はじめに
「日本でコックとして働きたいが、10年の実務経験がない」「スポーツ指導者として採用内定をもらったが、経験年数が足りないかもしれない」といったご相談は少なくありません。
在留資格「技能」は、原則として一定年数以上の実務経験が求められる一方で、学歴や競技実績などで一部代替できるケースもあります。
本記事では、経験年数が足りない場合に「技能」ビザを取得できるのか、どのような実績で代替できるのかを、公的情報に基づいてわかりやすく解説します。
「技能」ビザの基本と対象業務
法務省・出入国在留管理庁によると、「技能」の在留資格は「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務」に従事する活動を対象としています。
代表的な該当例として、外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属や宝石等の加工職人などが挙げられています。
つまり、「技能」ビザは一般的な単純労働ではなく、日本国内では代替が難しい専門的・熟練的なスキルに対して与えられる在留資格だと理解することが重要です。
原則となる実務経験年数の要件
「技能」ビザでは、多くの職種で長期間の実務経験が求められます。
公的情報やそれを整理した専門サイトの解説を総合すると、主な目安は次のようになります。
- 外国料理の調理師や貴金属・宝石加工職人など
多くのケースで「実務経験10年以上」が原則とされています。 - 外国特有の建築土木技能を有する大工
同様に「実務経験10年」が目安とされています。 - スポーツ指導者
「実務経験3年以上」または選手としてオリンピックや世界選手権など国際的大会に出場した経験が求められます。
これらの年数は、あくまで「該当分野の業務に従事した期間」であり、単純作業や該当しない業務は含まれない点に注意が必要です。
経験年数が足りない場合に代替できる主な実績
「10年も働いていないから無理なのでは」と諦める前に、代替が認められ得る実績がないかを確認することが大切です。
代表的な代替要件は、次のようなものです。
- 関連分野の学歴・専攻
外国の教育機関等で調理や関連科目を専攻した期間を、実務経験年数に算入できるとされています。
例えば、調理学校で3年間専門的に学び、その後7年間現場で働いたような場合には、合算して10年と評価される可能性があります。 - 上位者の監督下での実務経験
外国特有の建築技能などでは、「10年以上の実務経験を有する者の監督下で5年以上の実務経験」があれば要件を満たすと解説されているケースがあります。
これは、「高度な技能を持つ上司・先輩のもとで専門的な技能を身につけたか」が重視される例です。 - スポーツにおける国際大会出場歴
スポーツ指導者については、「3年以上の指導経験」がなくても、オリンピックや世界選手権等の国際大会に選手として出場した実績により要件を満たす場合があるとされています。
実務経験よりも競技実績が重視される特殊なパターンです。
このように、「実務経験年数が足りない=絶対に不許可」というわけではなく、学歴や実績との組み合わせで要件を満たせる余地が存在します。
注意すべきポイント:経験年数の数え方と証明方法
経験年数を「何年とカウントできるか」だけでなく、「どのように証明できるか」も審査において重要です。
- 経験としてカウントできる期間かどうか
履歴書上で年数が長くても、実際の業務が単純作業中心であれば、要件を満たす実務経験として評価されない可能性があります。
そのため、職務内容が在留資格「技能」の対象業務と合致しているかどうかを丁寧に整理する必要があります。 - 証明書類をどこまで揃えられるか
実務経験の証明としては、勤務先が発行する在職証明書、職務内容証明、雇用契約書、給与明細などが総合的に確認されます。
特に過去の勤務先が複数ある場合、すべての期間について証明書が取得できるかどうかが重要なポイントです。 - 学歴との組み合わせの説明
「専門学校で調理を3年学び、その後7年働いた」など学歴を合算する場合は、学校の卒業証明書・成績証明書、カリキュラムなどを用いて「関連科目を専攻していた」ことを示す必要があります。
学んだ内容と、実際に従事する業務との関連性も説明されることが望ましいです。
これらを事前に確認せずに申請してしまうと、「経験年数は満たしているつもりだったのに、不許可になってしまった」という結果になりかねません。
イメージ事例:経験不足でも可能性が残るケース
ここでは、実務経験と学歴を組み合わせることで、「技能」ビザ取得の可能性が出てくる典型的なパターンをイメージとしてご紹介します。
- 事例イメージ 1:調理師志望のAさん
・海外の調理専門学校で3年間、西洋料理を専攻
・卒業後、母国のレストランで6年勤務(うち5年はシェフの補助、1年はメインシェフ)
この場合、「3年(専攻期間)+6年(実務経験)=9年」となり、まだ10年に達していないようにも見えます。
しかし、最後の1年で高い専門性を発揮している、在職証明で職務内容が詳細に説明されているなど、総合的に判断される余地があり得ますので、個別に相談しながら方針を検討することが現実的です。 - 事例イメージ 2:スポーツ指導者志望のBさん
・プロ選手として長年活動し、世界選手権にも出場
・指導経験は2年程度だが、日本のクラブチームでコーチとして採用内定
スポーツ指導者は「3年以上の指導経験」だけでなく、国際的な大会出場歴も要件として認められるケースがあります。
そのため、出場実績を証明する資料を整えることで、指導経験年数が不足していても申請の可能性が出てきます。
いずれのケースも、「自分は年数が足りない」と自己判断して諦める前に、保有する学歴・競技実績・職歴を整理し、公的基準に照らして検討することが重要です。
まとめ
在留資格「技能」は、産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人のための在留資格で、多くの職種で長期の実務経験が求められます。
しかし、関連分野の学歴や、上位者の監督下での実務、スポーツにおける国際大会出場歴などにより、経験年数を一部代替できる場合もあります。
一方で、「何年働いたか」だけでなく、「どのような業務内容か」「どのように証明できるか」が審査のポイントとなるため、在職証明書や職務内容証明、卒業証明書などを丁寧に揃えることが重要です。
経験年数が足りないと感じる場合でも、まずはご自身の学歴・職歴・実績を整理し、公的な基準に基づいて個別に検討することで、許可の可能性を高めることができます。
専門家に相談することで、不許可リスクを避けつつ、最適な在留資格や申請タイミングを一緒に検討していくことが望ましいでしょう。


