はじめに
日本の実業団チームやクラブチームに所属するために来日する外国人のアマチュアスポーツ選手や、その家族からの在留資格に関する相談は年々増えています。出入国在留管理庁が定める在留資格の中でも、「特定活動(アマチュアスポーツ選手及びその家族)」は制度の趣旨や要件を正しく理解していないと、不許可や更新不許可のリスクが高くなる在留資格の一つです。
この記事では、政府の公的情報を踏まえつつ、アマチュアスポーツ選手本人とその家族が日本で適法に滞在・活動するためのポイントをわかりやすく整理します。
在留資格「特定活動(アマチュアスポーツ選手及びその家族)」の位置づけ
出入国在留管理庁は、「特定活動」を、他の在留資格では想定されていない活動について、法務大臣が個々に指定して在留を認める在留資格と定義しています。
その中で「アマチュアスポーツ選手」は、法務省告示により類型化された特定活動の一つであり、その家族についても「アマチュアスポーツ選手の家族」として特定活動に位置づけられています。
アマチュアスポーツ選手として認められる活動内容
アマチュアスポーツ選手としての特定活動は、プロスポーツではなく、スポーツを事業目的としない日本の公私の機関(企業のクラブチーム、大学・学校のチームなど)が主催する試合や競技会に参加し、スポーツ活動を行うことが想定されています。
報酬を受けてその活動を行うことは可能ですが、プロスポーツ選手として「興行」を目的とする場合は在留資格「興行」に該当し得るため、契約内容や主催者の事業目的に応じて適切な在留資格を選択することが重要です。
アマチュアスポーツ選手に求められる主な要件
公式サイトでは、「アマチュアスポーツ選手」としての特定活動の詳細要件や必要書類が案内されており、出入国在留管理庁の専用ページで確認できます。
一般的には、次のような点が審査のポイントになります。
- 日本の公私の機関と締結した雇用契約・委嘱契約などが存在し、その内容がアマチュアスポーツ選手としての活動であること。
- 報酬額や処遇が、日本人が同種の活動を行う場合と同程度以上と評価できる水準であること(実務上の運用)。
特に報酬額については、類似の特定活動(他の分野)でも明確な金額基準が設けられているものがあるため、契約額が極端に低い場合は在留審査上不利に働くおそれがあります。
アマチュアスポーツ選手の家族が取得できる在留資格
アマチュアスポーツ選手として在留する者の配偶者や子は、「特定活動(アマチュアスポーツ選手の家族)」として在留が認められる類型があり、法務省告示上は告示7号に位置付けられています。
この在留資格で認められる活動は、扶養を受ける配偶者または子として行う日常的な活動(同居や生活の維持、学校への通学など)であり、原則として収入を伴う事業の運営や報酬を受ける就労活動は含まれない点に注意が必要です。
在留期間と更新の考え方
特定活動の在留期間は、告示類型全体として「5年、3年、1年、6月、3月又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)」とされており、アマチュアスポーツ選手及びその家族についても個々の契約期間や活動計画に応じて在留期間が決定されます。
更新時には、スポーツ活動を継続しているか、当初の目的どおり活動しているか、報酬や生活費の支弁能力に大きな変動がないかなどが総合的に審査されるため、契約更新書や活動実績の資料を準備しておくことが望ましいです。
申請時に必要となる主な書類
出入国在留管理庁の「在留資格『特定活動』(アマチュアスポーツ選手及びその家族)」のページでは、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請などの手続ごとに必要書類が一覧されています。
典型的には、次のような書類が求められます。
- 在留資格認定証明書交付申請書(又は在留資格変更許可申請書・在留期間更新許可申請書)
- パスポート、在留カード(変更・更新の場合)
- 雇用契約書または委嘱契約書の写し(活動内容・報酬額・契約期間が分かるもの)
- 受入機関(クラブチーム・学校等)の概要資料、決算書の写し等(活動の実在性・継続性の確認)
- 家族の場合は、婚姻証明書や出生証明書など、身分関係を証する公的書類(原本と日本語訳)
よくある誤解と不許可リスク
アマチュアスポーツ選手の特定活動でよくあるトラブルとして、「実態としてはプロに近い興行活動であるにもかかわらず、アマチュアとして申請している」「報酬額が極端に低く、生活実態が説明できない」といったケースが挙げられます。
また、家族については「家族滞在」と同じ感覚でフルタイム就労を希望されることがありますが、「アマチュアスポーツ選手の家族」の特定活動は原則就労を予定していない類型であり、無制限の就労が認められる在留資格ではない点を誤解しないことが重要です。
参考事例
例えば、海外の大学出身のサッカー選手Aさん(25歳)が、日本の企業クラブチームと2年契約を締結し、特定活動(アマチュアスポーツ選手)で在留しているケースを考えます。Aさんの配偶者と子どもは、特定活動(アマチュアスポーツ選手の家族)として在留し、日本の保育園・学校に通っています。
この場合、Aさんがクラブとの契約を更新しないまま活動を中止したり、別のプロクラブと興行目的の契約を締結したりすると、現行の在留資格の前提が変わるため、在留資格変更や帰国の検討が必要になります。また、家族がフルタイム就労を希望する場合には、在留資格の見直し(例えば「家族滞在」や別の就労系在留資格など)が必要となる可能性があります。
専門家に相談した方がよいケース
次のような場合は、行政書士などの専門家への相談が特に有用です。
- プロとアマチュアのどちらに該当するか判断が難しい契約内容になっている場合。
- 報酬額が低く、生活費の支弁方法をどのように説明すべきか迷う場合。
- 家族の就労や子どもの進学を見据えて、将来的な在留資格の変更も含めた長期的な設計が必要な場合。
最新の告示内容や申請様式は随時更新されることがあるため、申請前に出入国在留管理庁・法務省のサイトで最新情報を確認することも欠かせません。
まとめ
在留資格「特定活動(アマチュアスポーツ選手及びその家族)」は、日本でスポーツ活動に取り組む外国人選手とその家族にとって重要な在留資格ですが、プロ・アマの区分や家族の活動範囲、報酬水準など、審査上のポイントを正しく押さえておかないと不許可や更新不許可のリスクが生じます。
出入国在留管理庁の公的情報を確認しつつ、契約内容や家族構成、将来のキャリアプランに合わせて最適な在留資格を選択することが重要であり、不安がある場合には早めに専門家へ相談することをおすすめします。


