はじめに
フィリピン人配偶者との間に子どもが生まれた場合、「日本国籍は取れるのか」「フィリピン国籍はどうなるのか」「出生届はどこに出すのか」「二重国籍のままで大丈夫か」といったご相談をよく耳にします。
日本とフィリピンでは国籍の考え方や手続が異なり、届出の期限を守らないと、日本国籍を失ってしまうケースもあるため、基本的なルールを知っておくことが大切です。
以下では、日本人とフィリピン人夫婦に子どもが生まれた場合の「子どもの国籍」「日本側の出生届」「フィリピン側の出生届」「二重国籍と国籍選択」について、主に日本の法務省・在外公館、在京フィリピン大使館などの情報をもとに整理します。
日本国籍はどう決まるのか
日本は「血統主義」で、原則として父または母が日本人であれば、子どもは出生により日本国籍を取得します。
法務省の国籍法に関する説明では、「出生の時に父または母が日本国民であるとき」に子どもは日本国民となると定められています(国籍法第2条1号)。
一方で、日本人父と外国人母との間の子どもで、「婚姻前に生まれた子」については、父から胎児認知を受けていない限り、出生によって日本国籍を取得しないという取扱いがある点に注意が必要です。
この場合でも、日本人父からの認知があり、一定の要件を満たすことで、届出により日本国籍を取得できる制度が用意されています。
フィリピン国籍はどう決まるのか
フィリピンも基本的に血統主義を採用しており、親がフィリピン人であれば、出生地にかかわらずフィリピン国籍を取得します。
在京フィリピン大使館の案内では、フィリピン国籍の親から出生した子について、出生の登録を行うための手続(Report of Birth)が案内されており、日本で生まれた場合でも一定期間内に大使館へ届出を行う必要があるとされています。
日本人とフィリピン人の夫婦の子どもは、多くの場合「出生により日本国籍とフィリピン国籍の両方を取得する」ことになるため、結果として二重国籍の状態で育つことになります。
フィリピンで生まれた場合の日本側の出生届
子どもがフィリピンで生まれ、日本人の親がいる場合、日本側には「在フィリピン日本国大使館または総領事館を通じて出生届をする」ことになります。
在フィリピン日本国大使館の案内によれば、次のような点が重要です。
- 届出対象となる子
- 届出期間
- 必要書類の例
3か月という期間は非常に重要で、うっかり期限を過ぎると、子どもが日本国籍を喪失した扱いになる可能性があるため、出生後は早めに準備を進めることが望ましいです。
日本で生まれた場合の日本側・フィリピン側の出生届
日本人とフィリピン人の子どもが「日本国内で」生まれた場合、日本側では通常どおり、出生地の市区町村役場に出生届を提出します。
法務省の戸籍Q&Aでは、日本人と外国人の夫婦の子どもが外国で生まれても、日本人の親がいれば日本国籍を取得すると説明されており、日本で生まれた場合も同様に出生によって日本国籍を取得することになります。
一方、フィリピン国籍の取得・維持のためには、在京フィリピン大使館での出生届(Report of Birth)が必要です。
在京フィリピン大使館の案内では、フィリピン人の両親、または一方がフィリピン国籍者である場合、子どもの出生から1年以内に大使館に出生届を提出する必要があるとされており、日本国内で出生した子も対象とされています。
このように、日本で生まれた場合は「日本の市区町村」と「フィリピン大使館」の両方に出生関係の届出を行うことが重要になります。
二重国籍と国籍選択のルール
日本とフィリピンの両国の血統主義により、日本人とフィリピン人の子どもは、原則として出生時に日本国籍とフィリピン国籍を併有する状態(二重国籍)になります。
日本の国籍法上は、重国籍者は一定の年齢までにどちらかの国籍を選択することが求められています。
法務省「国籍の選択について」によると、重国籍者は次のようなルールで国籍選択を行います。
一方、フィリピン側では、フィリピン国籍の保持・喪失や再取得に関する独自の法律があり、二重国籍者の扱いや国籍に関する手続も別途定められています。
将来、子どもがどの国で生活するのかによって、どのタイミングでどの国籍を選択するか、あるいは可能な範囲で両国籍をどのように扱うかという点を、親子で話し合いながら検討していくことが大切です。
参考イメージとなるケース
ここでは、具体的なイメージを持っていただくために、一般的なケースをご紹介します。
- 日本人夫(40代)とフィリピン人妻(30代)がフィリピンに在住し、フィリピンの病院で長女が出生
- 出生後、フィリピンの市役所で出生証明書(Birth Certificate)を取得し、その後、在フィリピン日本国大使館に3か月以内に出生届を提出
- 同時に、日本国籍留保の意思表示を行い、戸籍に長女を記載してもらうことで、日本国籍を維持
- さらに、フィリピン側では出生登録が行われているため、長女は日本国籍・フィリピン国籍の双方を持つ状態で育つことになる
もし、このケースで「日本側の出生届が3か月を過ぎてしまった」場合には、日本国籍の取扱いが大きく変わるおそれがあるため、その時点で専門家への相談が望ましいというのがポイントになります。
まとめ
日本人とフィリピン人の間に子どもが生まれた場合、国籍・出生届・二重国籍に関しては、次の点を押さえておくと安心です。
- 親の一方が日本人であれば、原則として出生により日本国籍を取得する(例外として、婚姻前出生で胎児認知がない場合などがある)。
- フィリピン人親がいれば、出生地にかかわらずフィリピン国籍を取得し得るため、多くの場合は二重国籍となる。
- フィリピンで生まれた場合、日本国籍を維持するには「出生から3か月以内」の日本側出生届と国籍留保の意思表示が極めて重要である。
- 日本で生まれた場合でも、フィリピン大使館への出生届(Report of Birth)を忘れずに行うことで、フィリピン国籍を適切に登録できる。
- 二重国籍となった子どもは、原則として22歳までに日本国籍を選択するかどうかを判断する必要がある。
実際の手続では、国籍法や戸籍法の解釈、出生時点の婚姻状況、日本・フィリピン双方での届出状況などにより取扱いが変わることがありますので、迷われたときは、法務省・在外公館・フィリピン大使館などの最新情報を確認しつつ、専門家に早めに相談されることをおすすめします。



