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公正証書遺言にデジタル財産は書ける?SNSアカウント・電子マネーの扱いと注意点

遺言関連のアイキャッチ画像サインしている手

スマホ決済やネット銀行、暗号資産、SNSアカウントなどの「デジタル財産」は、今や多くの方が当たり前のように保有しています。
しかし、公正証書遺言を作るときに「電子マネーやポイント、SNSは遺言に書けるのか」「書いた内容は法的に有効なのか」と不安に感じる方も少なくありません。

この記事では、デジタル財産と相続の基本、公正証書遺言にどこまで書けるのか、そして書き方のポイントを、最新の公的情報を踏まえてわかりやすく解説します。

まず、「デジタル財産」がそもそも相続の対象になるのかどうかを確認しておきます。

民法第896条は、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています(ただし一身専属権は除外)。
この規定に基づき、ネット銀行の預金、ネット証券の有価証券、暗号資産、電子マネー残高など、金銭的価値のあるデジタル財産は、原則として通常の財産と同様に相続の対象になると考えられています。

一方で、SNSアカウントやクラウド上の写真・動画などは、「デジタル遺品」と呼ばれることも多く、契約内容や利用規約によっては相続(承継)が制限されるケースがあります。
たとえば、SNSの利用規約に「アカウントは利用者に一身専属で帰属し、譲渡・相続不可」と定められている場合には、アカウントそのものを相続することはできず、サービス提供者のルール(削除・追悼化など)に従った対応となります。

1. 公正証書遺言の基本ルール

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言で、方式も含めて民法で定められています。
遺言の内容については、民法上、特定の財産の相続人・受遺者を指定したり、遺産分割方法を指定したりすることが認められているため、財産の種類が「デジタル」であることを理由に、直ちに無効になるわけではありません。

2025年10月以降、公正証書遺言の作成手続きはデジタル化され、オンライン面談や電子署名を用いて作成できるようになりましたが、これは「作成方法のデジタル化」であり、遺言の中身(どの財産を誰に承継させるか)が有効かどうかの基準は従来と同じです。

2. 金銭的価値のあるデジタル財産

ネット銀行の預金、ネット証券の株式・投資信託、暗号資産、電子マネー残高など、「金銭的価値」が明確なデジタル財産は、原則として相続財産に含まれると考えられます。
したがって、これらの財産について「○○銀行のネット口座の預金は長男に相続させる」「暗号資産取引所Aのアカウントにあるビットコインは妻に遺贈する」といった内容を公正証書遺言に記載することは、通常の財産と同様に有効に取り扱われるのが基本です。

もっとも、電子マネーやポイントサービスの中には、利用規約上「本人に一身専属で相続不可」と定めているものもあり、その場合は残高を相続財産として扱えない可能性があります。
このため、公正証書遺言に記載する際には、対象となるサービスの利用規約を確認し、相続・承継の扱いがどうなっているかを事前に確認しておくことが重要です。

3. SNSアカウントやクラウドデータ

SNSアカウント(X・Instagram・Facebookなど)やクラウド上の写真・動画といった「デジタル遺品」についても、遺言で「どのように扱ってほしいか」を書くことは可能です。
例えば、「XとInstagramのアカウントは削除してほしい」「クラウドに保存している家族写真のデータは、子どもたちで共有してほしい」といった希望を、公正証書遺言の中で付言事項として記載する方法があります。

ただし、SNSアカウントの承継そのものは、多くのサービスが利用規約で制限しているため、遺言に「アカウントを相続させる」と書いたとしても、そのまま法的に実現できるとは限りません。
このため、SNSやクラウドデータについては、法的効力のある相続(財産の承継)というより、「サービスの規約に沿った手続を誰に任せるか」「削除・保存などの希望を明確にしておく」といった観点で記載するのが現実的といえます。

1. 具体的なサービス名・内容を明記する

デジタル財産は、目に見える通帳や証券と違い、存在自体が相続人から見えにくいことが大きな問題です。
そのため、公正証書遺言では、できるだけ以下のような情報を具体的に記載しておくと、相続人が探索・手続を進めやすくなります。

  • ネット銀行:銀行名、支店名、口座種別
  • 証券・FX口座:証券会社名、口座の種類
  • 暗号資産:取引所名、保有している主な銘柄
  • 電子マネー・ポイント:サービス名(例:PayPay、Suicaなど)、相続してほしい旨
  • SNS:サービス名、アカウント名(ID)、削除・保存などの希望内容

なお、IDやパスワードそのものは公正証書遺言に直接書かず、別途「デジタル財産リスト」やエンディングノートで管理し、遺言では「別紙の一覧に基づいて手続を進めてほしい」といった書き方をする方法もあります。

2. 利用規約と民法のルールを意識する

電子マネーやポイント、SNSアカウントについては、「一身専属」「譲渡・相続不可」といった条項が定められていることが少なくありません。
このような条項がある場合には、民法896条のただし書き(被相続人の一身に専属したものは承継されない)が問題となり、残高自体が相続の対象とならない、あるいはアカウント承継ができない可能性があります。

したがって、

  • 金銭的価値のあるデジタル財産:相続対象になり得るかどうか、サービスの利用規約を確認した上で記載する
  • SNS・クラウド等:相続(承継)というよりも、削除・保存などの希望と、手続を任せる人を明記する

という整理をしておくと、公正証書遺言の内容が現実の運用に近づきます。

3. 公正証書遺言の「デジタル化」との関係

公正証書遺言のデジタル化(オンライン面談や電子署名の導入)は、遺言作成の手続を便利にするものであり、デジタル財産を遺言に書けるかどうかという「中身」の問題とは別です。
2025年10月以降は、自宅からウェブ会議で公証人とやり取りし、電子署名を利用して公正証書遺言を作成することも可能になっていますが、財産の指定内容自体は従来と同様、民法や各サービスの規約に沿って検討する必要があります。

以下は、デジタル財産を公正証書遺言に盛り込むときのイメージです。

  • ネット銀行口座
    「○○銀行△△支店のインターネット支店口座にある預金は、長男□□に相続させる。」
  • 暗号資産
    「暗号資産取引所Aに保有している暗号資産(ビットコイン・イーサリアム等)の一切を、妻○○に遺贈する。」
  • 電子マネー
    「電子マネーサービス『〇〇ペイ』の残高について、利用規約の範囲で可能な限り換金または払い戻しを受け、その金額を他の預貯金と同様に法定相続分に従って分配すること。」
  • SNSアカウント
    「XおよびInstagramのアカウントは、相続開始後、長女△△に管理と削除手続を任せる。家族に関する写真データは、削除前に家族全員がダウンロードできるよう配慮してほしい。」

このように、公正証書遺言では「誰に」「どの範囲のデジタル財産を」「どのように引き継いでほしいか」をできるだけ具体的に定めておくと、相続人間のトラブル防止に役立ちます。

  • ネット銀行、暗号資産、電子マネー残高など、金銭的価値のあるデジタル財産は、民法896条に基づき、原則として相続財産に含まれると考えられます。
  • これらのデジタル財産は、公正証書遺言で通常の財産と同様に承継先を指定することができ、遺言内容自体も有効に機能し得ます。
  • 一方、SNSアカウントや一部の電子マネー・ポイントなどは、利用規約上「一身専属」「譲渡・相続不可」とされる場合があり、アカウント承継や残高引き継ぎが制限される可能性があります。
  • そのため、公正証書遺言には、サービス名・口座の種類などを具体的に記載しつつ、各サービスの利用規約を踏まえて「何を相続財産として扱うのか」「SNSやクラウドデータはどのように削除・保存してほしいのか」を整理して書くことが重要です。
  • 公正証書遺言のデジタル化(オンライン面談・電子署名)は、作成手続の利便性を高めるものであり、デジタル財産を遺言に書けるかどうかという点では、従来の法的枠組みに沿って判断されることに変わりはありません。

公正証書遺言にデジタル財産を組み込む際は、民法のルールと各サービスの利用規約を確認しながら、専門家に相談して文言を検討されると安心です。

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