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入院中・高齢で公証役場に行けない場合でも利用できる?公証人の出張制度と公正証書遺言の注意点

公正証書のアイキャッチ画像

「入院していて公証役場へ行けない」「高齢で外出が難しいが、公正証書遺言を作りたい」というご相談は少なくありません。

公正証書遺言は、原則として公証役場で作成します。しかし、病気、けが、高齢、身体障害などの事情により公証役場へ出向くことが難しい場合には、公証人が自宅・病院・介護施設などへ出張して公正証書を作成できる場合があります。

もっとも、出張を依頼すれば必ず作成できるわけではありません。遺言者本人の意思確認、証人の手配、医療機関や施設との調整、費用、日程など、通常より早めに準備すべき事項があります。特に入院中の遺言では、容体の変化によって手続が進められなくなる可能性もあるため、早期の相談が重要です。

公証人は、原則として公証役場で職務を行います。ただし、事件の性質上、公証役場外で対応する必要がある場合には、役場外で公正証書を作成することが認められています。

そのため、遺言者が次のような事情で外出できない場合には、公証人に出張を依頼できる可能性があります。

  • 病院に入院している
  • 自宅で療養しており移動が難しい
  • 介護施設や老人ホームに入所している
  • 高齢や身体機能の低下により外出が困難である
  • けがや病気のため、車いすや寝たきりの状態にある

出張先は、一般に自宅、病院、介護施設などです。もっとも、公証人には職務上の管轄があるため、出張先の所在地と公証役場の管轄関係を事前に確認する必要があります。普段利用している公証役場や、家族の都合だけで選ぶのではなく、実際に遺言者がいる場所を基準として相談を進めることが大切です。

出張による公正証書遺言でも、基本的な手続の考え方は公証役場で作成する場合と同じです。ただし、訪問当日に初めて内容を決めるのではなく、事前準備を十分に行う必要があります。

まず、遺言者の財産、相続人、遺言で財産を渡したい相手、遺言執行者を指定するかどうかなどを整理します。不動産があれば登記事項証明書や固定資産評価証明書等、預貯金があれば金融機関名・支店名・口座情報、株式等があれば内容を確認できる資料を用意します。

次に、遺言者本人と面談し、遺言の内容が本人の意思によるものかを確認します。遺言者が話せる場合であっても、病状や認知機能の状態によっては、公証人が慎重に意思能力を確認します。家族が代わりに内容を決めたり、本人への質問に先回りして答えたりすることは避けるべきです。

その後、公証人へ資料と遺言内容の案を提出し、証書案の調整を行います。作成日には、公証人、遺言者、証人2人が原則として同席します。公正証書遺言では証人2人の立会いが必要であり、相続人、受遺者、その配偶者や直系血族などは証人になれません。証人の選定は、出張遺言においても重要なポイントです。

入院中に公正証書遺言を作成する場合、まず病院側の了承と訪問日時の調整が必要です。病室への立入り人数、面会時間、感染症対策、個室か多床室かなどによって、対応が変わることがあります。病院の医療・相談部門や病棟スタッフへ、あらかじめ公証人と証人が訪問する予定を伝えておくとよいでしょう。

最も重要なのは、遺言者に遺言能力があることです。高齢であること、認知症の診断があること、入院していることだけで、直ちに遺言ができなくなるわけではありません。一方で、遺言内容を理解し、自分の財産を誰にどのように承継させるかを判断できる状態でなければ、有効な遺言の作成は困難です。

例えば、鎮静作用のある薬剤を使用している、意識状態に日内変動がある、会話が長時間続かないといった事情がある場合には、比較的状態が安定している時間帯を医療関係者に確認し、公証人との面談日を設定することが考えられます。遺言内容が複雑なほど、本人の理解・判断が確認できるよう、事前に内容を整理しておく必要があります。

また、公証人は遺言者が署名できない事情がある場合、一定の手続によりその旨を証書に記載して対応できることがあります。手が震える、視力が低下している、寝たままで筆記が難しいといった場合でも、直ちに作成を断念するのではなく、早めに公証役場へ事情を説明することが重要です。

公証人が病院や自宅へ出張して遺言公正証書を作成する場合、通常の公証人手数料に加え、出張に伴う費用が必要になります。

病床での執務では、遺言加算を除いた目的価額に応じた手数料が1.5倍となる場合があります。さらに、遺言加算手数料のほか、公証人の日当と出張先までの旅費実費が必要です。日当は1日2万円、4時間以内の場合は1万円とされています。財産額、相続人等の人数、出張先、所要時間によって総額は変わるため、事前に見積りを確認しましょう。

出張制度を利用する際は、容体が急変してから準備を始めるよりも、本人が意思を明確に伝えられる段階で相談することが大切です。特に、相続人間に意見の対立が見込まれる場合や、不動産・複数の預貯金・事業用財産がある場合には、遺言内容の検討にも時間を要します。

入院中や高齢で公証役場へ行けない場合でも、公証人の出張制度を利用し、自宅・病院・介護施設などで公正証書遺言を作成できる可能性があります。

ただし、出張には管轄、日程、証人、病院・施設との調整、追加費用といった確認事項があります。何より、遺言者本人が自分の意思で内容を判断し、公証人に伝えられる状態であることが重要です。

「まだ元気だから急がなくてもよい」と考えている間に、病状や判断能力の変化によって選択肢が限られることもあります。公正証書遺言を希望する場合は、外出が難しくなった時点、あるいは入院や施設入所が決まった段階で、早めに必要資料や遺言内容の整理を始めるとよいでしょう。

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