はじめに
親や配偶者が亡くなったあと、車検が切れたまま放置されている自動車をどう扱えばよいか悩まれる方は少なくありません。
「名義変更しないといけないのは分かるけれど、車検切れでも手続きできるのか」「売却や廃車にしたい場合はどう動けばいいのか」といった不安を整理しながら、相続に伴う自動車の扱い方を見ていきます。
車検切れでも相続の対象になる
自動車は、不動産や預貯金と同じく「遺産」として相続の対象になる財産です。
車検が切れていても、所有者名義は亡くなった方のままなので、相続による移転登録(名義変更)や抹消登録(廃車)といった手続きを行う必要があります。
まず決めるべきこと:乗り続けるか、処分するか
車検切れの車を相続した場合、最初に決めるべきなのは「今後も利用するのか、それとも処分するのか」という方針です。
道路運送車両法上、所有者が変わった場合には一定期間内に変更登録等の手続きを行う必要があるため、長期間そのまま放置するのは望ましくありません。
普通自動車の場合:車検がないと名義変更できない
普通自動車(登録車)の場合、車検切れのままでは原則として名義変更(相続による移転登録)の手続きができません。
そのため、次のいずれかの方法をとることになります。
- 相続による移転登録の前に、再度車検を取得してから名義変更する方法。
- 名義変更と同時に「抹消登録」(一時抹消または永久抹消)を行う方法。
車検を通して乗り続けるのか、抹消登録をして一度登録を止めたうえで売却や廃車に進むのかを選ぶ必要があります。
軽自動車の場合:車検切れでも名義変更は可能
軽自動車については、車検が切れていても名義変更の手続き自体は行うことができます。
ただし、車検・自賠責保険がない状態で公道を走行することはできないため、車検を取り直すまでは運行しないよう注意が必要です。
廃車・処分する場合の抹消登録と種類
車を処分する場合には、原則として処分する人の名義にしたうえで抹消登録を行います。
抹消登録には次の二種類があり、今後の予定に応じて選択します。
- 一時抹消登録:一度登録を止めるが、将来再度登録して乗る可能性がある場合や、買取業者に売却する場合など。
- 永久抹消登録:解体して完全に廃車にする場合で、今後再登録する予定がないケース。
車検切れでも、相続による名義変更と同時に抹消登録を行うことで手続きは可能とされています。
車検を取り直して乗り続ける場合の流れ
相続した車を今後も使用したい場合、普通車であれば一度車検を通してから名義変更を行うのが基本的な流れです。
このとき、公道を走行できない車両を検査場まで移動させるため、積載車で運ぶか、自賠責保険に加入したうえで仮ナンバーの交付を受けるなどの方法を検討します。
必要書類の概要(普通車)
普通自動車の相続による移転登録では、申請書・手数料納付書・車検証に加え、戸籍謄本や法定相続情報一覧図、遺産分割協議書等の相続関係書類が必要になります。
登録を受ける相続人の印鑑証明書や、保管場所が変わる場合には自動車保管場所証明書(車庫証明)も求められるなど、事前に準備すべき書類が多いため、早めの確認が重要です。
必要書類の概要(軽自動車)
軽自動車の場合、相続手続きに遺産分割協議書等が不要とされている例もあり、普通車と比べると要件が簡略化されています。
申請書・車検証に加え、相続した人の住民票または印鑑証明書、戸籍謄本や法定相続情報一覧図などを準備して、軽自動車検査協会で手続きを行います。
相続した車を売却する際の注意点
車検切れの状態で相続した車を売却する場合、多くの買取店では名義が相続人に移っていることを前提に手続きを進めます。
そのため、相続による名義変更と一時抹消登録を組み合わせるなどして、所有者を整理したうえで査定・引き渡しに進むとスムーズです。
税金と保険の扱いのポイント
登録を抹消すると、自動車税の課税対象から外れるため、使う予定のない車をそのままにしておくと税金だけが発生し続ける可能性があります。
一方で、車検切れの状態でも、自賠責保険の有無や任意保険の契約状況によっては、保険会社への連絡や解約手続きが必要となる場合があるため、併せて確認しておくと安心です。
まとめ
車検切れの自動車を相続した場合でも、自動車は遺産として扱われるため、名義変更や抹消登録といった手続きは避けて通ることができません。
普通車は車検がないと原則名義変更できない一方で、軽自動車は車検切れでも名義変更が可能など、車種によって手続きが異なりますので、利用予定と処分方針を早めに決めておくことが重要です。
手続きには、相続関係を証明する戸籍や法定相続情報一覧図、遺産分割協議書など、普段はあまりなじみのない書類が必要になることも多いため、必要な書類の確認と準備を計画的に進めると負担を軽くできます。
ご自身で対応することも可能ですが、相続財産全体の整理や他の財産とのバランスも踏まえつつ進めたい場合には、専門家への相談も検討するとよいでしょう。



