はじめに
日本で生活する外国人の方にとって、「定住者ビザ(在留資格:定住者)」は、就労の自由度が高く、安定した在留が可能な重要な在留資格の一つです。しかし、「パート勤務の場合でも定住者資格を維持できるのか?」「収入が少ないと更新できないのでは?」という不安の声も多く聞かれます。本記事では、入管庁や厚生労働省の公的情報をもとに、定住者資格の更新における“収入の安定性”と“雇用形態”がどのように判断されるのかを詳しく解説します。
定住者ビザとは
出入国在留管理庁によると、定住者とは「法務大臣が特別な理由を考慮し、一定の在留期間を指定して居住を認める者」と定義されています。具体的には、日系三世やその家族、中国残留邦人等の親族などが該当します。就労制限がなく、日本人と同じようにあらゆる職種で働くことが可能です。
パート勤務でも定住者資格は維持できる?
結論から言うと、パート勤務であっても定住者としての資格を維持することは可能です。 出入国在留管理庁の分類によれば、定住者は「就労に制限がない在留資格」に該当します。つまり、正社員に限らず契約社員、アルバイト、パートなど、どのような雇用形態でも働くことができます。
ただし、就労形態よりも重要なのは、「安定した生計を維持できるか」という点です。この点について、入管法上は具体的な金額の基準は明示されていませんが、実務上は生活保護水準を下回らない程度の収入が求められます。
収入の安定性が重視される理由
在留資格の更新審査では、生活が安定しているかどうかを「独立して生計を営むことができるか」という観点から判断します。具体的には、過去の課税証明書や納税証明書、雇用契約書などを通じて、継続的な収入が確認されます。
フルタイム勤務でなくても、パート勤務による安定した収入があり、生活保護を受けていない場合や家族が支援している場合には、更新が許可されるケースもあります。年収200万円前後が一つの参考水準とされていますが、家族構成や居住地域によって審査基準は変わります。
更新に影響を与えるその他のポイント
定住者の在留期間は1年、3年、または5年などと定められており、満了前に更新が必要です。更新の際は、以下の要素が包括的に評価されます。
- 定住者としての身分(たとえば日系三世や日本人の実子を養育する親など)が継続しているか
- 収入や資産によって生活が維持できるか
- 日本の法令を遵守しているか(交通違反や税金滞納なども含む)
これらすべてを総合的に判断したうえで、法務大臣が更新を許可します。
事例の参考
例えば、中国出身のAさんは日系三世として在留しており、スーパーマーケットで週30時間のパート勤務を続けています。年収はおよそ220万円で、納税も継続的に行っています。このような場合、生活保護を受けておらず、安定した雇用継続性があると判断されれば、定住者資格の更新が認められる可能性が高いと考えられます。
雇用主側の注意点
企業や店舗が定住者を雇用する際は、在留カードに記載された「在留資格」および「在留期間満了日」を必ず確認する必要があります。定住者は原則としてどの職種でも就労可能ですが、期間満了前の更新が行われない場合は不法就労となるおそれがあるため、雇用管理上の確認は重要です。
まとめ
パート勤務であっても、安定した収入ときちんとした納税記録があれば、定住者資格を維持・更新することは十分に可能です。ポイントは「雇用形態」よりも「安定して生活できること」にあります。入管実務では一人ひとりの状況を総合的に判断するため、不安がある場合は専門の行政書士に相談してみるのもおすすめです。


