はじめに
「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)ビザは、日本で専門的な知識や技術を活かして働く外国人材にとって、最も一般的な在留資格の一つです。学歴要件を満たさない場合、10年以上の実務経験で代替することが可能ですが、実務経験の証明書をすべて揃えられないケースも少なくありません。この記事では、そのような場合にどのような対応策が考えられるか、最新の公的情報と実務上のポイントを踏まえて解説します。
技人国ビザの実務経験要件と証明書類
技人国ビザの申請には、原則として「大学卒業」や「専門学校卒業」などの学歴要件がありますが、これを満たさない場合は「10年以上の実務経験」(国際業務分野は3年以上)が必要です。この10年には、高校や専門学校で関連科目を専攻した期間も含めることができます。
実務経験を証明するための主な書類は以下の通りです。
- 在職証明書(職務内容・在職期間・勤務形態が明記されたもの)
- 職務経歴書
- 推薦状(必要に応じて)
- 学校の卒業証明書や成績証明書(学歴期間を実務経験に算入する場合)
実務経験証明書が一部しか用意できない場合のリスク
実務経験証明書が一部しか揃わない場合、申請者本人が「10年以上の実務経験がある」と主張しても、証明できない期間については入管で認められません。証明できない期間があると、要件を満たさないとして不許可となるリスクが高まります。
特に、過去に勤務した会社が廃業している、連絡が取れないなどの理由で証明書類が取得できないケースでは、入管当局は本人の主張だけでは認めず、客観的証拠がない限り実務経験としてカウントしません。
対応策1:可能な限り証明書を集める
まずは、過去に勤務したすべての会社に連絡を取り、在職証明書や退職証明書を取得できないか最大限努力しましょう。複数の会社で働いていた場合は、それぞれの会社から証明書を集め、在職期間を合算して10年に達するか確認します。
証明書には以下の情報が必須です。
- 被証明者氏名(パスポートと一致する英語表記)
- 在職期間(年月日)
- 勤務形態(フルタイム・パートタイム等)
- 職務内容(できるだけ詳細に)
- 会社名・代表者名・住所・連絡先
対応策2:補足資料の活用
どうしても在職証明書が取得できない場合は、以下のような補足資料を提出することで、一定の実務経験を証明できる可能性があります。
- 給与明細、源泉徴収票、社会保険記録
- 税務申告書、雇用契約書
- 取引先との請求書や業務報告書
- 同僚や上司からの推薦状(公証を受けるとより有効)
- 学校の成績証明書(関連科目の履修期間を実務経験に算入できる場合)
ただし、これらの補足資料だけでは十分とされない場合も多く、入管の審査官の判断によります。証明力の高い資料をできるだけ多く提出することが重要です。
対応策3:入管への事前相談
証明書類が一部しか揃わない場合は、申請前に最寄りの地方出入国在留管理局(入管)に事前相談することをおすすめします。提出予定の資料で要件を満たすかどうか、審査官の見解を確認しておくことで、不許可リスクを下げることができます。
対応策4:他の在留資格の検討
どうしても10年分の証明が揃わない場合、特定活動(46号)ビザなど、他の在留資格での申請を検討することも選択肢となります。特に日本の大学卒業者で日本語能力が高い場合は、特定活動ビザが有力な代替手段となることがあります。
事例
Aさん(中国出身・35歳)は、ITエンジニアとして中国国内の3社で計12年勤務していましたが、1社が倒産しており在職証明書が取得できませんでした。Aさんは残り2社から在職証明書を取得し、不足分については給与明細や税務申告書、同僚の推薦状などを提出しました。事前に入管に相談した結果、証明力が十分と判断され、無事に技人国ビザが認められたました。
まとめ
技術・人文知識・国際業務ビザの実務経験要件を証明するためには、客観的な証明書類が不可欠です。証明書が一部しか用意できない場合は、他の補足資料を積極的に活用し、入管への事前相談を行うことが重要です。それでも証明が難しい場合は、他の在留資格の検討も視野に入れましょう。最新の情報や審査基準は、法務省・出入国在留管理庁の公式サイトや、専門家への相談で確認してください。