はじめに
近年、外国人料理人やスポーツインストラクターなど、在留資格「技能」で働く方の中には、「会社から時短勤務を打診されたが、ビザ更新に影響するのでは?」と不安を感じている方が増えています。
本記事では、勤務時間が短くなった場合に「技能」ビザの在留期間更新にどの程度影響するのか、法令や公的情報を踏まえて分かりやすく解説します。
「技能」ビザの基本と公式名称
在留資格「技能」は、日本では主に外国料理の料理人、スポーツトレーナー、パイロット、宝石職人など、熟練した技能を用いて働く人のための在留資格です。
入管法上、「技能」は「出入国管理及び難民認定法」別表第一の就労系在留資格の一つとして規定されており、雇用契約に基づき、日本の公私の機関で専門的な技能を活かして就労する活動が認められています。
したがって、ビザ更新の際には「技能に見合う業務内容であるか」「継続性・安定性があるか」が重要なポイントになります。
勤務時間が短縮された場合にチェックされるポイント
勤務時間が短縮されたからといって、直ちに「技能」ビザ更新が不許可になるとは限りませんが、入管は以下のような点を総合的に確認すると考えられます。
- 業務内容が「技能」の範囲内にとどまっているか(単純労働化していないか)
- 雇用契約上の勤務形態(フルタイムかパートタイムか、契約社員かなど)
- 賃金水準が日本人と同等程度であるか、生活維持が可能な水準か
- 事業の継続性・企業の経営状況(倒産寸前でないか、給与支払いに問題がないか)
特に、フルタイムから大幅な時短(パートタイム相当)に変更された場合や、給与が大きく減額される場合には、「本当に技能人材として必要とされているのか」「生計維持が可能か」といった観点から慎重に審査される可能性があります。
「時短=即不許可」ではないが、注意すべき場面
1. 週の勤務時間が大幅に減る場合
例えば、これまで週40時間勤務であった料理人(技能)が、業績悪化などにより週20時間程度に減らされるケースを考えてみます。
この場合、雇用契約書や労働条件通知書に記載された勤務時間・給与額から、「専ら技能を用いて生活の基盤を置いている」といえるかがポイントになります。
極端な例として、「他に主たる収入源があり、技能の仕事は週数時間のみ」といった状態になると、入管側からは「技能人材として日本で活動している」と評価しづらくなるおそれがあります。
もっとも、週30時間前後の勤務であっても、業務内容が専門的で、給与水準が一定程度確保されていれば、直ちに不許可と決まっているわけではありません。
2. 給与が生活維持できない水準まで下がる場合
在留資格の運用上、就労系ビザでは「報酬が日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上であること」が求められます。
勤務時間の短縮に伴い、年収が著しく下がり、日本での生活維持が困難と判断される水準になると、更新の際に不許可リスクが高まります。
一方で、同じ職場・同じ職種の日本人社員と同様の条件で時短や減給が行われている場合には、「外国人だけが不利に扱われているわけではない」ことを資料で説明できると、合理性が認められやすくなります。
イメージしやすいケーススタディ
事例1:週40時間→週30時間の時短、給与も若干減額
中国料理店で働くAさん(在留資格「技能」・料理人)。
これまで週40時間・月給30万円で働いていましたが、店舗の営業時間短縮に伴い、週30時間・月給24万円に変更となりました。
- 業務内容:引き続き中国料理の調理を担当(メニュー開発や新人指導もあり)
- 勤務時間:フルタイムよりは短いが、週30時間程度
- 給与:家賃・生活費を賄える水準、社会保険も継続加入
このようなケースでは、
「技能にふさわしい業務内容が継続していること」
「生活維持が可能な給与水準であること」
を、雇用契約書・給与明細・会社案内などで丁寧に示すことで、在留期間更新が認められる可能性は十分あります。
事例2:週40時間→週15時間、収入も副業レベル
一方、スポーツクラブで働くBさん(在留資格「技能」・スポーツトレーナー)が、クラブの経営方針変更により、週15時間程度のレッスンのみ担当となり、月収も10万円前後になったとします。
- 業務内容:専門性はあるが、稼働時間が非常に少ない
- 収入:生活の大部分を他の収入源や仕送りに依存
- 他の活動:日本語学校の勉強が中心で、トレーナーは副業的な位置づけ
このような場合は、入管から「本当に技能の活動を主たる活動としているのか」「留学など他の在留資格が適切ではないか」といった疑問を持たれる可能性があります。
時短そのものよりも、「在留資格にふさわしい主たる活動かどうか」「生活基盤がどこにあるのか」が問われる点に注意が必要です。
ビザ更新時に準備しておきたい資料とポイント
勤務時間や給与が変わった場合、在留期間更新(在留期間更新許可申請)の際には、次のような資料で状況を説明しておくと安心です。
- 新しい雇用契約書・労働条件通知書(勤務時間・給与・雇用期間が明記されたもの)
- 直近の給与明細・源泉徴収票・住民税課税証明書等(収入の実績)
- 会社案内・ホームページの写しなど(事業の継続性や規模を示せる資料)
- 時短や減給の理由を社内文書等で説明できる資料(営業時間短縮、売上減少、新店舗開設によるシフト調整など)
また、外務省や法務省・出入国在留管理庁の案内に沿い、更新申請は在留期限の概ね3か月前から可能とされていますので、勤務条件の変更が見込まれる場合は早めに準備を進めることが重要です。
まとめ
- 勤務時間が短縮されたからといって、自動的にビザ更新が不許可になるわけではなく、業務内容の専門性、勤務時間の程度、給与水準、事業の継続性などを総合的に見られます。
- 週30時間程度であっても、生活可能な収入が確保され、技能にふさわしい業務が継続していれば、更新が認められる余地は十分にあります。
- 一方、週数時間レベルの勤務や、副業程度の収入しか得ていない状態になると、「技能」を主たる活動とする在留資格としてはリスクが高くなります。
- 勤務条件が変わった場合には、雇用契約書や給与明細、会社案内等を整え、なぜ時短になったのか、生活や事業の安定性に問題がないのかを丁寧に説明できるようにしておくことが大切です。
勤務時間の変更が予定されている、あるいはすでに変更された方は、更新時期や他の在留資格への変更の可能性も含め、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。


