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公正証書遺言は「知られたくない事情」があっても作成できる?公証人の守秘義務と選択肢を解説

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「相続人には内緒で遺言を作りたい」「不倫相手や隠し財産など、家族にも公証人にも知られたくない事情がある」――そのようなご相談は実務でも少なくありません。
一方で、公正証書遺言は公証人や証人が関わるため、「本当に秘密は守られるのか」「どうしても知られたくない事情があるときに選ぶべき遺言の方式は何か」と不安を感じる方も多いです。

この記事では、公正証書遺言の仕組みと、公証人・証人の守秘義務、そして「知られたくない事情」がある場合に取り得る方法について、法務省・日本公証人連合会などの公的情報を踏まえて分かりやすく解説します。

公正証書遺言は、公証人法に基づき任命された公証人が、遺言者の口述に従って内容を文書化し、公正証書として作成する遺言の方式です。
公証人は法律の専門家であり、方式や内容の不備をチェックするため、自筆証書遺言と比べて無効になるリスクが小さいという大きなメリットがあります。

主なメリットは次のとおりです。

  • 方式の不備で無効になる危険が小さい(公証人が関与して作成するため)
  • 原本は公証役場で保管されるため、紛失・改ざんのリスクが低い
  • 検認手続が不要で、相続開始後の手続がスムーズに進みやすい

一方で、公証人のほかに証人2名の立会いが必要になるため、「内容が他人に知られるのでは」という心理的ハードルを感じやすい方式でもあります。

まず押さえておきたいのは、「公証人は法律上の守秘義務を負っている」という点です。
公証人法4条は、公証人について「その取扱いたる事件を漏らすことを得ず」と定めており、取り扱った遺言の内容などを第三者に漏らすことは原則として許されません。

法務省も、公証人は扱った事件について守秘義務を負い、違反した場合は懲戒処分の対象になることを明記しています。
また、日本公証人連合会は、公証人が秘密を漏らした場合、公証人法上の懲戒だけでなく刑法134条の秘密漏示罪で処罰される可能性があることも説明しています。

さらに、公証役場で公証人を補助する書記についても、公証人法施行規則により守秘義務が課されており、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないとされています。
日本公証人連合会は「公証人の側や証人から、遺言公正証書を作成したことや遺言の内容が漏れる心配はありません」と明示しており、公正証書遺言は秘密保持に配慮された制度であることが分かります。

公正証書遺言を作成するときは、原則として証人2名の立会いが必要です。
「身近な人に頼むと内容が知られてしまうのでは」「証人から家族に話が漏れるのでは」と不安に思われる方も多いところです。

日本公証人連合会は、公正証書遺言の秘密保持についてのQ&Aで、次のような趣旨を示しています。

  • 遺言者は、遺言の内容を他に漏らさないようにとの意思を有していると解される
  • 証人は、その意思を承諾して立ち会う以上、遺言者に対して秘密保持義務を負うと解される
  • 公証役場が紹介した証人についても同様に秘密保持義務を負う

このように、証人についても、遺言者に対する関係で秘密を守るべき義務を負うことが前提とされています。
もっとも、証人は法律上必ずしも国家資格者である必要はなく、実際の運用においては「誰を証人に選ぶか」が心理的な安心感に大きく影響します。

「公正証書遺言を作りたいが、次のような事情は知られたくない」というご相談は少なくありません。

  • 婚姻外のパートナーに財産を遺したい
  • 認知していない子に財産を遺したい
  • 一部の相続人にだけ多く遺すなど、偏った内容にしたい
  • 事業や借入れなど、家族に知られていない財産・負債がある

これらは、遺言内容としては法律上許される範囲であれば、公正証書遺言としても記載可能です。
一方で、「公証人や証人に知られること自体が抵抗感の原因」となるケースが多いため、どこまでを公正証書に記載し、どこからを別の手段で対応するかといった整理が重要になります。

結論から言えば、「誰にも知られないまま、自分だけが内容を把握していたい」というニーズに対して、公正証書遺言は完全には応えられません。
理由は、公正証書遺言では、少なくとも公証人と証人2名が内容を把握するためです。

もっとも、前述のとおり、公証人・書記には強い守秘義務が課されており、証人についても秘密保持義務を負うことが前提とされています。
制度としては「職務上知った内容を他に漏らさない前提」で組み立てられていますので、「公証人が家族に勝手に話してしまう」といったことは想定されていません。

したがって、「絶対に誰にも知られたくない」という意味であれば、公正証書遺言は適合しないものの、「法令上の守秘義務の範囲で秘密は保たれる」という意味では、むしろ高いレベルの秘密保持が期待できる方式といえます。

「公証人や証人にも内容を知られたくない」という場合、民法970条に定められた秘密証書遺言という方式も選択肢になります。
秘密証書遺言は、遺言書そのものは自分で作成して封印し、その封筒について公証人と証人2名の前で「自分の遺言書である」と申述して認証を受ける方式です。

秘密証書遺言のポイントは次のとおりです。

  • 遺言の内容は封印されたままなので、公証人も証人も中身を見ることはない
  • 公証人は「その封筒に遺言書が入っていること」と「遺言者の本人確認・日付」などを認証するにとどまる
  • 遺言の方式(要件)を満たしていない場合、内容をチェックする人がいないため、無効リスクが高くなる

つまり、「内容を公証人にも見せない」という点では秘密証書遺言が優れていますが、内容のチェックを受けない分、「方式・文言の誤りで無効になるリスク」は公正証書遺言より高いとされています。
どこまで秘密保持を優先し、どこまで確実性を優先するかによって、どの方式を選ぶかが変わってきます。

それでも、公正証書遺言の「無効になりにくい」「執行がスムーズ」というメリットを重視しつつ、できるだけ事情を知られたくない場合、次のような工夫が考えられます。

  1. 証人の選び方を工夫する
    • 相続人や受遺者は証人になれませんが、それ以外に信頼できる第三者(国家資格者など)を依頼することで安心感を高められます。
    • 公証役場や専門家を通じて、守秘義務を理解した証人を紹介してもらう方法もあります。
  2. 遺言の表現を整理する
    • 家族に配慮した表現、補足説明を付けるなど、感情的なトラブルを避ける工夫をすることも重要です。
    • 内容は法律上有効でも、表現次第で相続人の受け止め方が大きく変わるため、専門家に文案の相談をする価値があります。
  3. 遺言以外の手段と組み合わせる
    • 生前贈与、家族信託、生命保険の活用など、遺言だけに依存しない方法も検討の余地があります。
    • それぞれ税務・法的な注意点があるため、トータルでの設計が重要です。

たとえば、次のようなイメージのケースを考えてみます。

  • 70代男性
  • 妻と子2人がいるが、長年生活を支えてくれたパートナーにも一部財産を遺したい
  • 家族にはこの関係を知られたくないが、死亡後のトラブルは避けたい

このような場合、

  • 法的な安定性を重視するなら、公正証書遺言で配分内容を明確にしつつ、公証人・証人には守秘義務があることを前提に進める
  • 「生前の間は内容を誰にも知られたくない」度合いが非常に強いなら、秘密証書遺言や、生命保険・生前贈与などを併用して設計する

といった方向性が考えられます。
どの選択肢にも一長一短がありますので、実際には財産の内容やご家族の状況も踏まえた検討が必要です。

  • 公証人は公証人法4条に基づき強い守秘義務を負っており、秘密を漏らした場合は懲戒や刑事罰の対象となります。
  • 公証人を補助する書記や、公証役場が紹介する証人についても、職務上知り得た秘密を他に漏らさない義務が課されており、公正証書遺言は制度上、秘密保持に十分配慮されています。
  • それでも「公証人や証人にも内容を知られたくない」場合は、民法970条の秘密証書遺言を利用すれば、内容を封印したまま公証人の認証を受けることができますが、その分無効リスクは高まります。
  • 「知られたくない事情」があるときは、守秘義務を前提に公正証書遺言を選ぶのか、秘密証書遺言や他の手段と組み合わせるのか、ご自身の優先順位に応じて慎重に決めることが大切です。

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