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見守り契約・財産管理等委任契約・任意後見契約を公正証書で組み合わせる理由|認知症に備える財産管理と老後の安心

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「将来、認知症などで判断能力が低下したら、生活や財産の管理を誰に頼めばよいのか」「まだ元気なうちから、信頼できる人に見守ってもらいたい」と考える方は少なくありません。

こうした将来への備えとして、見守り契約、財産管理等委任契約、任意後見契約を公正証書で組み合わせる方法があります。これらは似ているように見えても、利用する時期と役割が異なります。三つを適切につなげることで、判断能力が十分な時期から低下後まで、生活・財産・契約手続を切れ目なく支える仕組みを整えやすくなります。

任意後見契約は、公正証書で作成することが法律上求められており、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で効力が生じます。そのため、任意後見契約だけでは、契約締結から効力発生までの間を十分にカバーできないことがあります。

見守り契約とは

見守り契約は、本人が自分で判断し生活できている間に、受任者が定期的な連絡、面談、訪問などを通じて、健康状態や生活状況、困りごとの有無を確認する契約です。

たとえば、月に1回電話をし、数か月に1回は面談を行う、郵便物や生活上の不安について相談を受ける、といった内容が考えられます。離れて暮らす親族にとっても、本人の変化を早めに把握するきっかけになります。

ただし、見守り契約だけでは、預貯金の払戻し、不動産の契約、介護サービスの契約などを本人に代わって行う権限は通常ありません。あくまで本人の暮らしを確認し、必要な支援につなげる役割が中心です。

財産管理等委任契約とは

財産管理等委任契約は、本人に判断能力がある間から、財産管理や生活上の事務を受任者に委任する契約です。銀行手続、公共料金の支払、年金関係の書類対応、介護サービスの利用契約、医療・福祉に関する連絡調整などを対象にできます。

高齢になって外出が負担になった方、入院や療養で手続が難しくなった方、親族に日常的な事務を任せたい方にとって、有効な選択肢となります。

一方で、本人の判断能力が低下すると、委任契約を継続して利用することには実務上の慎重な検討が必要です。金融機関や契約相手との関係でも、代理権の範囲、本人の意思確認、取引の安全性が問題になり得ます。そのため、将来の判断能力低下に備える任意後見契約と併せて設計することが重要です。

任意後見契約とは

任意後見契約は、本人が十分な判断能力を有するうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に備え、任意後見人となる人へ生活、療養看護、財産管理に関する代理権を与える契約です。公証人が作成する公正証書によって締結する必要があります。

ただし、契約書を作成しただけでは任意後見は始まりません。本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行い、監督人が選任された時から、任意後見契約の効力が生じます。

任意後見人は、契約で定めた範囲内で本人を代理して事務を行いますが、法定後見人とは異なり、原則として本人の行為を取り消す取消権や、本人の行為に同意する同意権はありません。そのため、契約内容を具体的に定めることが大切です。

元気な時期から将来まで備えられる

三契約を組み合わせる最大の利点は、本人の状態の変化に応じて支援を移行できることです。

  • 判断能力が十分な間は、見守り契約で生活状況を確認します。
  • 外出や事務処理が負担になった時期には、財産管理等委任契約により日常的な手続を支援します。
  • 判断能力が不十分になった後は、任意後見監督人の選任を経て、任意後見契約による支援へ移行します。

例えば、一人暮らしの72歳の方が、遠方に住む長女を受任者として指定する場合を考えます。元気なうちは定期連絡を中心とし、通帳の整理や行政手続が負担になった段階では財産管理等委任契約を利用します。さらに認知症の進行などにより判断能力が低下した場合には、任意後見監督人の選任を申し立て、任意後見人が契約で定められた事務を担う流れです。

このように、本人の生活状況を把握している受任者が継続して関わることで、急な判断能力低下にも対応しやすくなります。

任意後見の開始時期を見逃しにくくなる

任意後見契約は、本人の判断能力が不十分になった時点で自動的に始まる制度ではありません。任意後見監督人の選任申立てが必要です。

見守り契約があると、受任者が定期的に本人と連絡を取るため、生活上の変化、金銭管理の困難、契約内容の理解不足などを把握しやすくなります。必要な時期に医師や家族と相談し、家庭裁判所への申立てを検討する契機にもなります。

申立先は、原則として本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。家庭裁判所は、本人の心身・生活・財産の状況、任意後見受任者の職業や経歴、本人の意見などを踏まえて、任意後見監督人を選任します。

公正証書にすることで内容を明確にできる

任意後見契約は公正証書で作成しなければなりませんが、見守り契約や財産管理等委任契約についても、公正証書で同時に作成する方法がよく検討されます。

公正証書にすることにより、誰が、いつから、どのような事務を担当するのかを明確にしやすくなります。財産管理の対象、銀行手続の範囲、支出の方法、定期報告の方法、見守りの頻度、医療・介護に関する連絡先などを具体化しておくと、後日の認識違いを防ぐことにつながります。

また、任意後見契約は登記の対象となります。任意後見監督人選任の申立てでは、任意後見契約公正証書の写しや成年後見登記事項証明書などの提出が求められます。将来の申立てを見据え、契約書、財産資料、親族連絡先などを整理しておくことも重要です。

契約は、ひな形をそのまま利用するのではなく、本人の暮らし方、家族関係、財産内容、支援を依頼する相手との関係に応じて設計する必要があります。

特に確認したい点は、次のとおりです。

  • 見守りの方法、頻度、緊急時の連絡先を決めること
  • 財産管理等委任契約で任せる事務と、本人が続ける事務を分けること
  • 不動産、預貯金、保険、年金、介護サービスなど、対象財産・対象手続を整理すること
  • 受任者への報酬、実費、財産の管理方法、報告方法を定めること
  • 任意後見監督人選任の申立てを誰が担うのか、家族間で共有しておくこと
  • 遺言書、死後事務委任契約、家族信託など、他の生前対策との関係を確認すること

任意後見監督人は家庭裁判所が選任し、任意後見人やその近親者は任意後見監督人にはなれません。親族が任意後見人になる場合も、第三者である監督人による監督の仕組みが設けられる点を理解しておく必要があります。

見守り契約、財産管理等委任契約、任意後見契約は、それぞれ単独でも利用できます。しかし、本人の判断能力が十分な時期、日常の手続に支援が必要な時期、判断能力が不十分になった時期までを考えると、三つを公正証書で組み合わせることには大きな意義があります。

見守り契約で変化を把握し、財産管理等委任契約で日常の手続を支援し、任意後見契約で将来の判断能力低下に備えることが基本的な流れです。本人の希望を丁寧に確認したうえで、代理権の範囲、財産管理の方法、家族への報告、任意後見開始後の対応を具体的に定めることが、安心できる老後の備えにつながります。

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