はじめに
日本で「家族滞在」で在留している配偶者やお子さんが、「特定活動」へ在留資格変更を検討する場面が増えています。特に、扶養者側の在留資格や活動内容が変わった場合、「家族滞在のままでよいのか」「特定活動に変更すべきなのか」と悩まれる方が多いです。本記事では、法務省・出入国在留管理庁などの公的情報を踏まえながら、家族滞在から特定活動への変更が認められやすい典型的なケースと、申請時の注意点を解説します。
特定活動とは?基本的な考え方
特定活動は、「他の在留資格ではカバーできない個別の活動」について、法務大臣が告示または個別指定で認める在留資格です。
・ワーキングホリデー、経済連携協定(EPA)看護師候補者、就職活動中の留学生、デジタルノマドなど、多様な類型があります。
・家族滞在の配偶者・子どもについても、扶養者本人が特定活動に移行した場合などに、家族側も特定活動へ変更を求められることがあります。
公的資料では、特定活動は「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と定義されており、同じ「特定活動」であっても内容や就労可否が告示番号ごとに細かく異なります。
家族滞在から特定活動への変更が求められる典型パターン
家族滞在から特定活動への変更が認められやすい(または変更が必要になる)ケースとして、次のようなパターンが公的機関や大学の案内等で示されています。
1.扶養者が「留学」から「特定活動(就職活動)」に変わったケース
・大学や大学院を卒業した留学生が、「留学」から「特定活動(就職活動)」へ在留資格を変更した場合、その配偶者や子どもは、従来の「家族滞在」を維持できず、特定活動へ変更する必要があると案内されています。
・神戸大学や京都大学などの公式サイトでも、「主たる在留資格が特定活動に変わった場合、配偶者・子の在留資格も家族滞在から特定活動に変更する必要がある」と明記されています。
2.扶養者が「特定活動(就職待機・入社待ち)」になったケース
・内定済み卒業生が「特定活動(就職先に入社するまでの待機)」として在留を続ける類型もあり、この場合の配偶者・子どもも、主たる在留資格に合わせて特定活動へ変更する取扱いが示されています。
・この類型では、扶養者の活動内容が「就職待機」であるため、家族側も家族滞在ではなく、特定活動○○号として「扶養を受ける家族」として在留を認める形がとられます。
3.扶養者が「特定活動(高度人材の配偶者等)」となるケース
・高度専門職や一定の特定活動に付随して、その配偶者・子どもも特定活動として在留を認めるスキームが告示で定められています。
・たとえば「特定活動(高度専門職の配偶者で就労可能な特定活動)」など、家族側に広い就労が認められるタイプもあり、従来の家族滞在より有利になる場合もあります。
4.その他、個別指定の特定活動に付随する家族
・デジタルノマド(Digital Nomad)向け特定活動では、「Digital Nomad の配偶者・子ども向け特定活動」が別途用意されており、帯同家族も特定活動で在留します。
・これらの類型では、家族滞在ではなく、「特定活動(デジタルノマドの配偶者・子)」など、告示ベースの特定活動に切り替える形が前提となっています。
変更が認められるための主な要件と審査ポイント
家族滞在から特定活動への在留資格変更は、「出入国管理及び難民認定法第20条」に基づき、個別審査で許否が判断されます。
申請が認められやすいポイントは次の通りです。
1.主たる在留資格と家族側の在留資格が整合していること
・扶養者が特定活動に在留資格変更したにもかかわらず、家族側が家族滞在のままでは「根拠となる在留資格と合っていない」と見なされる場合があります。
・大学の公式案内では、「主たる在留資格が特定活動へ変わったとき、配偶者・子も特定活動へ変更する必要がある」と明記されており、これに従って早めに変更申請を行うことが重要です。
2.生計維持能力(扶養能力)が明確であること
・家族滞在と同様、特定活動の家族類型でも、世帯全体で安定した生計が成り立つかどうかが厳しくチェックされます。
・具体的には、扶養者の雇用契約書、給与明細、課税証明書や納税証明書、預金残高証明などで、生活費を継続的に賄えることを示す必要があります。
3.活動内容・滞在目的が特定活動の趣旨に合致していること
・就職活動中の特定活動であれば、「扶養者が実際に継続的な就職活動をしているか」、入社待機の特定活動であれば「内定企業が実在し、入社予定が確定しているか」などが確認されます。
・家族側についても、「日本で扶養を受けて安定した日常生活を送る」ことが活動内容として合理的であるかが見られます。
4.在留状況・素行が良好であること
・過去の在留状況(オーバーステイの有無、資格外活動違反の有無など)や素行(罰金・懲役等の前科、度重なる交通違反など)は、家族滞在から特定活動への変更審査でも考慮されます。
・在留カードの更新や住所届出を適切に行っているかといった基本的な義務履行も評価対象です。
家族滞在から特定活動への変更手続きの流れと書き方のポイント
1.在留資格変更許可申請書の作成
・法務省の「在留資格変更許可申請書」様式(日本語・英語併記)を使用し、「現在の在留資格:家族滞在」「希望する在留資格:特定活動」と記載します。
・「具体的な活動内容」欄には、例として「特定活動(就職活動)を行う夫(妻)に扶養され、日本国内で同居し、日常生活を共にする家族として在留する」など、扶養者の在留資格の類型に沿った内容を簡潔に記載します。
2.必要書類の準備
・共通して求められやすい書類
- 申請人(家族側)のパスポート・在留カード
- 扶養者の在留カード・パスポート写し
- 戸籍謄本・結婚証明書・出生証明書など家族関係を証する書類
- 住民票(同居を示すもの)
・生計維持を示す書類 - 扶養者の在職証明書・雇用契約書
- 課税(所得)証明書および納税証明書
- 給与明細や預金残高証明(必要に応じて)
・扶養者の特定活動の内容を示す書類 - 大学の卒業証明書や就職活動中であることを示す資料
- 内定通知書・入社予定証明書(就職待機の特定活動の場合)など。
3.申請先とタイミング
・申請は、居住地を管轄する地方出入国在留管理局に対して行います。
・在留期間満了の前に申請することが必要であり、余裕をもって準備するのが望ましいです。
変更が難しい・不許可になりやすいケースと対応策
最後に、「家族滞在から特定活動への変更」が必ずしも認められない典型的なパターンと、その対策について整理します。
1.扶養者の在留資格が特定活動でも「家族帯同が想定されていない類型」の場合
・特定活動の中には、原則として家族帯同が想定されていない類型もあり、その場合は家族の特定活動への変更が難しいことがあります。
・外務省や入管関連情報でも、「一部の特定活動では家族を帯同できない場合があるため、事前に最寄りの入管への相談が必要」と案内されています。
2.扶養者の収入や生活基盤が不安定な場合
・短期雇用契約のみ、就労実績がほとんどない、預貯金が少ないなど、総合的に見て生計維持能力に疑問がある場合、不許可となるリスクが高まります。
・対策として、雇用契約期間の延長、複数年の課税証明、十分な預貯金の証明、第三者からの援助がある場合はその合理性を示す資料などを準備することが有効です。
3.扶養者や家族側の在留状況に問題がある場合
・過去のオーバーステイ、資格外活動違反、納税・社会保険未納などがあると、家族滞在から特定活動への変更も厳しく見られます。
・未納がある場合は、まず完納した上で領収書や納税証明を添付し、反省と今後の改善を説明することが求められます。
4.個別判断が多いため、事前相談が推奨されるケース
・特定活動の多くは「個別事情に応じた裁量判断」が大きく、同じような背景でも許可・不許可が分かれることがあります。
・特に「告示に明記された家族帯同類型に当てはまらない」場合は、申請前に管轄入管窓口で具体的な事情を説明し、申請方針や必要書類について確認しておくと安心です。
まとめ
・「家族滞在」から「特定活動」への変更が認められる典型例としては、扶養者が留学から特定活動(就職活動・就職待機)へ変更した場合や、特定活動の家族帯同が明示された類型に該当する場合などがあります。
・許可のカギは、①扶養者の在留資格との整合性、②生計維持能力、③特定活動の趣旨に合致した活動内容、④過去の在留状況や素行の良好さです。
・一部の特定活動では家族帯同自体が想定されていない類型もあり、個別審査で不許可となることもあるため、事前に管轄入管や専門家へ相談し、必要書類と説明内容を丁寧に準備することが重要です。
本記事は一般的な情報に基づいた解説であり、最終的な判断は出入国在留管理庁による個別審査となります。実際の申請にあたっては、最新の公的情報の確認と、専門の行政書士等への相談をおすすめします。


