はじめに
近年、日本の建設業界では外国人経営者や外国人役員の方が増え、「外国人でも建設業許可の経営業務の管理責任者になれますか?」というご相談が非常に多くなっています。
結論からお伝えすると、外国人の方でも一定の要件を満たせば経営業務の管理責任者(いわゆる「経管」)になることは可能です。 ただし、日本人と同様の経営経験要件に加え、「在留資格」や「海外での経営経験の扱い」など、外国人特有のチェックポイントがあります。
この記事では、建設業許可を検討している経営者の方に向けて、外国人が経営業務の管理責任者になれる条件や注意点を、できるだけやさしい言葉で解説します。
経営業務の管理責任者とは?基本をおさらい
経営業務の管理責任者とは、その建設業者の経営について対外的に責任を負い、経営全体を統括できる地位にある人のことをいいます。
法人の場合は、代表取締役を含む取締役などの「常勤役員」のうち、一定の経営経験を持つ人が該当します。
国土交通省の資料では、経営業務の管理責任者となるための主な要件として、次のようなパターンが示されています。
- 許可を受けようとする建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験があること
- 他の建設業について6年以上の経営業務の管理責任者としての経験があること
- 管理責任者に「準ずる地位」で一定年数、経営業務を執行してきた経験があること など
つまり、経営業務の管理責任者は「建設業の経営を、継続的・安定的に行ってきた実績がある常勤役員」であることが求められます。
外国人でも経営業務の管理責任者になれる?
外国人であっても、日本人と同様に経営業務の管理責任者になることは可能です。
建設業許可の審査では、「外国人であるかどうか」自体は要件ではなく、あくまで経営経験、常勤性、欠格事由に該当しないことなどが判断されます。
ポイントは次のとおりです。
- 経営経験の年数・内容などの基準は、日本人と外国人で同じ
- 外国人だからといって、追加の特別な許可要件が課されるわけではない
- ただし、在留資格と海外での経営経験の扱いなど、確認すべき点が増える
このため、「外国籍だから建設業許可が取れない」「外国人は経管になれない」というのは誤りであり、正しく準備すれば許可取得は十分に可能です。
必要な経営経験と海外経験の扱い
国土交通省の資料によると、経営業務の管理責任者の要件は、原則として国内での建設業経営の経験を前提にしています。
一方で、外国企業での役員経験や建設業の経営経験についても、一定の条件のもとで認められる仕組みが用意されています。
主なポイントは次のとおりです。
- 外国での役員・経営者としての経験も、建設業に関する経営経験であれば対象となり得る
- その場合、国土交通大臣による「個別認定」(大臣認定)を受ける必要がある
- 認定では、工事契約書、組織図、決算書、給与明細など、実際に経営に携わっていたことを示す資料が求められる
- 認定申請は建設業許可申請の前に行う必要がある
このように、海外での建設業経営の経験がある外国人の方が日本で経管になる場合、「経験年数」と「大臣認定の取得」が実務上の重要なステップになります。
在留資格のチェックは必須
外国人が建設業許可の申請者や役員、経営業務の管理責任者となる場合、日本人には存在しない「在留資格(ビザ)」の要件が加わります。
建設業を経営する立場で活動するためには、原則として会社経営が可能な在留資格を持っていることが必要です。
具体的には、次のような点を確認する必要があります。
- 経営業務の管理責任者となる外国人が、「経営・管理」など、会社の経営が認められる在留資格を持っているか
- 在留期間に十分な余裕があるか(すでに短期間しか残っていない場合、更新時期との関係に注意が必要)
- 在留資格の活動内容と、実際に行う建設業の経営内容が整合しているか
在留資格が要件を満たしていない場合、経営業務の管理責任者としての地位を前提とした建設業許可が認められない可能性がありますので、許可申請と並行して在留資格の見直し・変更申請を検討することも重要です。
常勤性・欠格事由といった共通の要件
外国人であっても、日本人と同じく、経営業務の管理責任者には「常勤性」と「欠格事由に該当しないこと」が求められます。
- 常勤性
経営業務の管理責任者は、その建設業者の営業所に常勤している必要があります。
外国人の場合、住民票や社会保険の加入状況に加え、在留資格の内容も含めて、日本に生活の本拠があると認められるかがポイントになります。 - 欠格事由
暴力団関係者でないこと、一定の刑罰を受けてから一定期間が経過していることなど、建設業法に定める欠格事由に該当しないことが必要です。
これも国籍に関係なく、すべての役員・個人事業主がチェックされる項目です。
想定ケースで流れをイメージ
具体的なイメージをつかみやすくするため、典型的なケースを想定して流れを整理します。内容はあくまで一般的な一例です。
- 例:母国で10年以上建設会社の取締役をしてきた外国人が、日本法人を設立し、自ら代表取締役として建設業許可を取りたいケース
この場合、次のようなステップが考えられます。
- 日本法人を設立し、本人が代表取締役(常勤役員)に就任する
- 在留資格「経営・管理」を取得または変更し、日本での会社経営を適法な形にする
- 母国での建設業経営の経験について、工事契約書、決算書、役員登記簿などを収集し、国土交通大臣の個別認定を申請する
- 認定が下りた後、他の要件(専任技術者、財産的基礎、欠格事由等)を整えて、建設業許可を申請する
このように、「経営業務の管理責任者としての経験」と「在留資格」の2つのラインを同時並行で整えていくことが、外国人経営者の建設業許可取得においては重要なポイントとなります。
まとめ
外国人でも、建設業許可の経営業務の管理責任者になることは可能であり、経営経験の要件や常勤性、欠格事由などの基本的なハードルは日本人と同様です。
一方で、海外での経営経験を使う場合の「大臣認定」の手続きや、会社経営が可能な在留資格の確保など、外国人特有の準備事項がある点には注意が必要です。
特に、在留資格は建設業許可とは別の制度ですが、実務上は密接に関係しているため、「許可要件を満たしているのに、ビザの内容が合わずに動けない」といった事態を避けるためにも、早い段階から両方を見据えて計画することが大切です。
外国人経営者や外国人役員の方が建設業許可を目指す場合、自社の経営経験や在留資格の状況を整理したうえで、国土交通省や都道府県の公式資料を確認し、必要に応じて専門家に相談しながら進めることで、スムーズな許可取得につながります。


