はじめに
日本で外国人が就労する際に多く利用される在留資格が「技術・人文知識・国際業務」(以下、「技人国ビザ」と略します)です。特に専門学校を卒業した方がこのビザを申請するケースは年々増加していますが、大学卒業者と比べて審査基準が厳格になる傾向があり、注意すべき点が多く存在します。本記事では、専門学校卒業者が技人国ビザを申請する際に押さえておきたいポイントについて、最新の法務省や出入国在留管理庁の情報をもとに解説します。
技人国ビザの概要と基本要件
技人国ビザは、日本の企業等で専門的な知識や技術を活かして働くための在留資格です。対象となる業務は、自然科学や人文科学の分野に属する技術・知識を要する職種や、外国の文化に基盤を有する感性を必要とする業務(通訳・翻訳、語学指導など)です。
申請には主に以下の要件が求められます。
- 学歴要件(大学または日本国内の専門学校卒業、もしくは一定年数の実務経験)
- 業務内容と学歴・職歴の関連性
- 受入企業の経営安定性
- 日本人と同等以上の報酬水準
専門学校卒業者の学歴要件と注意点
日本国内の専門学校卒業が必須
専門学校卒業者が学歴要件を満たすには、「日本国内の専門学校で専門士の称号を取得していること」が必要です。海外の専門学校卒業は対象外となります。
専攻内容と職務内容の関連性
専門学校卒業者の場合、専攻した内容と就職する職務内容の関連性が大学卒業者よりも厳格に審査されます。具体的には、履修科目の3割以上が従事予定の業務と関連していることが求められます。この関連性が弱い場合や、単純労働に該当する業務では不許可となるリスクが高まります。
成績・出席率・就学状況
専門学校での成績や出席率も審査対象です。成績が低い、出席率が悪い場合は「専門的な知識や技能を十分に習得していない」と判断され、不許可となる可能性があります。
履修内容のレベル
例えば通訳・翻訳業務で申請する場合、専門学校で履修した日本語の授業内容がビジネスレベルであることが求められます。初級レベルや日常会話レベルでは不十分と判断される場合があります。
申請書類と証明方法
必要書類
- 卒業証明書(専門士の称号が明記されたもの)
- 成績証明書
- 履修科目一覧やシラバス(業務との関連性を証明するため)
- 雇用契約書(報酬水準、日本人と同等以上であることを明記)
- 企業の決算書類や会社案内(経営安定性の証明)
理由書の作成
業務内容と専攻内容の関連性を具体的に説明する理由書を添付すると、審査官に意図が伝わりやすくなります。
企業側の要件
受入企業が安定した経営を行っていることも審査対象です。赤字決算や設立間もない企業の場合は、事業計画書などで今後の安定性を説明する必要があります。
よくある許可・不許可事例
許可事例
- 翻訳通訳学科で専門的な通訳・翻訳科目を履修し、出版社で翻訳業務に従事する場合
- 国際教養学科で経営・会計・語学科目を多く履修し、ビジネスレベルの語学力を証明できる場合
不許可事例
- 履修科目のうち業務と関連するものが少ない場合
- 日本語科目の成績が低い、またはビジネスレベルに達していない場合
- 申請職務が単純労働や、業務量が十分でない場合
申請時のポイントまとめ
- 日本国内の専門学校卒業で専門士の称号が必須
- 専攻内容と職務内容の関連性を明確に証明
- 成績や出席率など、学業成績も重要
- 雇用契約書で報酬水準を明記し、企業の安定性も証明
- 理由書やシラバスなど、関連性を示す書類を十分に準備
- 不安がある場合は行政書士などの専門家に相談するのが安全
まとめ
専門学校卒業者が技術・人文知識・国際業務ビザを申請する場合、学歴要件を満たしていても、専攻内容と職務内容の関連性や学業成績、企業の経営安定性など多角的な審査が行われます。審査基準は大学卒業者よりも厳格なため、事前に必要書類をしっかり準備し、関連性や能力を具体的に証明することが重要です。最新の法令や出入国在留管理庁のガイドラインを確認し、慎重に申請を進めましょう。