はじめに
相続手続きでは、被相続人が残した財産の評価額を正確に算出することが重要です。不動産や株式といった資産の評価は特に重要であり、相続税の申告や遺産分割の際に欠かせません。しかし、不動産や株式は現金のように単純に評価できないため、適切な評価方法や算出基準を知ることが求められます。この記事では、不動産や株式の金額算出方法について、わかりやすく解説します。相続手続きをスムーズに進めるための参考にしてみてください。
不動産の評価方法
不動産は、被相続人が所有していた土地や建物のことを指し、相続においては多くの場合、相続税評価額で評価されます。不動産の評価額は、地域や立地、地価などによって異なるため、適切な方法で算出する必要があります。
1. 路線価方式
多くの場合、不動産の評価額は「路線価方式」に基づいて算出されます。路線価は、国税庁が毎年発表するもので、道路ごとに設定された1平方メートルあたりの評価額です。路線価方式では、次の手順で評価額を求めます。
- 被相続人が所有していた土地が面する道路の路線価を確認する
- 路線価に土地の面積を掛け合わせることで評価額を算出する
例えば、面する道路の路線価が1平方メートルあたり20万円で、土地の面積が100平方メートルの場合、評価額は「20万円 × 100平方メートル = 2,000万円」となります。
2. 固定資産税評価額
路線価がない場合や建物の評価には、固定資産税評価額が用いられることもあります。これは、市町村が課税のために定めた評価額で、役所から毎年送られる固定資産税の納税通知書に記載されています。建物については、この固定資産税評価額を基に評価されることが多いです。
3. 実勢価格と不動産鑑定評価
場合によっては、路線価や固定資産税評価額ではなく「実勢価格」や「不動産鑑定評価」を基に評価額を算出するケースもあります。実勢価格は、実際の取引価格を指し、不動産の市場価値を反映しています。不動産鑑定評価は、専門の不動産鑑定士が詳細に評価を行い、より正確な価格を算出します。遺産分割のために不動産の時価に近い価格を求めたい場合や、共有者間での売却を検討する際などに利用されます。
株式の評価方法
株式も相続の対象となる財産であり、その評価方法は株式の種類(上場株式か非上場株式か)によって異なります。
1. 上場株式の評価方法
上場株式は、証券取引所で取引される株式のことで、評価額は市場価格を基準に算出されます。具体的な評価方法は以下の通りです。
- 相続発生日の終値:被相続人が亡くなった日の終値を基準に評価する方法です。
- 相続発生月の終値平均:相続発生月の毎日の終値の平均値を使用する方法です。
- 相続発生前後の3か月平均:相続発生月の前後3か月間の終値の平均を取る方法です。
これらの中から最も低い価格を選び、評価額とするのが一般的です。これにより、相続税額が抑えられる可能性が高くなります。
2. 非上場株式の評価方法
非上場株式の評価は、上場株式のような市場価格がないため、評価方法が複雑です。国税庁の定める「財産評価基本通達」に基づいて、以下の3つの方式で算出されます。
- 類似業種比準方式:同じ業種の上場企業の株価や利益水準と比較して評価する方法です。中小企業の株式評価に多く用いられます。
- 純資産価額方式:会社の純資産(資産から負債を引いたもの)を基準に評価する方法です。不動産を多く所有する企業や、積極的に資産運用を行っている企業に適しています。
- 併用方式:類似業種比準方式と純資産価額方式を併用して評価する方法です。会社の規模や事業内容に応じて比率を調整しながら評価します。
評価額の調整
非上場株式の評価では、被相続人が持っていた株式の持分割合や、役員であったかどうかといった要素も影響を受けるため、評価額の調整が行われることがあります。これにより、株式を受け継いだ親族にとっても負担が過大にならないよう配慮されています。
相続税申告における評価方法の選択
不動産や株式の評価は、相続税申告の際に重要です。評価額が高くなると相続税の負担も増加するため、評価方法の選択が慎重に行われます。相続人にとって税負担を軽減できる評価方法を選択することが望ましいです。
評価額の算出で知っておきたいポイント
不動産や株式の評価は相続手続きにおいて極めて重要な要素ですが、以下の点にも注意して手続きを進めると良いでしょう。
1. 評価時点の確認
相続税の評価は、原則として相続発生日を基準に算出されます。特に株式の評価においては、発生日の株価や3か月平均が影響するため、相続開始日を正確に把握することが重要です。
2. 専門家のサポートを活用
不動産や非上場株式の評価は複雑であり、相続人だけで適切に評価するのは難しいケースが多いです。税理士や不動産鑑定士、行政書士といった専門家のサポートを受けることで、評価額の適正性を保ち、相続税の負担を軽減することができます。
3. 相続人間での合意形成
評価額が確定した後、相続人間での合意形成も必要です。不動産や非上場株式は分割しにくいため、評価額に基づいた遺産分割の協議を進め、納得のいく形で遺産を分け合うことが重要です。
まとめ
相続手続きにおける不動産や株式の評価は、相続税額や遺産分割に直結するため、適切に評価額を算出することが求められます。不動産は路線価や固定資産税評価額、株式は市場価格や類似業種比準方式など、資産の種類ごとに異なる評価方法が用いられます。また、評価に際しては税理士や不動産鑑定士など専門家の力を借りることで、適正な評価を行い、相続税の負担を軽減できる可能性が高まります。
評価額の算出は複雑ですが、適切に手続きを進めることで、相続手続きのトラブルを防ぎ、スムーズな相続が実現します。