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家族信託にかかる税金を徹底解説|贈与税・所得税・相続税の基本と注意点

家族信託のアイキャッチ画像

家族信託は、高齢の親の財産管理や、二次相続まで見据えた資産承継の手段として注目されていますが、「税金がよく分からない」「節税になるのか知りたい」というご相談が非常に多い制度です。
実際には、家族信託そのものに特別な優遇税制があるわけではなく、信託税制に基づき、贈与税・所得税・相続税の一般的なルールを前提に課税関係が整理されています。
この記事では、国税庁など公的機関が公表している信託税制の解説を踏まえながら、家族信託に関わる税金の基本的な考え方を分かりやすく整理してご紹介します。

信託に関する税金は、平成19年度の税制改正で整備された「信託税制」に基づき、受益者や委託者などの立場ごとに課税関係が定められています。
相続税法第9条の2・第9条の3などにおいて、「信託に関する権利や利益を贈与・遺贈により取得したものとみなす」などの特例が規定されており、これを前提に相続税・贈与税が課される仕組みです。
また、信託財産の譲渡や運用から生じる所得については、所得税基本通達により「誰の所得として課税するか」が整理されており、原則として受益者に課税する「受益者課税の原則」が採用されています。

贈与税は「個人から無償または著しく低い対価で財産を取得した場合」に課される税金であり、信託においても、受益権の取得が贈与とみなされるケースがあります。
相続税法第9条の2により、適正な対価を負担せずに新たに信託の受益者となった場合、その者は信託に関する権利を贈与または遺贈により取得したものとみなされ、贈与税・相続税の対象になります。
例えば、親(委託者)が自宅不動産を信託財産とし、子を受益者として設定した場合で対価の授受がなければ、子が受益権を取得したタイミングで贈与税の課税が問題となり、評価方法や基礎控除の適用などを踏まえて申告の要否を検討する必要があります。

信託財産から生じる賃料収入や配当などは、原則として「実際に利益を享受する受益者の所得」として所得税・住民税の対象になります。
国税庁の通達では、信託財産に属する資産を譲渡した場合の譲渡所得の計算や、譲渡費用の取扱いなども定められており、受託者名義で売却しても、実質的な負担者・受益者側で所得税の申告を行うのが基本です。
また、信託契約の内容によっては、委託者に所得が帰属する「委託者課税」とされるケースもあるため、誰の所得になるかは契約内容と税務上の解釈をセットで確認することが重要です。

相続税の基本的な仕組み自体は、家族信託を利用しても変わらず、「被相続人から相続や遺贈によって取得した財産の価額の合計額」が基礎控除額を超えると課税対象になります。
信託を利用した場合、相続時には「信託財産そのもの」ではなく、「受益権(信託に関する権利)」が相続財産とみなされ、その評価額に基づいて相続税が計算されるのが一般的です。
受益者連続型信託のように、一次・二次と受益者が続いていく設計をした場合には、相続税法第9条の3に基づき、一定の場面で課税関係が生じる特例があり、国税庁の解説や財産評価基本通達に沿った評価が必要になります。

受益者連続型信託では、受益者が死亡するたびに次の受益者へ受益権が移転するため、どのタイミングで相続税・贈与税が課されるかが大きな論点です。
相続税法第9条の3では、一定の受益者連続型信託について「信託期間中は元本受益権は価値を有しないものとみなされ、信託終了時に残余財産の給付を受ける段階で課税関係が生じる」旨が示されており、通常の相続と異なる取扱いが行われます。
ただし、実務では信託の設計内容によって評価方法や課税タイミングが変わりうるため、税法上の通達や専門的な解説を踏まえて慎重に設計することが求められます。

信託を利用した不動産や株式の移転については、形式上は「信託」として処理されていても、税法上は「贈与」や「譲渡」とみなされるケースがあり、これを「みなし贈与」「みなし譲渡」と呼びます。
国税庁の研究資料では、信託を利用した不動産移転などが、みなし規定により相続税・贈与税の課税対象となる事例が増えていることが指摘されており、委託者から受託者への信託財産移転時点が課税時期とされる場合もあると解説されています。
家族信託を活用する際には、「信託だから課税されない」と安易に判断せず、みなし規定に該当しないかどうかを事前に確認し、必要に応じて税理士などの専門家と連携することが重要です。

例えば、80代の母が自宅と賃貸アパートを保有しており、長男を受託者兼受益者とする家族信託を設定した場合、信託財産からの賃料収入は長男の所得として所得税・住民税の申告対象となります。
その後、母が亡くなって信託を継続しつつ、長女を次の受益者に指定していたような場合には、長女が受益権を取得した時点で相続税法上の相続またはみなし贈与として課税関係が生じる可能性があり、受益権の評価額に基づいて相続税・贈与税を検討します。​​

家族信託に関わる税金は、「受益者課税の原則」に基づき、受益者の所得として所得税・住民税が課されるのが基本であり、受益権の取得や連続する承継の場面では贈与税・相続税のみなし規定が関係してきます。
信託法改正や信託税制の整備により、受益者連続型信託などの高度な設計も可能になっていますが、その分、みなし贈与や課税タイミングの判断が難しくなっているため、国税庁が公表する通達・パンフレット等の公的情報を確認しつつ、個別具体的な検討が不可欠です。
家族信託を検討される際には、民事法務の専門家と税務の専門家の双方と連携し、ご家族の意向と税務リスクを踏まえたオーダーメイドの設計を行うことをおすすめします。

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