はじめに
「離婚歴が複数ある場合、特定技能ビザの取得や在留資格の更新に影響するのか?」というご相談をお受けすることがあります。日本で働く外国人の増加や多様なライフスタイルの広がりとともに、こうした疑問を持つ方は少なくありません。本記事では、特定技能1号・2号の取得や更新手続きにおいて、離婚歴の有無がどのように影響するのか、最新の政府情報をもとに詳しく解説します。
特定技能ビザとは何か
特定技能とは、人手不足が深刻な特定産業分野で即戦力となる外国人を受け入れるために設けられた在留資格です。1号は通算5年間の在留が認められ、家族帯同は原則不可ですが、2号は熟練技能者として在留資格更新の上限がなく、要件を満たせば配偶者・子の帯同が認められます。
取得・更新の主要審査ポイントは、技能水準や日本語能力、受入機関の適正性、本人の公的義務履行状況(税金・保険など)です。
離婚歴が在留資格審査に与える影響
現行の法令や運用上、特定技能の審査において「離婚の有無」や「離婚歴の回数」が直接的な不許可理由になることはありません。国籍や家族構成、婚姻歴は在留資格「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の取得や更新の際には重視されますが、特定技能の場合はあくまでも本人の技能・就労状況が中心です。
公的義務・素行上の問題が問われる場合
ただし、過去の離婚が税金や年金の未払など社会的義務の履行に悪影響を及ぼし、それが記録に残っている場合は、特定技能の許可や更新審査に影響する可能性があります。また、児童扶養費の不払い等が公的記録になっているケースや、犯罪歴(たとえばDV認定など)がある場合は素行要件に関わります。ただし、通常の離婚自体は審査の対象になりません。
審査書類の具体的な内容
特定技能1号・2号とも、申請時に求められる家族状況の資料は、あくまで本人確認と事実関係の確認目的です。配偶者や子どもの有無は把握されますが、離婚歴の件数やその理由を詳しく説明する必要はありません。
2号の場合、家族帯同希望時には家族(配偶者・子)との関係証明や戸籍資料が必要になりますが、「過去の離婚歴」が直接的に審査に影響することはありません。
こんな場合は注意が必要
- 離婚を理由に、以前「日本人の配偶者等」を失効した直後に特定技能へ変更する場合、形式的な結婚・離婚(いわゆる偽装結婚や偽装離婚)が疑われるケースでは審査が厳格になる可能性があります。
- 別居や離婚を繰り返していた結果、日本国内での生活実態や素行に問題があると判断された場合は、在留資格全般に影響することがあります。
具体的な事例
たとえば、Aさんがこれまで2回離婚している場合でも、特定技能ビザの申請・更新においては「Aさん本人が必要な技能試験や日本語試験に合格し、きちんと納税・保険義務を履行していれば、離婚歴の多寡のみを理由に不許可となることはない」という点が原則です。ただし、過去に婚姻関係を装って不正にビザを取得した疑いがある場合や、社会的義務不履行等が判明すれば審査が厳格化します。
まとめ
現時点では、特定技能ビザの取得・更新審査において離婚歴や離婚回数それ自体が不利益な要素にはなりません。重要なのは技能実務能力や日本語力、就業状況、公的義務の履行状況です。過去の離婚歴が気になる方も、基本的には安心して手続きを進めて問題ありません。ただし、特別な事情がある場合や公的義務の未履行等がある場合は、個別の状況に応じて専門家にご相談ください。


