はじめに
相続手続では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等を収集し、誰が法定相続人であるかを正確に確認する必要があります。預貯金の解約、不動産の名義変更、相続税の申告、遺産分割協議など、多くの手続の基礎となるためです。
しかし、戸籍は転籍、婚姻、離婚、養子縁組、戸籍の改製などによって複数に分かれていることが珍しくありません。「どこまで遡ればよいのか」「不足している戸籍はないか」「相続人は誰なのか」と悩まれる方も多いでしょう。
そこで有効なのが、行政書士に戸籍収集と相続関係説明図の作成をまとめて依頼する方法です。
相続で戸籍収集が必要になる理由
相続手続では、一般に被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍を確認します。これは、現在の戸籍だけでは、過去の婚姻による子、認知した子、養子など、法定相続人となり得る方を十分に把握できない場合があるためです。
たとえば、亡くなった父が再婚しており、前婚中に子がいた場合、現在の戸籍だけを見ても相続人の全体像が分からないことがあります。出生時まで遡って戸籍をつなげて確認することで、相続人の漏れを防ぎ、遺産分割協議や金融機関の相続手続を円滑に進めやすくなります。
相続人の一部を見落としたまま遺産分割協議をしてしまうと、後から協議をやり直す必要が生じるおそれがあります。早い段階で戸籍を正確に収集・整理することが、相続手続の重要な出発点です。
戸籍収集を行政書士に依頼するメリット
行政書士に依頼する大きなメリットは、単に戸籍を集めるだけでなく、相続関係を読み解き、必要書類を整理できる点にあります。
- 被相続人の戸籍を出生から死亡まで遡り、戸籍のつながりを確認できます。
- 転籍や改製により本籍地が複数に及ぶ場合でも、請求先を整理して収集を進められます。
- 相続人の現在戸籍、住民票、戸籍の附票など、目的に応じた書類の確認ができます。
- 収集した戸籍を基に、相続関係説明図を作成し、家族関係を分かりやすく可視化できます。
- 預貯金、保険、証券、相続税、不動産など、次の手続で提出しやすい形に書類を整理できます。
近年は戸籍証明書等の広域交付により、本籍地以外の市区町村窓口でも一定の戸籍証明書等を請求できるようになりました。ただし、広域交付は郵送請求や代理人請求には利用できず、請求できる方の範囲にも制限があります。そのため、相続人ご本人が多忙で窓口に行きにくい場合や、複数の本籍地へ郵送請求が必要な場合には、行政書士への依頼が役立ちます。
相続関係説明図を作成するメリット
相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を家系図のように整理した書面です。誰が亡くなった方の配偶者・子・親・兄弟姉妹に当たるのかを一目で確認しやすくなります。
戸籍謄本は情報量が多く、複数通に及ぶと、家族関係を確認するだけでも時間がかかります。相続関係説明図があれば、金融機関や税理士、不動産の専門家などに相続人の構成を説明しやすくなり、書類確認の負担も軽減できます。
なお、相続関係説明図は、戸籍に基づいて行政書士が作成する整理資料です。一方、法務局の「法定相続情報一覧図」は、登記官が戸除籍謄本等と一覧図を確認し、認証文付きの写しを交付する公的な制度です。法定相続情報一覧図の写しは無料で交付され、相続登記や金融機関等の相続手続で活用できる場合があります。
一括依頼から手続までの流れ
行政書士へ戸籍収集を依頼する場合は、次のような流れで進めることが一般的です。
- 亡くなった方のお名前、生年月日、死亡日、本籍地、最後の住所、分かる範囲の家族関係を確認します。
- 委任状を作成し、相続人から必要な情報・本人確認書類等をご準備いただきます。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍を収集し、内容を確認します。
- 法定相続人の現在戸籍などを取得し、相続人の範囲を確定します。
- 戸籍を時系列に整理し、相続関係説明図を作成します。
- 必要に応じて、法定相続情報一覧図の申出や、金融機関等に提出する相続手続書類の準備につなげます。
たとえば、相続放棄を検討する場合にも、相続人の立場や順位に応じて、被相続人の出生から死亡までの戸籍等が必要となることがあります。相続放棄には原則として期限があるため、戸籍収集を早めに始めることが大切です。
まとめ
戸籍収集は、相続人を正確に確定し、その後の相続手続を進めるための重要な作業です。戸籍が複数の自治体にまたがる場合や、家族関係が複雑な場合には、収集漏れや相続人の見落としが生じるおそれもあります。
行政書士に依頼すれば、戸籍の収集から内容確認、相続関係説明図の作成、必要に応じた法定相続情報一覧図の準備まで、相続手続の土台を一括して整えられます。相続が発生した際は、遺産分割や金融機関の手続を急ぐ前に、まず戸籍を正確にそろえ、相続関係を明確にすることをおすすめします。



