はじめに
高度専門職の在留資格で日本に在留している外国人が増えるにつれて、その配偶者の「働き方」についてのご相談も増えています。
特に、「特定活動(高度専門職外国人の就労する配偶者)」を取得すればフルタイムで働けると聞いたものの、どのような職種なら働けるのか、逆にどのような仕事はできないのかが分かりづらいところです。
この記事では、政府の公的情報をもとに、「特定活動(高度専門職外国人の配偶者)」の就労範囲と、配偶者の職種によってどこまで働けるのかを分かりやすく整理していきます。
特定活動(高度専門職配偶者)とは
出入国管理及び難民認定法上の「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について特に指定した活動を認める在留資格です。
この中の告示33号は、「在留資格『高度専門職』で在留している外国人の配偶者が就労する場合」の在留資格として位置づけられており、日本の公私の機関との契約に基づいて一定の就労活動を行うことを認めるものです。
法務省・出入国在留管理庁の公表によれば、「高度専門職外国人の就労する配偶者」としての活動内容や要件は、別途定められた告示で具体的に規定されています。
就労できる職種の範囲
認められている活動分野
公的資料や制度解説によると、「特定活動(高度専門職外国人の配偶者)」でフルタイム就労が認められる主な分野は、次の在留資格に該当する活動に限られています。
- 研究(在留資格「研究」に該当する活動)
- 教育(在留資格「教育」に該当する活動。中学・高校等での語学教師など)
- 技術・人文知識・国際業務(いわゆるエンジニア、企業内の事務・企画・翻訳・通訳など)
- 興行の一部(演劇など一部を除いた、興行分野の活動に限られるとされています)
これらは、在留資格一覧や特定活動の解説で、「高度専門職外国人の配偶者の就労」として具体的に列挙されている範囲であり、それ以外の職種でのフルタイム就労は原則として認められていません。
職種によって就労の可否が変わる
同じ「働く」でも、職種によって結果が大きく変わる点が重要です。
- システムエンジニア、機械設計者など
→ 「技術」に該当するため、特定活動(高度専門職配偶者)の就労範囲に入りやすい職種といえます。 - 企業での営業職、マーケティング、人事・総務、通訳・翻訳など
→ 「人文知識・国際業務」に該当する活動として認められる可能性が高い分野です。 - 語学学校や中学・高校の語学教師
→ 「教育」に該当する典型例として、制度解説でも紹介されています。
一方、飲食店のホールスタッフ、工場ライン作業、コンビニ・スーパーでのレジ・品出しなどのいわゆる単純労働は、上記のいずれの在留資格にも該当しないため、「特定活動(高度専門職配偶者)」でフルタイム就労することはできないと解されています。
「家族滞在」との違いと注意点
高度専門職外国人の配偶者が日本で在留する場合、一般的には在留資格「家族滞在」で入国・在留するケースが多いですが、「家族滞在」と「特定活動(高度専門職配偶者)」では就労の扱いが大きく異なります。
- 家族滞在
- 特定活動(高度専門職外国人の就労する配偶者)
また、この特定活動を利用するためには、配偶者が高度専門職外国人本人と日本国内で同居していることなど、一定の条件を満たしている必要があり、別居や単身赴任の形態では対象外となるとされています。
事例イメージと実務上のポイント
ここでは、誤解を避けるため実在の案件とは異なる架空の事例を用いて、職種による違いのイメージを紹介します。
- 例1:ITエンジニアとして働きたい配偶者の場合
高度専門職(ITエンジニア)の配偶者が、日本のIT企業とエンジニアとして雇用契約を結ぶケースでは、その仕事内容が「技術」に該当すると判断されれば、特定活動(高度専門職配偶者)でフルタイム就労することが可能な類型になります。 - 例2:飲食店のアルバイトを希望する配偶者の場合
同じ高度専門職の配偶者であっても、一般的な飲食店ホールスタッフなどの業務は「技術」「人文知識・国際業務」等には該当しないため、特定活動(高度専門職配偶者)としてフルタイム就労することはできません。
この場合は、「家族滞在」で資格外活動許可を得て、週28時間以内のアルバイトとして働く形が想定されます。
実務上は、
- 職務内容がどの在留資格区分に該当するか
- 雇用契約の内容、報酬額、日本人との同等性
- 高度専門職本人との同居状況や在留状況
などを総合的に確認したうえで、どの在留資格で申請すべきかを検討することが求められます。
まとめ
「特定活動(高度専門職外国人の就労する配偶者)」は、通常の「家族滞在」と比べて、一定の分野でフルタイム就労が可能となる優遇的な在留資格です。
しかし、どのような仕事でも自由にできるわけではなく、「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「興行の一部」といった在留資格に該当する職種・業務内容に限定される点が重要です。
ご自身の希望する職種がこの範囲に入るかどうか、また、「家族滞在」で資格外活動許可を利用した方が適切かどうかは、個々の事情によって変わります。
実際の申請にあたっては、最新の法務省・出入国在留管理庁の情報や告示内容を確認しつつ、専門家へ相談されることをおすすめします。


