はじめに
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を法律的に支援する重要な制度です。しかし、申立て手続きは複雑で、初めての方にとっては不安が大きいものです。本記事では、成年後見制度の申立て手続きを分かりやすくステップ別に解説します。これから申立てを考えている方や、家族のために制度利用を検討している方に役立つ情報をお届けします。
成年後見制度の申立て手続き:ステップ別解説
Step 1: 申立ての準備
申立ての準備段階では、以下の点を確認しましょう。
- 申立人の確認:本人、配偶者、4親等内の親族、市町村長などが申立てできます。
- 申立先の確認:本人の住所地を管轄する家庭裁判所が申立先となります。
- 後見人候補者の検討:親族や専門職などから適切な候補者を考えます。
Step 2: 必要書類の収集
申立てには多くの書類が必要です。主な書類は以下の通りです。
- 申立書一式(申立書、申立事情説明書、親族関係図など)
- 本人の戸籍謄本、住民票
- 後見登記されていないことの証明書
- 診断書(成年後見用)と診断書付票
- 財産目録と収支状況報告書
- 本人の健康状態に関する資料(介護保険被保険者証のコピーなど)
Step 3: 申立書類の作成
申立書類は家庭裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。記入例を参考に、丁寧に作成しましょう。
Step 4: 費用の準備
申立てには以下の費用が必要です。
- 収入印紙(申立手数料):800円
- 登記手数料:2,600円
- 郵便切手:約4,000円分
Step 5: 家庭裁判所への申立て
準備が整ったら、管轄の家庭裁判所に申立てを行います。多くの家庭裁判所では、事前に電話予約が必要です。
Step 6: 家庭裁判所での手続き
申立て後の流れは以下の通りです。
- 受理面接:申立人や候補者への面接が行われます。
- 調査:裁判所が本人の状況などを調査します。
- 鑑定:必要に応じて医師による鑑定が行われます。
- 審判:家庭裁判所が後見開始の審判を行います。
- 後見人選任:成年後見人が正式に選任されます。
Step 7: 後見開始後の手続き
後見人に選任されたら、以下の手続きが必要です。
- 財産目録の作成
- 定期的な家庭裁判所への報告
- 本人の財産管理や身上保護の実施
成年後見制度申立ての注意点
- 書類の正確な記入:不備があると手続きが遅れる可能性があります。
- 期限の厳守:診断書など有効期限のある書類に注意しましょう。
- 本人の意思の尊重:可能な限り本人の意思を確認し、尊重することが重要です。
- 専門家への相談:複雑な案件では、専門家(弁護士、司法書士、行政書士など)に相談するのも良いでしょう。
まとめ
成年後見制度の申立て手続きは、一見複雑に見えますが、ステップを踏んで丁寧に進めれば、決して難しいものではありません。本人の権利を守り、適切な支援を受けるための重要な手続きです。不安な点があれば、家庭裁判所や地域の相談窓口に相談することをおすすめします。成年後見制度を通じて、判断能力が不十分な方々が安心して生活できる社会の実現に、私たち行政書士も貢献していきたいと考えています。