はじめに
建設業の人手不足が深刻になるなか、「外国人材を現場で採用したいが、建設業許可や在留資格との関係がよく分からない」というご相談が増えています。
しかし、在留資格を誤って理解したまま採用すると、不法就労や不法就労助長罪に該当するおそれがあり、会社と経営者に重い罰則が科されるリスクがあります。
この記事では、建設業許可業者が外国人を雇用する際に押さえておきたい「在留資格の基本」と「建設特定技能制度のポイント」を、政府・公的機関の情報をもとに分かりやすく解説します。
建設業で外国人を雇用するメリットとリスク
建設分野は、日本人の高齢化や若年層の入職減少により、人材確保が大きな課題となっています。
こうした中で、特定技能などの制度を活用した外国人材の受入れが、即戦力の確保策として位置付けられています。
一方で、在留資格に合わない業務に従事させたり、在留期限の確認を怠ったりすると、不法就労や不法就労助長罪に問われる可能性があります。
不法就労を助長した事業主は、入管法第73条の2により「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」などの罰則を受ける可能性があるため、制度理解が不可欠です。
建設業で使われる主な在留資格
現場作業が中心の在留資格
- 特定技能(建設)
新たな在留資格「特定技能」は、人手不足が深刻な分野で即戦力となる外国人を受け入れるために創設された制度で、建設分野も対象になっています。
特定技能1号「建設」では、土木・建築・ライフライン設備などの現場作業に従事することが想定されており、所定の技能試験と日本語試験に合格した人、または建設分野の技能実習2号を良好に修了した人が対象です。 - 技能実習(現行制度)
技能実習は、開発途上地域への技能移転を目的とする制度で、建設業も対象分野に含まれています。
技能実習1号・2号・3号を通算すると、原則最長5年まで建設現場等で就労することが可能とされています。
ホワイトカラー業務向けの在留資格
- 技術・人文知識・国際業務
この在留資格は、「専門的な知識や技術を要するホワイトカラー業務」に従事する外国人を対象としており、建設業界では設計、施工管理、積算、通訳などの業務が想定されています。
一方で、躯体工事や仕上げ工事などの単純・現業作業を主とする業務は対象外であり、現場作業に従事させることは原則認められていません。
身分系の在留資格
- 永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者など
これらの「身分に基づく在留資格」を持つ外国人は、原則として就労制限がなく、建設現場を含めどのような業種・職種でも就労することができます。
ただし、クレーンなどの有資格業務については、日本人と同様に各種国家資格や技能講習の修了が必要です。
建設特定技能制度と建設業許可の関係
特定技能(建設分野)で外国人を受け入れるには、受入れ企業が建設業法第3条に基づく建設業許可を受けていることが前提とされています。
無許可業者は建設特定技能受入計画の認定を受けることができず、特定技能(建設)の外国人を現場作業に従事させることはできません。
また、特定技能1号「建設」については、国土交通省に対する「建設特定技能受入計画」の認定申請が必要であり、認定を受けた後に在留資格「特定技能」の申請を行う流れになります。
受入れを開始した事業者は、「1号特定技能外国人受入報告書」の提出や、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録など、国土交通省が定める各種手続を行う必要があります。
在留資格確認と不法就労防止の実務ポイント
在留カードの確認は必須
外国人を雇用する際には、必ず在留カードを提示してもらい、次の点を確認することが重要です。
- 在留資格の種類(特定技能、技術・人文知識・国際業務、技能実習、身分系など)
- 在留期間の満了日
- 資格外活動許可の有無(留学・家族滞在などの場合)
警視庁は、在留カードの確認を怠るなど過失がある場合でも、不法就労助長罪として処罰の対象になることがあると注意喚起しています。
不法就労助長罪の罰則
厚生労働省や入管庁の資料によると、不法就労外国人を雇用した事業主や、不法就労をあっせんした者は、入管法第73条の2により「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」に処される可能性があります。
また、法人が関与している場合には、行為者個人だけでなく法人自体にも罰金刑が科される場合があるとされています。
よくある誤解と注意すべきポイント
「技術・人文知識・国際業務」で現場作業をさせてしまうケース
建設会社で設計や施工管理として採用した外国人に、慢性的な人手不足を理由に現場作業(型枠、塗装、内装など)を兼務させてしまう、というケースが少なくありません。
しかし、「技術・人文知識・国際業務」はホワイトカラー業務向けの在留資格であり、現場作業が業務の中心となると、在留資格該当性を欠き、不法就労と評価されるリスクがあります。
「建設業許可があれば在留資格は柔軟になる」という誤解
建設業許可は、あくまで建設業法上の許可であり、外国人の就労を許可する在留資格とは別の制度です。
たとえ特定建設業許可や複数業種の一般許可を有していても、在留資格の種類や活動範囲が不適切であれば、不法就労のリスクは変わりません。
建設会社が押さえるべき実務の流れ(イメージ)
ここでは、典型的なケースをイメージしながら、流れの一例を整理します。内容は制度の一般的な仕組みに基づく説明であり、特定の事案を示すものではありません。
- 建設業許可の有無を確認
まず、自社が建設業法第3条の建設業許可を受けているか確認します。特定技能(建設)で現場作業の外国人を受入れるには、許可取得が前提となります。 - 必要な在留資格の選定
- 施工管理・設計・積算等:技術・人文知識・国際業務
- 現場作業:特定技能(建設)、技能実習、身分系在留資格 など
業務内容と在留資格が適合しているかを慎重に検討します。
- 特定技能(建設)の場合の追加手続き
特定技能1号「建設」で採用する場合、建設特定技能受入計画の認定申請や、受入れ報告、CCUS登録など、国土交通省・出入国在留管理庁が定める手続きが必要になります。 - 雇用後の在留資格管理
在留期間満了日を台帳等で一元管理し、更新の見込みなども含めて余裕を持って確認することが重要です。
配置換えや業務内容の変更を行う際には、その在留資格で従事できる業務かどうかを改めて確認します。
まとめ
建設業で外国人を雇用する際には、「建設業許可」と「在留資格」は別の制度であり、それぞれの要件を満たす必要があることを理解しておくことが重要です。
特定技能や技能実習、技術・人文知識・国際業務、身分系在留資格など、在留資格ごとに認められる業務範囲や手続きが異なるため、業務内容に応じて適切な在留資格を選択しなければなりません。
また、在留カードの確認を怠ったり、在留資格の範囲を超えた業務に従事させたりすると、不法就労助長罪などにより「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」といった厳しい罰則の対象となるおそれがあります。
人手不足を解消しつつ、会社を法令違反のリスクから守るためにも、建設業許可と在留資格の基本を押さえたうえで、専門家に相談しながら制度を正しく活用していくことが大切です。


