業務など)の仕事が中心となっている
入管法上、在留資格は「日本で行う活動内容」に応じて付与されるため、実務上も「現在どのような業務に何割くらい従事しているか」が重視されます。
仕事内容の変更の程度によっては、「在留期間更新許可申請」だけでは足りず、「在留資格変更許可申請」が必要となることもあります。
職務内容の変更と「在留資格変更許可申請」
1 活動内容が別の在留資格に該当するようになった場合
出入国在留管理庁は、「現在の在留資格に係る活動から他の在留資格に該当する活動に変更する場合には、在留資格変更許可申請が必要」と案内しています。
例えば、当初はフランス料理店の調理人(技能)として採用したものの、その後メニュー開発や店舗運営全般の管理・企画が主業務となり、「経営・管理」や「技術・人文知識・国際業務」に近い内容になっているようなケースが考えられます。
このように、主たる活動内容が「技能」の枠から離れてしまう場合には、在留期間更新ではなく、変更後の実態に合わせた在留資格への「在留資格変更許可申請」を検討する必要があります。
在留資格変更許可申請の様式や必要書類は、出入国在留管理庁のホームページで公表されていますので、最新の情報を確認して準備を進めることが重要です。
2 同じ「技能」の範囲内での業務変更
同じ在留資格「技能」の範囲内で、店舗間の異動やメニューの変更などが行われる場合、必ずしも在留資格変更が必要になるとは限りません。
ただし、職務の中身が変わることで、当初の申請時に説明した業務とのギャップが大きくなると、更新時に詳細な説明や補足資料を求められることがあります。
そのため、実務上は、
- 新旧の職務内容の比較(割合・内容)
- 技能を要する業務が引き続き主たる活動であることの説明
- 必要に応じた雇用契約書・職務記述書(Job Description)の見直し
を行い、更新申請時に整合性の取れた資料を提出することが、不許可を避けるうえで有効です。
所属機関や契約内容が変わったときの届出
技能ビザに限らず、多くの就労系在留資格では、所属機関(勤務先)や契約内容に変更があった場合、出入国在留管理庁への届出義務が定められています。
出入国在留管理庁の「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」では、所属する活動機関に変更(消滅、名称変更、所在地変更、離脱、移籍)があった場合などに届出が必要とされています。
特に、転職や会社間の異動など、所属機関そのものが変わる場合は、所定の届出様式を用いて14日以内に届出を行う必要がある場合があります。
届出義務を怠った場合、将来の在留期間更新や永住申請等で不利に評価される可能性があるため、職務内容の変更と併せて、所属機関や契約内容の変更の有無も必ず確認することが重要です。
事例イメージ:技能ビザの料理人が業務拡大したケース
ここでは、一般的によくある状況をモデル化した事例としてご紹介します。
外国料理レストランで「技能」の在留資格を持つ料理人 A さんは、当初は厨房での調理や盛り付けが主な業務でした。
しかし、店舗拡大に伴い、メニュー開発や原価管理、スタッフのシフト管理、販促企画など、管理・企画業務に従事する時間が増え、調理業務が全体の2割程度になってきました。
このようなケースでは、
- 主たる活動が「熟練した調理技能」から、管理・企画に移っている
- 「技能」ではなく「経営・管理」や「技術・人文知識・国際業務」の要素が強まっている
と評価される可能性があります。
企業側・本人側は、現状の職務内容を整理したうえで、在留資格変更許可申請を検討し、活動内容に適合した在留資格に切り替えることで、更新時の不許可リスクを下げることができます。
不許可を避けるための実務的なポイント
技能ビザで職務内容が変わった場合に、不許可リスクを抑えるための主なポイントは次のとおりです。
- 現在の業務内容を正確に把握し、「技能」を要する業務が主たる活動かどうかを確認する。
- 主たる活動が他の在留資格に近い場合は、早めに「在留資格変更許可申請」の要否を検討する。
- 雇用契約書や職務記述書を、実態に合わせて見直し、申請書類との整合性を確保する。
- 所属機関の変更や契約内容の重要な変更があった場合には、所定の届出を漏れなく行う。
- 在留期間の満了が迫ってから慌てて対応するのではなく、変更の必要性が生じた段階で専門家や入管窓口に相談する。
また、出入国在留管理庁は在留資格変更許可・在留期間更新許可のガイドラインや不許可事例を公表しており、審査の基本的な考え方や典型的な不許可パターンを把握するうえで参考になります。
まとめ
在留資格「技能」で就労している外国人の職務内容が変わった場合、その変更が在留資格の範囲内に収まっているかどうかを慎重に確認することが重要です。
主たる活動が別の在留資格に該当するようになった場合には、「在留資格変更許可申請」を行わずに放置していると、更新時に不許可となるおそれがあります。
また、所属機関や契約内容に変更があった場合には、所定の届出を行う義務が課されている在留資格も多く、届出の有無は将来の審査にも影響し得ます。
職務内容や雇用条件に変更が生じたときには、早めに現状を整理し、公的機関の最新情報を確認したうえで、必要に応じて専門家に相談しながら適切な手続きを進めていくことが、在留資格の安定につながります。


