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公正証書遺言に「遺言執行者」を指定しない場合、誰が手続きを行う?

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公正証書遺言を作成するとき、「遺言執行者を指定するかどうか」で迷われる方はとても多いです。
遺言執行者をあえて置かないケースもありますが、その場合「誰が、どのように相続手続きを進めるのか」を事前に理解しておくことが重要です。

この記事では、民法や裁判所の公的情報を踏まえながら、公正証書遺言に遺言執行者を指定しなかった場合の手続きの流れや注意点をわかりやすく解説します。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために相続財産の管理や名義変更など、必要な一切の行為を行う役割を持つ人のことです。
民法第1006条は、「遺言者は遺言で一人又は数人の遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができる」と定めています。

遺言執行者が必要不可欠(必要的)とされる代表的な事項には、次のようなものがあります。

  • 認知
  • 推定相続人の廃除・廃除の取消し
  • 一般財団法人設立のための定款作成・財産拠出 など

これらの事項が遺言に含まれている場合、遺言執行者がいないと遺言の内容を実現できないため、原則として遺言執行者を置くことが重要です。

一方、「誰にどの財産を相続させるか・遺贈するか」といった一般的な財産分配のみの遺言では、法律上、必ずしも遺言執行者が必要とは限りません。

1. 相続人全員で協力して手続きを行う

多くの公正証書遺言では、「特定の不動産を長男に相続させる」「預貯金を配偶者に相続させる」といった財産分配が中心になります。
このような「任意的」な内容(遺言執行者が必ずしも必要ではない内容)の場合、遺言執行者がいないときは、相続人自身が遺言に従って手続きを行うことができます。

具体的には、次のような場面で相続人が窓口になります。

  • 不動産の相続登記(法務局)
  • 預貯金の払い戻し・名義変更(銀行等)
  • 有価証券・投資信託の名義変更 など

このとき、相続人のうち一人が代表となって手続きを進めることもありますが、ほとんどの金融機関等では「他の相続人全員の署名押印と印鑑証明書」が必要になるため、実務上は相続人全員の協力が不可欠です。

2. 家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる

遺言に遺言執行者の指定がない場合でも、相続人や受遺者などの利害関係人は、家庭裁判所に「遺言執行者選任」の申立てを行うことができます。

裁判所の公式サイトでも、次のように案内されています。

  • 遺言に遺言執行者が指定されていないとき
  • 遺言執行者が死亡したとき など

これらの場合、家庭裁判所が利害関係人の申立てにより遺言執行者を選任することができます。
申立人となれる「利害関係人」には、例えば以下のような人が含まれます。

  • 相続人
  • 受遺者(遺贈を受ける人)
  • 相続人や受遺者の債権者 など

「相続人同士の対立が強い」「相続財産が多岐にわたり、利害調整や事務処理が煩雑」といった場合には、家庭裁判所で専門家を遺言執行者に選任してもらうことが、遺言内容を確実に実現するうえで有効です。

3. 相続人が専門家に実務をサポートしてもらう

遺言執行者を置かず、家庭裁判所での選任もしない場合であっても、相続人が行政書士・司法書士・弁護士・税理士などの専門家に、実際の書類作成や手続きのサポートを依頼することは可能です。

この場合、正式な意味での「遺言執行者」ではなくても、相続人の代理人・支援者として、相続登記や預貯金解約の書類作成・提出などをトータルでサポートする形が一般的です。
専門家に依頼することで、相続人同士の調整がスムーズになり、必要書類の漏れや手続きの遅れを防ぎやすくなります。

遺言執行者を指定しないと、次のようなトラブルや負担が生じやすくなります。

  • 相続人の一人でも非協力的な人がいると、手続きが止まってしまう
  • 受遺者(相続人でない人)が単独で手続きできない場面が多い
  • 誰が中心となって動くか曖昧で、相続人同士の感情的対立が深まりやすい

例えば、「長年同居して介護をしていた長女に自宅不動産を相続させる」という内容の公正証書遺言があるにもかかわらず、遺言執行者を置いていないケースを考えてみます(参考イメージです)。
長女が名義変更を進めようとしても、疎遠な兄弟の一人が印鑑をなかなか出してくれず、相続登記が長期間できない、という状況は実務上も起こり得ます。

このような事態を避けるため、公正証書遺言を作成するときから「相続人間の関係」「受遺者の有無」「遺産の内容とボリューム」を踏まえて、遺言執行者を置くかどうかを検討しておくことが大切です。

公正証書遺言を作成するとき、遺言執行者を指定するかどうか判断する際の主なチェックポイントは次のとおりです。

  • 認知・推定相続人の廃除など「遺言執行者が必要的な事項」が含まれていないか
  • 相続人同士の関係性(将来の対立の可能性を含めて)
  • 受遺者(相続人以外に財産を与える人)がいるかどうか
  • 不動産・預貯金・株式など、財産の種類と数・価値
  • 相続人や受遺者が高齢である、遠方に住んでいるなど、自力での手続きが難しい事情の有無

これらを総合的に考えると、「相続人間に争いの可能性がある」「受遺者がいる」「財産が多岐にわたる」といった場合には、遺言執行者を指定しておいた方が、結果的に相続人の負担が軽くなることが多いです。

公正証書遺言で遺言執行者を指定する場合、その人の住所・氏名・生年月日が分かる資料が必要になる点も、公証役場の実務として押さえておきましょう。

  • 遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために相続財産の管理など必要な行為を行う役割を持つ人であり、遺言で指定するのが原則です。
  • 認知や推定相続人の廃除など、一部の事項については遺言執行者がいないと遺言の内容を実現できないため、特に注意が必要です。
  • 公正証書遺言に遺言執行者の指定がない場合、一般的な財産分配の範囲であれば、相続人が協力して相続登記や預貯金の解約・名義変更などの手続きを行うことになります。
  • 相続人や受遺者などの利害関係人は、家庭裁判所に申し立てることで、後から遺言執行者を選任してもらうこともできます。
  • 実務上は、相続人間の関係や財産の内容等を踏まえて、遺言作成の段階で遺言執行者を指定するかどうかを検討しておくことが、相続手続きの円滑化につながります。

公正証書遺言の作成を検討されている方は、「遺言の中身」だけでなく、「誰がその遺言を実現するのか」という視点も含めて、専門家へ一度相談しておくと安心です。

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