はじめに
相続手続きでは、遺産の分割についてさまざまな取り決めが必要ですが、被相続人の意思に基づく遺言書がある場合でも、法定相続人には最低限の権利が保障されています。この最低限の権利を「遺留分」と呼び、法定相続人の生活の安定を図るための保護制度として機能しています。本記事では、遺留分の基本的な考え方や遺留分を請求する際の流れ、具体的な割合について詳しく解説します。
遺留分とは?
遺留分とは、被相続人が自由に財産を処分する権利の範囲を制限し、法定相続人に保障された最低限の相続分を指します。遺留分は、遺言などにより特定の相続人に多くの遺産が分配される場合でも、他の法定相続人に対して一定の相続財産が確保されるよう定められた制度です。民法に基づき、配偶者や子ども、直系尊属(親など)がこの権利を有しますが、兄弟姉妹には認められていません。
遺留分の割合
遺留分の割合は、相続人の組み合わせに応じて異なりますが、一般的に以下のように定められています。
- 配偶者や子どもが相続人の場合
相続財産の「1/2」が遺留分として認められます。例えば、遺産が2,000万円の場合、配偶者と子どもに1,000万円が遺留分として保障されることになります。 - 直系尊属(親など)のみが相続人の場合
相続財産の「1/3」が遺留分となります。遺産が1,500万円の場合、直系尊属には500万円が遺留分として確保されます。
遺留分侵害額請求権とは?
遺留分が侵害された場合、法定相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使することができます。遺留分侵害額請求権とは、遺留分に満たない相続分しか受け取れなかった場合、他の相続人や受遺者に対して、侵害された遺留分を補填するよう請求する権利です。
遺留分侵害額請求の流れ
- 遺留分が侵害されているかの確認 まず、遺産分割の状況や遺言内容を確認し、遺留分に達しているかを検討します。遺留分を下回る場合、遺留分侵害額請求が可能です。
- 相手方への請求通知 遺留分が侵害されていると判断された場合、他の相続人や受遺者に対して通知します。多くの場合、書面での通知が行われ、内容証明郵便などで送付することが一般的です。
- 遺留分侵害額請求の手続き 相手方が応じない場合や合意に至らない場合、調停や訴訟による解決を図ることも可能です。裁判所の調停や訴訟を通じて遺留分の侵害額を取り戻す流れになります。
遺留分侵害額請求権の期限
遺留分侵害額請求には、時効が適用されます。遺留分侵害を知った時から1年以内、または相続開始から10年以内に請求しなければなりません。これを過ぎると請求権が失効しますので、早めの行動が重要です。
遺留分と遺言書の関係
遺言書が存在する場合、遺産分割は遺言書に従うことが基本となります。しかし、遺言書が法定相続人の遺留分を侵害している場合、相続人は遺留分侵害額請求を行う権利があります。遺言書があっても、法定相続人の遺留分を無視した遺産配分はできません。
遺言者が法定相続人を考慮し、遺留分に配慮した内容で遺言書を作成することで、遺産相続に関する争いを未然に防ぐことができます。行政書士に相談しながら、適切な遺言書を作成することも一つの手段です。
遺留分が侵害されるケースの具体例
遺留分侵害が生じる代表的なケースとして、以下のような事例が考えられます。
- 一人の相続人に全財産を譲る内容の遺言書がある場合
遺言書に基づき、特定の相続人が全財産を受け取る場合、他の法定相続人の遺留分が侵害される可能性があります。 - 特定の人物への多額の贈与が行われた場合
生前贈与によって多額の財産が一部の相続人に贈与された場合、その分が他の相続人の遺留分を侵害することがあります。
よくある質問
Q: 遺留分が認められるのは誰ですか?
A: 遺留分は、故人の配偶者、子ども、直系尊属(親など)に認められます。兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
Q: 遺留分侵害額請求が行われた場合、必ず遺産分配が見直されるのですか?
A: 遺留分侵害額請求が行われた場合、相手方と合意が取れれば遺産の一部を受け取ることができますが、合意に至らない場合は調停や訴訟での解決が必要です。
Q: 遺留分侵害額請求を行うための費用はどれくらいかかりますか?
A: 遺留分侵害額請求の手続きには、内容証明郵便や調停・訴訟の費用が発生する場合があります。状況に応じて弁護士や行政書士に相談することもおすすめです。
まとめ
遺留分は、法定相続人に保障された最低限の権利であり、相続手続きにおいて重要な役割を果たします。遺言書が存在する場合でも、遺留分を無視した相続分配は認められず、遺留分が侵害された場合には遺留分侵害額請求を行うことが可能です。遺産相続におけるトラブルを防ぐためにも、遺留分や遺言書の作成について正確な知識を持ち、必要に応じて専門家のサポートを受けることが大切です。