はじめに
日本で外国人が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得する場合、学歴要件を満たさない場合でも、一定年数以上の実務経験があれば申請が可能です。多くの方が「複数の会社での職歴を合算して実務経験年数を満たせるか?」と疑問を持たれます。本記事では、複数社での職歴を合算する際の具体的な注意点や、申請時に求められる書類、関連する最新の法務省ガイドラインをもとに詳しく解説します。
複数社での職歴合算は可能か?
結論から言うと、複数の会社での職歴を合算して実務経験年数を満たすことは可能です。たとえば、A社で2年、B社で1年働いた場合、合計3年の実務経験として申請できます。ただし、いくつか重要な条件と注意点があります。
実務経験年数の要件
- 「技術」「人文知識」分野の場合:原則10年以上の実務経験が必要です(学歴要件を満たさない場合)。
- 「国際業務」分野の場合:3年以上の実務経験が必要です(同上)。
この年数は、該当する業務内容での経験のみがカウントされます。単純作業や在留資格の範囲外の業務は含まれません。
職歴合算の主な注意点
1. 業務内容の一貫性・関連性
- 合算する職歴は、すべて「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務内容である必要があります。
- たとえば、システムエンジニアとしての経験を合算する場合、すべての会社でシステムエンジニアまたはそれに準ずる職務であったことが求められます。
- 新入社員時代の単純作業や、該当しない業務内容は実務経験年数に含まれません。
2. 在職証明書・職務経歴書の準備
- 各社から在職証明書を取得する必要があります。
- 証明書には、勤務期間・職務内容・会社名・会社印などが明記されていることが重要です。
- 会社が倒産している、または連絡が取れない場合、その会社分の職歴は証明できないため、合算できません。
3. 証明書の有効性
- 在職証明書には有効期限はありません。過去に取得したものでも使用できます。
- ただし、内容が不明確だったり、職務内容が曖昧な場合は追加資料を求められることがあります。
4. 職務内容の詳細な記載
- 職務経歴書や在職証明書には、該当業務の内容を具体的に記載することが求められます。
- 入国管理局(出入国在留管理庁)は、職務内容と申請予定の業務内容との関連性を重視します。
5. 証明書の翻訳
- 海外の会社での職歴の場合、証明書や経歴書は日本語訳が必要です。原本と翻訳をセットで提出します。
6. その他の審査ポイント
- 受入れ企業の経営状態が安定していること。
- 日本人と同等以上の給与水準であること。
- 素行が良好であること、入管法上の届出義務を履行していること。
事例
ベトナムのA社でシステムエンジニアとして2年、韓国のB社で同じくシステムエンジニアとして1年勤務した方が、日本のIT企業で同職種に就職予定の場合、A社・B社両方の在職証明書と職務経歴書を用意し、合計3年の実務経験として申請できます。ただし、A社での最初の半年間が単純作業だった場合、その期間は除外されます。
よくあるトラブルと対策
- 証明書が取得できない場合:倒産や連絡不能の場合は、その会社分を除いた年数で申請するしかありません。
- 職務内容が曖昧な場合:入管局から追加説明や資料提出を求められることがあります。職務内容はできるだけ具体的に記載しましょう。
- 業務内容の不一致:申請予定の職務と過去の実務内容が異なる場合、審査で不許可となるケースがあります。
まとめ
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格申請で複数社の職歴を合算する場合、該当業務での実務経験年数を証明できることが大前提です。各社からの在職証明書や職務経歴書をしっかりと準備し、職務内容の一貫性・関連性を明確にすることが、審査通過のポイントとなります。証明書が取得できない場合は、その分の職歴は合算できませんので、早めに準備を進めましょう。