はじめに
国際結婚を考えているお相手に「犯罪歴」があると分かったとき、「そもそも日本で結婚できるのか」「日本で一緒に暮らす在留資格は下りるのか」と不安になる方は多いです。
結論からいうと、犯罪歴があっても日本での婚姻や在留が一律に不可能になるわけではありませんが、犯罪の内容や刑の重さによっては、日本への上陸自体が認められなかったり、在留資格の審査で厳しくチェックされたりします。
以下では、「日本での婚姻手続き」と「在留資格(配偶者ビザ等)の審査」の2つに分けて、犯罪歴がある場合にどのような点が見られるのか、基本的な考え方を解説します。
日本での婚姻は「犯罪歴があっても原則可能」
日本の市区町村で婚姻届を出す際、戸籍法上、相手方に犯罪歴があること自体を理由として届出を受理しないという制度は設けられていません。
婚姻届の受理では、本人確認や意思確認などが重視されており、「婚姻意思があるか」「重婚ではないか」「年齢などの婚姻要件を満たしているか」といった点が審査の中心になります。
もっとも、犯罪歴に限らず、本人確認ができなかったり、なりすましや強制による届出が疑われるような事情があれば、市区町村長は届出人に対する確認や、不受理申出制度の運用などを通じて、適切に対応する権限を持っています。
日本への上陸で問題になる「上陸拒否事由」とは
相手が外国籍で海外在住の場合、日本に入国する段階で「上陸拒否事由」に該当すると判断されると、そもそも日本に入国できないことがあります。
出入国管理及び難民認定法(入管法)第5条は、一定の犯罪歴がある外国人について、「本邦に上陸することができない」とする規定をおいており、例えば「日本または外国の法令に違反して1年以上の懲役・禁錮等の刑に処せられた者」などが含まれます。
また、麻薬・大麻・覚醒剤等に関する犯罪で刑に処せられた者も、上陸拒否事由に該当するとされており、刑の長さにかかわらず、薬物犯罪の有無は非常に重く評価される傾向があります。
もっとも、入管法には「上陸特別許可」の制度もあり、人道上その他の特別な事情を踏まえて、法務大臣が例外的に上陸を認める余地があるとされていますが、個々の事情を踏まえた高度な裁量判断となります。
在留資格(配偶者等)の審査で見られる主なポイント
日本人の配偶者として在留資格「日本人の配偶者等」を申請する場合、犯罪歴があるからといって必ず不許可になるわけではありませんが、「素行が不良でないこと」が重要な審査要素となります。
出入国在留管理庁の審査では、犯罪歴の有無だけでなく、「犯罪の内容」「刑罰の重さ」「執行終了からの期間」「再犯の有無」「生活状況や納税状況」など、総合的に素行が評価されます。
また、在留資格の変更・更新申請書には、「犯罪を理由とする処分の有無(交通違反等を含む)」の自己申告欄が設けられており、ここで虚偽の申告をした場合には、在留資格取消や刑事罰の対象となるリスクがあります。
したがって、過去の処分歴がある場合には、むしろ正直に申告した上で、反省や更生状況、現在の生活基盤などを具体的に説明していくことが重要になります。
どのようなケースで不利になりやすいか
犯罪歴の影響はケースバイケースですが、一般的に次のようなケースでは、在留資格の審査において不利になりやすいと考えられます。
- 1年以上の懲役・禁錮刑を受けたことがある場合(執行猶予付きも含め「処せられた」ものとして扱われるのが行政実務上の見解とされています)。
- 覚醒剤・麻薬・大麻など薬物犯罪に関する刑罰を受けた場合(入管法上、独立した上陸拒否事由として規定されています)。
- 窃盗・傷害等の犯罪を繰り返している場合や、出入国在留管理庁での手続において前科・処分歴を隠していたことが判明した場合。
一方で、比較的軽微な罰金相当の処分のみで、その後長期間にわたり再犯がなく、安定した生活や家族関係を継続しているような場合には、総合的な事情から在留が認められる可能性もあります。
ただし、罰金刑であっても更新不許可となった事例が紹介されているなど、前科がある場合は決して楽観はできず、個別事情に応じた慎重な検討が必要になります。
事例で見る「国際結婚+犯罪歴」のイメージ
- 例:Aさん(日本人・千葉在住)とBさん(東南アジア出身)は現地で知り合い交際を開始しました。Bさんは10年前に母国で窃盗の罪により罰金刑を受けた前歴がありますが、その後は同じ会社でまじめに働き、再犯はありません。
- この場合、日本で婚姻届を出すこと自体は、罰金刑の前歴を理由に拒否されることは通常考えられませんが、配偶者としての在留資格申請では、前歴の有無・内容・再犯の有無・更生状況などがチェックされます。
一方で、Cさん(日本人)とDさん(欧州出身)のケースでは、Dさんが数年前に薬物犯罪で1年6か月の懲役刑を受けていたとすると、入管法5条1項の上陸拒否事由に直接該当する可能性が高くなります。
このような場合、日本で一緒に住むことを希望するのであれば、上陸特別許可等の可能性や、どの程度人道上の事情が認められるかなど、より専門的な検討が必要となります。
不利な事情があるときの準備と相談のポイント
犯罪歴があるお相手との国際結婚・在留を検討する際には、次の点を意識して準備を進めると、審査に向けた説得力を高めやすくなります。
- 犯罪歴の内容と時期を正確に把握し、判決文や証明書など可能な範囲で客観的資料をそろえる。
- 経緯や反省の状況、再発防止のために取っている具体的な行動(職歴、地域活動、治療・カウンセリング歴など)を整理しておく。
- 日本側の生活基盤(収入、住居、扶養状況等)や、夫婦としての実体ある婚姻関係を示す資料を丁寧に準備する。
さらに、入管法の上陸拒否事由や在留特別許可ガイドラインは、法務省・出入国在留管理庁の公表資料として閲覧可能ですので、最新の情報を確認した上で、専門家への相談も検討すると安心です。
まとめ
国際結婚の相手に犯罪歴があっても、日本での婚姻届が直ちに受理されないという仕組みにはなっておらず、本人確認や婚姻要件を満たしていれば、届出自体は原則として可能です。
一方、日本で一緒に暮らすための在留資格の審査では、入管法上の上陸拒否事由や、素行の良否をめぐる総合的な判断が行われるため、犯罪歴の内容・刑の重さ・その後の更生状況などが重要なポイントになります。
前科や処分歴を隠すことは、発覚した際に在留資格取消など、かえって大きな不利益につながるおそれがありますので、正直な申告と十分な資料準備が不可欠です。
具体的な可能性はケースごとに異なりますので、「どこまでが上陸拒否事由に当たるのか」「どのような資料を用意すべきか」など、不安な点がある場合は、法務省・出入国在留管理庁の公式情報を確認しつつ、国際業務に詳しい専門家へ早めに相談することをおすすめします。



