はじめに
日本で働く外国人の多くが取得している「技術・人文知識・国際業務」(以下「技人国」)の在留資格。この在留資格を持つ方が転職する場合、単なる職場変更ではなく、入管法や在留資格の要件に基づくさまざまな手続きや注意点が発生します。この記事では、転職時に押さえておくべきポイントや、申請時に注意すべき事項について、政府の公式情報や専門家の知見をもとに解説します。
技術・人文知識・国際業務ビザとは
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、大学や専門学校等で学んだ専門知識や技術を活かして、日本国内の企業等で働くための在留資格です。対象となる職種は、システムエンジニアやプログラマー、営業、経理、通訳・翻訳、デザイナーなど多岐にわたりますが、単純労働は認められていません。
転職時に注意すべき主なポイント
1. 転職時の届出義務(14日以内)
退職または新しい会社への入社が決まった場合、14日以内に「所属機関に関する届出」を出入国在留管理庁(Immigration Services Agency of Japan)に提出する必要があります。これを怠ると、罰則(20万円以下の罰金等)が科されることがあるため注意が必要です。
2. 新しい職場の業務内容の確認
転職先の業務内容が「技人国」ビザで認められる専門的業務であることが必須です。職務内容がビザの範囲外の場合、在留期間更新や次回の申請で不許可となるリスクがあります。特に、業務内容や業務量が十分でない場合も不許可となることがあるため、事前確認が重要です。
3. 就労資格証明書の活用
新しい職場での業務が「技人国」ビザに該当するか不安な場合、出入国在留管理庁に「就労資格証明書」(Certificate of Authorized Employment)を申請し、事前に確認を取ることが推奨されます。これは義務ではありませんが、申請しておくことで、更新時のリスクを減らすことができます。
4. 在留資格更新時の注意点
転職を伴う在留資格更新では、通常よりも厳格な審査が行われます。新しい雇用契約書や労働条件通知書、前職の退職証明書、新しい会社の事業計画書や財務資料など、詳細な書類の提出が求められる場合があります。特に中小企業やスタートアップ企業への転職の場合、会社の安定性や将来性についても審査されるため、追加資料の準備が必要になることがあります。
5. 給与水準の確認
転職先での給与が、日本人と同等以上であることが求められます。外国人だからといって不当に低い給与で雇用することは認められません。雇用契約書には、給与額が明記されているか必ず確認しましょう。
6. 学歴・職歴と業務内容の関連性
新しい職場での業務が、自身の学歴や職歴と関連していることが必要です。大学等で専攻した分野や過去の職務経験と、転職先で従事する業務内容が一致していることを証明する必要があります。
7. 年金・健康保険の手続き
転職期間に空白がある場合、国民年金や健康保険の手続きが必要です。未納期間が発生すると、将来の永住申請等に影響するため、会社を辞める前に市区町村窓口等で確認しましょう。
転職時の申請手続きの流れ(概要)
- 退職後14日以内に「契約機関終了届」を提出
- 新しい職場に就職後14日以内に「新たな契約機関届」を提出
- 必要に応じて「就労資格証明書」を申請
- 在留期間満了3か月前から在留資格更新申請が可能
- 更新申請時は、転職先の雇用契約書、会社の事業計画書・財務資料、退職証明書等を準備
事例
韓国出身のAさん(28歳・男性)は、都内のIT企業でシステムエンジニアとして3年間勤務した後、地方のスタートアップ企業に転職しました。Aさんは転職後すぐに「新たな契約機関届」を提出し、就労資格証明書も申請。新しい会社が設立間もない企業だったため、追加で事業計画書や資金繰り表を提出し、無事に在留資格を更新できました。
まとめ
技術・人文知識・国際業務ビザで転職する際は、
・14日以内の届出
・新しい職場の業務内容と自身の学歴・職歴の関連性
・給与水準の確認
・必要に応じた就労資格証明書の取得
・在留資格更新時の書類準備
など、多くの注意点があります。手続きの遅れや不備は、在留資格の不許可や不法就労につながるリスクもあるため、転職が決まったら早めに専門家や行政書士に相談することをおすすめします。